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ペンギンの転生者  作者: 北の国のルルル
旅立ち
23/58

魔力

2匹のイノシシに崖の淵まで追い詰められたルルル。

策も尽きイノシシの接近を許すばかりだった。

イノシシまでの距離は3メートルほど、前方に伸びた太い牙が近くに迫っている。

「こうなったら攻撃するしかない!」

ルルルは最後の覚悟を決めた。僅かな時間で必死にイノシシの弱点を探る。

(頭もかなり大きいし頭蓋骨も頑丈そうだ。牙は前方に生えて攻撃も防御も兼ね備えている。

足は短く狙い撃ちできる程の隙も無い、唯一攻撃が効きそうで狙いやすい場所……)

「ここしかない!」


一匹のイノシシが攻撃の射程に入った瞬間、ルルルはその瞬発力を最大限に活かしてトライデントに力を込めた。

狙うのはそのイノシシの牙の上、2つの眼球のうちの一つ。

無駄な力を使わず最短距離で必要な筋肉のみを瞬時に動かす。

一直線に伸びるトライデントの穂先。

イノシシも逃げるばかりのルルルが攻撃を仕掛けてくる事は予想していなかったようだ。

驚いて牙を横に薙ぎ払おうとする。しかし、その大きな体は瞬間的な動きに適してはいなかった。

ルルルのトライデントがその眼球に突き刺さった。

「ブォォォォオン!」

一撃を食らったイノシシは苦しそうな叫び声をあげた。

ルルルはまだ気を緩めてはいない、まずは一匹を確実に仕留める事に集中する。

トライデントを強く握り直し、捻るように回転させようと力を込めた。


…………しかし、それは敵わなかった。

眼球に傷を負ったイノシシは苦痛の叫びを上げながら大きく頭を左右に振った。

その凄まじい力により、ルルルはトライデントを握りしめたまま空中に身体を振り回されたのだ。

残ったもう一方の目でそんなルルルの姿をを捉えたイノシシの魔獣。

彼が次にとった行動は、ルルルを地面に叩きつけるため首を大きく縦に振る行為だった。

とてつもない勢いでルルルの身体が真上に持ち上げられる。

(このままじゃ、確実に死ぬ!)

ルルルも自分の身体がどのような状況に置かれているかだけは理解していた。

彼は諦めたようにトライデントから手を離した。そして勢いのまま崖の方向へ飛ばされていった。


吹き飛ばされて、急速に落下していくルルル。何故か思考は冷静だった。

もうすぐ命が失われてしまう状態で思い浮かんだのは、エレンシアの事だった。

異世界に転生して何も分からずに必死に生きていたルルルが、初めて出会った意思の疎通ができる相手。

危険な旅で協力し合い、信頼関係を結んで再会を誓った。

「ごめん、エレンシア。もう会えそうないや……」

そんな諦めの言葉を口にした瞬間、頭に彼女の言葉が蘇る。


「ペンギン族は水中で泳ぐときに主に魔力を纏わせると聞いた事がありますの。ルルルは泳ぐときに魔力を感じないですの?」

(……魔力?)

何かがひっかかる……、諦めるのは早いかもしれない。

エレンシアはその翼に魔力を込めて空を飛んでいた。

(俺にも何かできるかもしれない!)

じっくり考える時間は残されていなかった。ルルルは目を閉じて集中力を高め、その小さな可愛らしい翼に意識を集中した。

(イメージは……そう!エレンシアが空を飛ぶ姿だ)

翼に何かが集まってくる感覚がする。優しく温かい何か――


バッシャーーーーーン!!

何かを感じたと同時にルルルは水面に体を強く打ち付けられた。

背中から落ちたために氷猫によって負わされた傷が酷く痛む。

(せっかく、魔力の感覚をつかめたと思ったのに……)

ルルルはそのまま意識を失い、激流に運ばれていった。

彼が流された後の水の軌跡には青白い美しい光が漂っていた。




イノシシの魔獣との戦いから数日後、ルルルは見た事もない空間に横たわっていた。

うす暗くほとんど何もない所だった。ルルルは平らに削られた岩のような物の上で寝かされている。

体が酷く重い。背中が痛い。脈を打つごとにズキズキと激痛が走る。

痛みに耐えながら、目を閉じて何が起きたのかを思い起こしてみる。

(原初の湖を出て……失われた結界……イノシシの魔獣……!!)


「そうだ、俺は崖から落ちたんだ!……生きてるのか!?」

意識がハッキリしてくると鮮明に当時の事を思い出せるようになってきた。

イノシシに殺されそうになり、崖から落ちた自分を思い出す。

そして、自分の小さな手(翼)をじっと見つめる。

(あの後、何が起こったのだろうか?)


そんな事を考えていると、こちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。

音は部屋の外で一度止まると、ゆっくりとルルルの近くまで迫ってくる。

足音の正体を確かめるために、ルルルはゆっくりと目を開いた。


そこには可愛らしいペンギンの姿があった。

「あぁ、やっと起きたの?ずっと寝てたねぇ、お兄さん。死んじゃうかと思ってた」

そのペンギンは何の悪気もないように瀕死状態のルルルにそんな言葉をかけて来た。

同じ種族だからだろうか?ルルルはそのペンギンが若い女性であることに気づいた。

「ありがとう、ところで……ここはどこ?」


読んでくださって有難うございます。

少しでも評価していただけると有難いです。

続きもマイペースにですが書いていきます。

懲りずに読んでいただけると幸いです。

ぜひ、ブックマークもお願いします。

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