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彼がばらばらになったのでケンカしました。

作者: 江口サイト
掲載日:2022/09/30

フィクションです。多分。

朝、目が覚めると彼が隣にいないことに気が付いた。

正確には存在しているのだが、私の手の中には彼の左手だけが握られている状態だ。

彼の左手は私のお気に入りで、私が寝ている間も離すことはなかったんだな。

彼はその左手で私のことを感じているのだろうか?

もしそうなら、体温が混ざって少しでも同じになれるのは嬉しいことかもしれない。


私が上体を起こすと、リクライニング機能付きの椅子に彼の体が横たわっていた。

体には付箋が貼られており、『あつい』と書かれていた。

そうか、彼は暑くてベッドから抜け出していたんだ。

まあ、左手を残してくれていたからいいけど。


テレビの前のテーブルには彼の頭が鎮座している。

今日もお気に入りの動画を流していたようだ。

少し白目になっているが気にしない。


私はのっそりと起き上がり、彼の左手と共にトイレに向かう。

ドアを開けると便座が上がっており、体の一部が落ちていた。

私は舌打ちをしながら便座を下げる。

これは…腎臓とアレか。次にトイレを使う人の身にもなってくれないかな。

しばらくしてカラカラと音を立てて震えるトイレットペーパーの芯と連動して私の右拳が震える。

入れ替えておいてくれてもよかったんじゃない?


リビング兼寝室に戻るとテーブルの上に右腕があることに気が付いた。

右手には携帯が握られており、ゲームアプリが起動されている。

そう言えば周回する必要がどうとか言っていたな。

私といるときくらいゲームを止めれんか。

おそらく右手の親指を動かすためにも右腕ごとあるのだろう。


彼が起きた後、テレビでやっていた話題を話してみる。

「3億円あったら何に使う?」

彼は親と自分に車を買い、実家のリフォームをしたいそうだ。

その後に私たちの部屋を引っ越し、友達と遊びに使いたいんだと。

私との結婚資金にはしないのだろうか。

何のための同棲なんだか。


私にも話を振られたので、まあ、答えてみる。

まず引っ越し。

あと、できるだけ多く人を呼べる披露宴のプランにしてドレスも贅沢に。

来場者の交通費も出すし、参加者のホテルも一部用意しないとだし。

新婚旅行にも行きたいし、結婚指輪!そう、指輪を忘れちゃいけないよね!

と、興奮気味に言ってみたが私も私のために使うんだろうね。

お互いに一致したのは引っ越しだけだったようだ。


ただ、今朝のこともあって一つ引っかかるものがある。

他者への配慮。

トイレに入る後の人のことを考えて欲しいと言ってみた。

彼は素直に謝るが、便座だけは反論してくる。

男性的には上げておいてもらいたいんだと。

色々跳ねるし掃除が大変なんだから下げて欲しいと言っても聞きやしない。

彼は耳を外して置いてしまったのだ。

いや、鼓膜を外せよ。聞こえてんだろそれ。


その後ちょっと険悪なまま、彼がお湯を沸かし始めた。

私も機嫌が良くなかったので放っておいたんだが、自分の分だけラーメンを用意したようだった。

再び舌打ちをする私に気付いたのか、ようやく食べるかを聞いてきた。

私は「いらない!」とぶっきらぼうに拒否し、ベッドに転がる。

癒しを求めるときには必ず彼の左手を私の頬にあてがうのだが、それはケンカをしていても同じだ。

ベッドで丸くなり、彼の左手を感じると落ち着いてくる。

彼も分かっているのか、ぴくぴくと動き出す。

筋繊維が足りないから何もできないだろうけどね。


彼とラーメンを食べながら話していると彼からも言いたいことがあったと言われた。

どうやら私の話が長くて辛いらしい。

んー。確かに私の話は長いだろうし、内容は大体『気に入らないこと』がメインになると思う。

嬉しかったことを話そうにも、彼も一緒の時が多いし、話すまでもないからね。


話の中に、せめてオチとか中身が欲しいとのこと。

だらだら話されると別のことをしたくなるし、時間を無駄に感じるらしい。

口をついて出てくるものを改変してオチを付けるのって嘘をつくことにならないかな?

それに、内容に対して案が欲しいのではなく、聞いてもらって共有や共感してもらうことが重要なんだけど。

話をするなってことかと聞けばそうでもないと。

じゃあ、私はどうすればいいんです?


一通り話しても決着はなく、彼は便座を下げることと、なくなりそうなトイレットペーパーは変えておくことを約束。

私は話を少しまとめてから話すことを約束した。

まあ、妥協が決着と言えなくもないか。


テレビを見ながら時は経ち、夕方になっていたので一緒に夕飯の買い物に出かけた。

1日中彼の左手を持っていたが彼は文句を一つも言わなかった。

そういうところは気に入っているんだ。

食卓に料理が置かれ、彼が一口食べた時に首を傾げた。

美味しくなかったかなと思ったが、今日のご飯は総菜だ。

味付けは私がしたものではない。


彼はゴミ箱を漁り始め、カップラーメンの入れ物を取り出した。

その中から何かを取り出し、キッチンで洗っている。

そう、舌が入っていたのだ。

だから今日1日左手を持ち歩いても文句を言わなかったのかな?

本日3度目の舌打ちに、彼の左手がピクリと動いたのだった。


同棲相手がばらばらになっていたら、どう扱いますか?

私はなくさないように気を使って気が気じゃない気がします。


そういえば男性よりも女性の方が持久力があるようですね。

余談でしたね。

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