峡谷
湖での休憩を終えたルルルとエレンシアは再び村へと向けて旅を続けた。
彼らが歩を進めるにつれ周囲の風景は徐々に変化していく。
夕方が近づく頃には雪原が岩場へと移り変わり、さらに進むとその岩場は次第に高く積み重なり、岩山と呼べるほどの情景と変わっていった。
ルルルは周囲を慎重に観察しながら進んでいた。夜も近づきそろそろ就寝できる場所を確保したかったのだ。
彼は岩山と岩山の間に広がる、一際大きな空間を見つけ入念にのぞき込む。
「エレンシア、今日はこの空間で夜を過ごそう。少し奥に進んだところが安全そうだから先に休んで。見張りは俺が引き受けるよ」
ルルルが優しく提案した。
エレンシアはその思いやりに感謝し、提案に頷いた。
彼らは交代で見張りをしながら休息を取り夜を明かすことにした。
翌朝、旅の初日を何のトラブルもなく終えたルルルとエレンシアは村への道を再び歩き始める。
朝の新鮮なな空気の中、エレンシアがルルルに向けて明るく微笑んだ。
「ルルル、おはよう。今日もよろしくですわ。」
彼女の声は朝の光のように暖かく心を和ませてくれる。
「おはよう。こちらこそ、よろしく。」
そして、二羽は軽い会話を交わしながら進んでいく。
歩みを進めるにつれ周囲の景色は更にに変化していった。
周囲に点在していた岩山は次第に大きくなり数も増えていく、やがて岩山は断崖と呼べるほどの高さを持つ峡谷へと変わっていった。
峡谷の壮大な景色は息をのむほどの絶景で、二羽は思わず足を止めてその風景を眺めた。
そして、意識を断崖の狭間に向ける。うす暗く、異様なまでに静かだ。
意識的に獲物を呼び込むために作られた静寂、そんな危険な気配が漂っていた。
しかし、二羽には進むしか選択肢がない。迷うことなく、その峡谷の道を進む決意を固めた。
「ルルル、村はこの峡谷の奥にあるですの、空からは危険はないけれど下はとても危険な感じがするですわ。」
「俺も何やら危険を感じたよ、君は空から進んだ方がいい。君の安全を確保したい。」
ルルルが警戒しながら告げる。
彼女は暫く考える。彼のいう事は正しい。しかし、共に進みたい気持ちも大きい。
ただ、戦いでは自分は彼の邪魔になる事も理解している。
(ああ、ルルルの助けになれたらよかったのに……。?なぜ、こんな気持ちになるのかしら……)
「わかりましたの。一緒に進みたいけれど私では足手まといになってしまうですの……」
「ごめん……」
ルルルは悲しそうに答えた。
彼もまたエレンシアを守りながら進む事のできない自分の力不足を悔しく思っていた。
そうして、二羽は空と地に別れ断崖の峡谷を慎重に進んでいく……。
エレンシアは自分だけが安全な道を進むことに少し申し訳なさと覚えていた。
しかし、気を取り直し空へと羽ばたいた。彼女の翼は力強く風をとらえ高く舞い上がる。
そして、峡谷の上空からルルルを見守り続ける。
一方、ルルルは峡谷の狭い道を慎重に進む。所々に狭く危険な道はあったが彼は足元に注意を払いながら前へと進んだ。
まだ、彼らは気づいていない。
峡谷の奥深くへと続くこの道は彼らにとって新たな試練となるだった。
エレンシアは少しでもルルルの助けになろうと考え、先行して峡谷の空を先へと進む。
空を飛びながらこれほどまでに地に目を向けた事は今までにあっただろうか?何か動いている気配はないか、危険な地形はないか?と全神経を集中させた。
そうやって、数時間は順調に進んでいた。
時折ルルルも上空を見上げて彼女に手を振った。
エレンシアはその行為がとても嬉しく感じた。
そんなやり取りもある中、2羽の間に少しの油断があった事は間違いない。
その時もルルルは上空のエレンシアを見上げ彼女の無事を確認し手を振っていた。
自分自身の周りへの警戒は決して怠ってはいない。と彼は考えていた。
峡谷の入口は何やら危険な感じに満ちていた。
確実に何かがここにいる!と思ってはいたが、ここまでの道のりはとても順調だった。
(思い過ごしだったかな。絶壁に挟まれて吹雪もないし視界も悪くない。むしろ安全な道だったのではないか?)
そんな気持ちを抱き始め進んでいると突然、上空からの悲鳴のような大きな声が峡谷に響く。
「ルルル!!!危ない!!足元!!」
エレンシアの危険を知らせる声だった。
ルルルは周囲を警戒した。
あくまでイメージです。
読んでくださって有難うございます。
少しでも評価していただけると有難いです。
続きもマイペースにですが書いていきます。
懲りずに読んでいただけると幸いです。




