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博士の愛しき発明品たち!  作者: 夏夜やもり
博士はネコ耳天使に興味(製作的な意味で)があります
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16 悍ましき発明④『体からカルシウムを引っ張ってきてツノを生やすらしいナノマシン』

「えっと……博士」

「なんじゃ?」

「妹を真の姿に戻すのは良いのですが、気になる事があります!」


 妹がじとりと(にら)んでくるのをふるふると首を振ってスルーし、私は博士に向き直る。


「人体への影響は大きいでしょ!」

「見た目以外はただちに影響はないぞ!」

「ふむ……」


 私は少し首を傾げて考える。うーむ……生えてきたツノが抜けるってなら、オシャレ革命の一助になるかもなだよなぁ?

 妹専用だし。


 あと、ナノマシン?

 現存するのか良く解んないけど、『骨を伸ばす』って部分だけを聞いてるとヤバイくらい需要があるかもしれない。妹専用だということを考慮すると……。


 思考の途中で、妹が割って入る。


「ふむじゃないでしょ!? あたしが被害受けたら、飛び火する人がだれかわかってんでしょうね!」

「ぬぇっ!? いや、その、突っ込みどころをなんとか模索しようと……」


 私の内心を読み取ったかのように、妹がつっこんできた。


「ただのぉ、半年で抜けるようにするつもりじゃが、儂の意見としては無駄だし、意味がわからん!」

『うん、アポトーシスはちょっとプログラムが難しいね! でも、これはチャレンジするだけの価値があるのさ!』


 アポトーシスって?

 あれー、最近、聞いたことがあるんだけど、何だったっけ?

 たしか、細胞が自動的にお役目を終えるとかそんな感じじゃなかったっけ?


「儂は、生え切り維持が楽で良いと言っとるじゃろ?」

『博士、ロマンだよ! 『儚く抜け落ちる』ってのは、魂にぐっとくる! そして、ロマンの追及こそが、僕を更なる高みへと導くのさ!』

「……ロマンなら、仕方がないのぉ」


 うん……ご友人はもう少しひどい目に合えば良いと思う。

 しかし、その『ツノが生えるけど抜けちゃう機能』って、博士が言いよどむってほど難しい感じだろうか?


「じつはのぉ、儂はこの分野に関しては昔の研究があるのじゃ。だから昔のモノを引っ張り出してきたが……」

「妹が使うに際して、問題があるんですか?」

「だから、使わないって言ってんでしょ!!」


 うん、憤りはわかるからさ、それでも話を進ませましょ? そんな目で妹を見る。


『たった半年で抜け落ちるようになるんだぜ! そりゃ、クリアするべき項目が結構あるのさ!』

「あ! もしかして、抜けてもまた生えてくるんですか!?」

『しっかりと主張したんだがね、博士がNGだしたのさ』


 ああ、よかった……最悪の中の最悪な事態がおきても、妹を半年辱めるだけで済む……ん?

 よかった!?

 あれ? てか、よく考えたら……半年って地味に長くない?


『あとさ、僕は『生え代わり』も好きだ! その要求をつっぱねたのも良く解らないんだぜ!』


 ……駄目だこのヒト。

 てか、そうだ! どどめさん(仮)の(ダイヤ)が生え変わるようにしたのって、たしかご友人だっけ!?

 本当に駄目だこのご友人!!


「儂も他の研究があるからの、『生え変わり』とやらには情熱がもてぬよ……」

「どっちにしてもムリよ!! 生え代わりとか悪夢だし! 半年とかも、意味わかんない!! ツノ自体が嫌だってば!!」

「何故じゃ!」

『何故だい!?』

「目立つでしょ!!」

「ツノは目立たんかったら意味がないぞ?」

『そうさ! 大胆なアピールこそが出来る大人の第一歩だぜ!』

「そういう問題じゃないでしょう!!」


 おおー。さすが妹、ちゃんとぶれない。

 私なら、二人がまじめに何故?

 とか言ってきたら、ちょっとだけ迷ってるぞ。しかし、私も助け舟出したいんだが、どう言うべきか悩む。


 妹があるべき姿に戻るってのはちょっとみてみた……いやいやいや!

 罠にははまらないぞ!

 そう、えっとだ。実生活面から攻めてみてはどうだろう?

 たしか妹はバイトの面接とか行きたがってたな!


 思いつくのと同時に、私は口を開いた。


「博士、ツノ生やしてバイトの面接とか行ったら、性格をどれだけ誤魔化(ごまか)せても落ちます!」


 『どれだけ誤魔化す』って辺りを力を込めて発したためか、妹が表情を引きつらせたように見えたが、まあ気にしない。


「なんと!? 最近はそんなんもダメになるのか?」


 いや、博士が面接担当じゃなきゃねぇ……。

 例えばだけど、接客業の人がツノ生やした人を雇うかな?

 雇う側としたらさ、どれだけその人の印象が良くてもさ、それを雇うって相当な賭けになるでしょ!?


 そういった博打を打ってくれるオーナーってどれ位いるんでしょうね?

 てか、そういったオーナーのいる場所に、妹を勤めさせたくないです。私。

 内心の思考を奥へやり、私は断定した。


「当然です。妹、並びに私たちの生活をダメにするつもりですか?」

「む、むむ……!? そ、それは、ツノを受け入れてくれる、バイト先を探すのはどうじゃ?」

「何処にそんなのあるのよ!? そもそも、そういう問題じゃないでしょ!!」

『だから言っただろう! 博士、僕が押してた、ちっちゃかわいい感じのデザインにしようぜ!』


 そういう問題でもないぞ?

