手ごろなポテチ
一人の青年が酒屋につまみを買いに来ているが、この青年は持ち合わせが少なく、買った酒も安い発泡酒だ。つまみも安く上げようとしていて、店内をくまなく探している。
ポテトチップスのコーナーを見ていると、青年は一風変わった袋に入れられたポテトチップスを見つけた。赤色の半透明な袋に入れられている。明りに透かして見てみると、入れられているポテチの形状も様々で、星の形をしたものやハートの形をしたものなどがある。値段を見てみると持ち合わせに見合った手ごろなものだった。
「ありがとうございました」
店員は特に何も言わず、一風変わったポテチをレジに通し、レジ袋に入れて青年に手渡した。どういうものなのか聞こうかと考えたが、青年は店員の表情から見てそんなに変わったものではないのだろうと思い、何も聞かず店を出て帰宅した。
休日の晩なので、ゆっくりとアパートに帰っていると、空に月明かりがよく見える頃になり、プライベートルームに戻って窓越しに青年は月を見直し、
「いい酒が飲めそうだ」
と、いい笑顔でしばらく月を眺めていた。
発泡酒を開け、一人酒を楽しんでいる青年は、買ってきたポテチの袋も開けて星型の一枚を食べてみた。一枚の大きさはたいしたこともない食べやすいものだが、それだけでかなり腹が膨れた。続けてハート形の一枚を食べると、ほぼ満腹になっている。
「どういうことだろうな、それに眠くなったぞ」
青年は目をつむると、畳の上でコロッと寝てしまった。
数時間後、目が覚めた青年は起きて飛び上がるほどびっくりした。絵に描いたような美しい女性が、隣に座っていたのだ。
「どなたですか!? ここは僕の部屋ですよね!?」
「そうですよ、それにしてもあなたはやっぱり欲が無い人ですね」
美しい女性はやや切れ長な形のよい目で、青年を優しい表情で見ている。うろたえている青年を安心させるように女性はどういうことかを説明し始めた。
「潜在的な願望を叶えるポテチを食べて、あなたが現れた?」
「そうです、あなたはお嫁さんと安心してこの星で暮らせることの2つをわずかながら望んでいたので、2枚のポテチを食べたんです。私はあなたのお嫁さんになるために現れました」
「そうは言っても、見ず知らずの……」
青年の言葉尻を遮って、女性は、
「お互いよく知ってますよね。相棒さん。うふふ」
と、長年の様々なデータが入っている青年のパソコンを指して、そこから現れたとジェスチャーで示して見せている。
二人は末永く一緒に暮らすことになるが、とりあえずは翌朝嫁が作った味噌汁は絶妙だったそうだ。