ピンチ!
イノシシの魔獣に気づかれ、ここにいては危険だと考えたルルルは即座に動き出した。
しかし、そこでやっと気がつく……イノシシの魔獣の視線の先にいるのが自分でないことに。
その視線の先、つまり自分の後ろをそろそろと振り変えると……。
なんと、ルルルの後ろには、足音を立てないようにこっそり近づいて彼を襲おうとしている氷猫の姿があった。
(しまった!イノシシに気を取られていて気づかなかった……!)
瞬間的に足に力を入れて前方に跳ぶ。
間一髪、氷猫はルルルがいた位置に跳びかかっていた。
かろうじて氷猫の攻撃を躱したルルルだが、危険は前方にも迫っていた。
イノシシの魔獣が3匹、ターゲットを氷猫からルルルに変えて突進してくる。
おそらく足に魔力が宿っているのだろう、凄まじい突進力とスピードだ。
ルルルに考えている余裕はない。
着地してすぐに、咄嗟に真横に飛んで攻撃を躱す。
イノシシの突進の威力は想像以上のものだった。
一匹のイノシシの太い牙が先ほどまでルルルの隠れていた大きな岩に突き刺さっていた。
牙が刺さった岩の一部はひび割れている。そのまま抜けずに動けなくなるのでは?と少し期待したが、そう上手くはいかなかった。
イノシシの魔獣は牙に刺さった岩の塊を、そのまま首の力のみで宙に持ち上げて地面に叩きつける。
頑丈そうな岩が、いとも簡単に砕け散った。
(ありえない、あれが魔獣の本当の恐ろしさか!)
ルルルは驚愕しながらも次の策を考える。幸い魔獣の再度の突進までは時間がかかるようだった。
必死に考えるが、都合の良い策は思い浮かばなかった。
彼はとにかくその場から逃げるために走った。
イノシシの魔獣は先ほどのように後ろ足で何度も足元を固め足場を作っている。
氷猫の魔獣はどうなったのだろうか?確認している余裕もない。
ルルルは走った。とにかく走る事しかできない。
息が上がる、呼吸も苦しい……。少し走る速度が落ちてしまった。
その時、耳元で風を切り裂く音を感じる。咄嗟に危険を感じ前方に跳ぶ。
……間に合わなかった。
背中にひどい痛みと熱を感じた。
致命傷だけは避けられたが、氷猫の爪により背中を引き裂かれたようだった。
痛む体ですぐに立ち上がり、また走る。
後方からイノシシの突進の地響きが聞こえる。
確認する余裕なんてない……ルルルは振り返らず直感を信じて急激に進路を横に逸らした。
凄まじい風圧がルルルの横を通り抜ける。
1匹のイノシシがルルルを追い越しそのまま走り去っていった。突進は避けられたようだ。
「グギャーーーー!!」
後ろから大きな叫び声が聞こえた。だが、振り返る余裕はない。
(あと2回は突進がくるはずだ……!)
ルルルはなるべくジグザグに進路を変えながら走った。
背中の痛みはどんどん増していく……。
息も切れ呼吸も辛い。酸素が足りない。思考も回らない……。
ふと気づくと目の前には崖があった。いつの間にか崖のそばまで走ってきたようだ。
眼前の崖、もう前には進めない……身体の疲れと酸素不足により頭も回らない。
焦りと緊張だけが心を支配する。
先ほどルルルを追い越したイノシシの姿はない。崖に落ちたのだろうか?
崖を背にして振り返り状況把握をする事にした。
振り返った前方にはイノシシの魔獣が2匹と氷猫の死体が1体。
先ほどの叫び声は氷猫のものだったのだろう、1匹のイノシシの牙から血がたっぷりと滴り落ちている。
口を動かして「ボリボリ」と何かを食べている姿も確認できた。
「このままでは俺も魔獣の餌になるだけだ……」
2匹のイノシシがこちらを睨にながら様子を伺っている。
ルルルの後ろには崖があり彼らもそれを警戒しているのだろう。
彼らが考えている間にルルルも策を練らなければならない。
少しだけ崖の下を覗いてみる。高い崖の下には川が勢いよく流れているが深さはあまりなさそうだ。
普通に落下すれば水底の岩に身体を打ち付けられ、重傷を負ってしまう事は間違いないだろう。
かといって正面からイノシシと戦う事も勝率がかなり低い……
ルルルが悩んでいる間、イノシシ達は行動を決めたようだった。
突進を諦め、ゆっくりとルルルに向かって歩いてきた。勢い余って崖に落下するリスクを避けたのだろう。
(賢いやつらだ……唯一の勝機もなくなってしまった)
ルルルが考えた最後の策は一か八かでイノシシの突進を躱して彼らを崖の下に落下させる策だった。
今ではそれすらも叶わない。
「まいったな……異世界での生き方が見えてきた所でいきなり大ピンチだよ……」
読んでくださって有難うございます。
少しでも評価していただけると有難いです。
続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。
しばらく更新ができず、納得のいかない文章を訂正していました。
ストーリー全体に変化はありませんが戦闘シーンなど少し付け加えた部分があります。
今日は2話投稿予定です。




