断り
長老からルルルはこの世界の歴史について聞かされた。
長老から語られたのは原初の湖とそこに住む精霊たちや進化し続ける生命の物語だった。
生物間の争い、精霊たちの分裂、そして人間や魔獣、獣人族の誕生までの世界の成り立ちの伝承を教えてくれた。
話が一区切りついた後、長老はルルルに向けて言葉を続けた。
「そんな時、誰も入れないはずの原初の湖でルルル殿を発見し、しかも魔獣を退ける力を持っていると聞いた。わしは原初の精霊様が遣わした獣人の英雄ではないかと思ったのじゃ」
ルルルは理由を聞き、自身の存在と役割について考え込んだ。
(自分は精霊に会ったこともなければ、英雄として選ばれた意識もない。しかし、ペンギンの身体で転生した。誰かが何かを果たさせるために転生させたのだとしたら・・・・・)
彼は自分が転生した理由に興味がわいた。
長老の話を通じて自身の転生がこの世界の何らかの役割を果たすためである可能性に気づき始めたのだ。
ルルルが考えている間にも長老は話を続ける。
「ルルル殿、現状の獣人族は危機的な状況じゃ。他の獣人族はここには住めず他の地に移っていった。その後の事はわしも知らぬ」
「どうか彼らを探し獣人族をまとめて欲しいのじゃ、お願いできないだろうかの?」
長老がルルルに尋ねる。
ルルルはエレンシアの様子が気になり彼女の方を見る、彼女も長老と同じような気持ちなのだろう。
彼女の瞳にはルルルの答えに対する期待に満ちていた。
彼は少しの間考えた。しかし、申し訳ない気持ちになるがどうしても自分の気持ちを曲げる事が出来なかった。
「長老。申し訳ありませんがそのお話は断らせてください。長老のおっしゃることは理解できますし事実かもしれません」
「しかし、私は自分が何者なのか自分自身でわかっていないんです。気が付けば湖にいました。ただ、それだけなのです。」
ルルルは事実だけを長老に伝えた。それが誠意と感じたのだ。
(まずは湖に戻り精霊を探そう。俺をこの世界に転生させたのが原初の精霊なら理由と目的を聞かなければならない、全てはそこからだ。)
(確信が持てたならエレンシアに転生の事を話してもいいかもしれない・・・)
長老とエレンシアはルルルの言葉を聞いて、がっくりと肩を落とした。
ルルルが自分自身を理解していない現在、自身の事をじっくり考える時は必要だと決意を尊重する。
一方で彼らはルルルが自分たちの村に留まり、共に過ごすことを密かに願っていたのだ。
彼らはルルルの誠実さを感じ、共に歩む者として歓迎していたのだ。
長老は静かに頷きルルルの断りを受け入れた。
「ルルル殿、わかったのじゃ。そなたの道はそなた自身の意思で歩むべきだ。」
「しかし、何か納得のいく答えが出た後でいい。もう一度だけ考えてくれないじゃろうか?」
「はい、自分の事を理解した後には力になれるように努力します」
「ありがとう。それでは、そなたは再び原初の湖に戻るのじゃな?」
慈愛に満ちた声で尋ねる。
ルルルはその言葉に頷いた。
エレンシアの瞳には複雑な感情が浮かんでいた。
彼女にはルルルと共に湖で過ごすことはできない淋しさがあったが、彼の成し遂げる事の妨げにはなりたくない。
ルルルが湖に戻り、自分の疑問に答えを見つけることは応援している。
しかし、この村で共に冒険をしながら過ごす未来はとても素晴らしいとも感じている。
(彼自身の用事が終わった後、私は彼と共にまた旅がしたいですの……)
「エレンシア。明日の朝、峡谷の出口まで空から一緒に来てくれる?」
ルルルは尋ねるがエレンシアの反応はない。
「エレンシア?」
聞こえてないのかと感じもう一度、彼が尋ねる。
「え?……もちろんですの、ルルル。少しでもあなたと一緒に行動しますですわ。嫌と言ってもついて行くですわ。」
咄嗟に何気なく出てきたその言葉でエレンシアは自分のルルルへの気持ちを知った。
気まずい気持ちになり下を向いた。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ふぉ。」何故か長老はにやにやと微笑んでいた。
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