ペンギン
崖から落ち、知らない場所で目を覚ましたルルル。
そんな彼に近寄ってくるペンギンの娘。
彼女にルルルは自分の置かれている状況を尋ねた。
「ありがとう、ところで……ここはどこ?」
「……?ん?ここ?私ん家だよ」
ペンギンの娘は当然のように答える。
ルルルは彼女の不思議な性格に呆気にとられるが、もう一度聞き直した。
「そうだね、聞き方が悪かったよ。俺はルルル、原初の湖から旅の途中で崖から落ちたんだ。気が付いたらここに居て……」
そこまで言いかけると彼女は酷く驚いた表情で声をあげる。
「原初の湖ぃ!?しかも名前がルルルってさー、お兄さん冗談でしょ。せっかく助けてあげのに、ウソはだめだよー」
彼女はルルルの名前と原初の湖という言葉に反応し、信じられないという表情をしていた。
ルルルは疑問に感じて再び聞き直す。今度は直接に鳥人族の村への道のりを尋ねた。
エレンシアとの約束を果たすため一刻も早く彼女の村へ行かなければならないと感じていた。
「うーん、冗談ではないよ。俺は行かなければならない場所があるんだ。鳥人族の村の場所を知ってる?」
「ちょっと待ってー、私じゃわからないから村長を呼んでくるー」
ペンギンの娘はそう答えるとピョコピョコと足を慌ただしく動かして去っていった。
暫くすると多くの足音が慌ただしく響いてくる。
目が覚めたとは言え、ルルルの身体はまだ激しい痛みに耐えている状況。
少し憂鬱な気分になるが自分を救ってくれた恩人達に挨拶くらいはしなくてはならない。
近づいてくる3羽のペンギンに向かいルルルの方から声をかけた。
「初めまして、私はルルルと申します。この度は命を救っていただいて感謝しています。ありがとうございました」
丁寧に彼が挨拶をするとペンギンの娘と一緒にやってきた2羽も挨拶を返す。
「私はこの村の村長をしているガドルです、隣は私の息子でロドルです。意識が戻り良かったです」
村長のガドルは身長が90センチ位だろうか、知性溢れる凛々しい顔立ちをしており、首の下には少し黄色の羽毛が混じっていた。
息子のロドルも身長は同じ位、優しくスッキリした顔立ちで首の下の羽毛はオレンジ色に近い色だった。
ロドルは同性ののルルルから見てもかなりのイケメンというやつだろう。そんな印象だった。
「ルルル殿、先ほどこの娘、ササラから聞きましたが原初の湖から来たというのは本当でしょうか?」
村長のガドルが改めて話の内容を確認してきた。
(原初の湖は獣人族にとって大事な場所なのかもな……でも、言ってしまったものは仕方ない、ウソでもないし‥…)
ルルルはこの世界の事をまだ完全には理解していない。原初の湖という場所は彼らにとって重要な場所なのだろう。
安易に告げるべきではなかった。と少し反省したが、今回は正直に答える事にした。
「はい、ガドルさん。原初の湖から鳥人族の村を目指し旅立ちました。途中でイノシシの魔獣に襲われ戦いに破れて川に落ちたまでは覚えています」
「ほーらぁー、私が言ったとーりじゃん、村長ー。」
ペンギンの娘がガドルを敬う素振りもなく気軽に話に割り込んできた。彼女はこういう性格なのだろう。村長もわかっている様子だった。
ガドルは考え込んでいた。何度もルルルの顔を見ては悩んでいる。
しかし、何やら決意を決めたようだった、
「そうですか……これは、やはり精霊様のお導きでしょうか……」
「ルルル殿!我々ペンギン族は貴方に従い、忠誠を誓います。これから先、貴方の手足となり働く事をお許しください!」
いきなりガドルはそう告げるとルルルに頭を下げ礼をする。
「…………え?そんな事言われても……」
ルルルは驚いた。
(何言ってるの?このおじさん!意味わからないよ!)
「親父、待ってくれ。俺はまだ納得していないぞ!確かに彼はウソをいっている素振りはないが英雄の名前と古臭い神話の湖の名前が出たからって」
それに反抗したのはルドルだった。村長のガドルに向かって必死に訴えている。
「ガドルさん、ルドルさんのおっしゃる通りです。俺にはあなた方に恩はあっても支配下におくつもりなんて一切ありません。意味がわからないです」
ロドルが反抗してくれた事をきっかけにルルルも撤回を希望した。
回復するまでこの家にお世話になりたいとお願いする立場なのに急に忠誠を誓うと言われても混乱するばかりだ。
「ルルル殿、そして、ロドル。我々ペンギン族はその昔、英雄に導かれ魔獣を撃退した獣人族でも由緒のある種族だ。しかし、英雄ルルル様は急にこの世界からいなくなった。その後、一族は衰退し、この地まで逃げてきたのだ。今では原初の湖という場所を知る者も数羽しかいない。ましてや英雄の名前を知る者も我々3羽だけだ。そんな世の中に原初の湖からやってきたルルルという名前のペンギンが現れたのだ。我々に転機が訪れたとしか思えない」
ガドルの話を聞くと納得してしまう程の説得力がある。英雄と言えば確かにルルルは英雄なのだろう。魂は同じなのだから……
(こんな風に言われると力になってあげたいが……イノシシに手も足も出なかった俺にそんな力はないだろうな)
「親父の気持ちもわかるけど、村のペンギンたちは昔の事なんてどうでもいいんだ。今は魔獣から身を守る事だけで精一杯なんだよ!」
ルドルは尚も訴え続ける。ルルルは話を聞いてなんとなく現状を理解してきた。
きっと、この村のペンギン達は魔獣から身を護りながら日々の生活で大変なのだろう。英雄とか精霊とかそんな事は現代の獣人には関係ない話だろう。
2羽の言いたいことがどっちも理解できてしまう。
「じゃーさー、とりあえず。このお兄さんが回復するまでは治療してー、その後は少しだけ魔獣と戦ってもらってぇ。治療費代わりに働いてもらえばいいんじゃない?」
マイペースに話に割り込むササラ……。しかし……。
(確かにそれならいいかもな)
ルルルは何故かササラの提案に納得がいっていた。
読んでくださって有難うございます。
少しでも評価していただけると有難いです。
続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。