 ご友人、あなた口を開くたびに好感度下がってるの、解ってますか!?


「お主は本当ぶれないの? しかし、悪魔のつのは羊の巻きツノが似合うと思わんか?」


 言いながら、資料からツノの写真を見せる。これは羊の……ビックホーンとかいうコメントがついているものだった。

 写真からだと寸法などがピンとこないけど、私は昔、斉藤さんがもらってきてた現物を見た事がある。あれは、ちょっと引くくらいぐるぐるの、で~っかいツノだった!


 しあれって、たしか人の頭くらいの大きさで、見た目のインパクトもすごかったんだよ!?

 あと、結構重かった気がするなぁ……。

 うーむ……妹が間違って付けられたら頭ぐわんぐわんなりそう。

 ……いや、それよりだ!

 博士ってばこれでもかって程、目立たせる方向だったの!?


 もうほんと、自分でつければいいのに!?

 不便な生活を実体験してから、人に薦めてよ!!

 こんなの付けて狭い通路で振り返ったら、ぶつかって頭揺れちゃうぞ!?


『僕としては鬼っ子の髪からちょっと飛び出てる、カワイイが大好物なのさ! 小指くらいの三角ツノが良いぜ!』


 あの、ご友人……そういったフェチズムを満たしたいなら、カチューシャとかで十分でしょ?


「お主の趣味は知らん! 良いか? この発明は、骨組織をどれだけ自在に操るかが楽しいのじゃ! ちっちゃいのは、簡単じゃろうが!」


 あれあれ? この発明ってフェチズムから発してたんじゃなかったのかな?

 博士の場合は技術家特有の作ることに陶酔しちゃったってやつ?


「それに、趣味で言えばあの巻き具合こそがぐっと来る! お子様を小悪魔に変える、蠱惑的なカーブが解らんのか!?」


 ……やはりフェチズムだった!?

 しかし、どうしよう?

 私、もうそろそろお腹いっぱいなんですが……。


 とおもったら、二人で何か言い合いしている。


『博士、僕の提案も聞き入れてくれよ!』

「カルシウム消費を抑えるという意味で、小指くらいのものでもええ。ただし、デザインはゆずれん!」

『いやいや、あのデザインで小型のツノは……ちょっとみっともないよ!』

「あのカーブを形作る汎用性を持たせる為に、どれだけ苦心したと思うのじゃ!」

『そ、それはまあ、僕も携わってるからわかるよ? けどカルシウム消費の軽減も考えなきゃだし、小指程度の三角が、体にとっても……?』

「駄目じゃ!」


 んー? カルシウム消費とか言ってますね……何処から消費するんだろ?

 もし、リソースが妹の体とかだったら、ツノ生やしたらほかの骨とかスッカスカになるんじゃ!?


 うん。だとしたら、これは世に出してはいけないだろうな。悪魔の妹はちょっとだけ見てみたい気はするけど、これは率先して破棄するべきだろう……。


 私はその気持ちを新たに抱き、ハンマーを確かめる。何か白カラスさんが気持ち震えたようだ。


「とりあえず、写真を送るから立体モデリングを頼むぞ!」

『……わかったぜ! ちょっと遊び心も入れていいかい?』

「それはちゃんと儂に見せるのじゃぞ!?」

『もちろんだぜ!』

「もし作っている最中に、変わったことに気付いたら、預かっている植物は枯らすからの!」

『ちょ、ダメだぞ!博士!! あれは僕の研究の集大成じゃないか!!』

「しらん。というか、儂はお主の遊びごころで7回ほど痛い目みとる! もうそろそろ、儂もだまされんぞ!」


 博士……えっと……えええっと……。


「あれ、ブーメランだよね」


 妹がぼんやりつぶやくので、私も息を吐いた。


「うん。似た者同士だからね、仕方ないよ……」

「てかさ、もう壊したい」

「だから、ひとつひとつは面倒だしさ、全部見てからだよ?」

「うーむ」


 妹は何やら難しいそうな顔をしている。


「どした? 頭にツノ生やしたくなったの?」

「いらない!」

「さよけ……じゃあどうしたのさ?」

「いや、次は天使かぁ……とおもってさ」

「うん? まあたぶん、そうなんだろうけど、ね?」

「本当、しみじみと思うけどさ……似合わないなぁ」


 私の顔を見てから、本当にしみじみとつぶやいたその言葉を、私はぐぬぐぬしながら聞かなかったことにする。ただし、心の中のいずれ仕返しノートに刻み込むことだけは忘れない。


「ソダネー。さっさと確認しようか」

「……うん」

「あの、博士! ちょっといいですか?」


 私が声を掛けると、二人は止まる。


「どうしたんじゃ、ひみっちゃん」

「発明はまだあるんですよね?」

「うむ! あと一つのこっとるぞ!」

『天使の輪だね! 僕も、こんな開発は初めてでさ! 本当に驚かされてるぜ!』

「それで全部かしら?」

「うむ! ひみっちゃん、いもっちゃんドレスアップ計画は、それで全部じゃ!」

「それでは、それも見せてください」

「わかったぞ! ちょっとまっとてくれな!」


 私の促しに、博士はだかだかと駆けていく。

 さあ、あと一つだ! もう少し頑張らなきゃならないようだなっ!!

 私は小さく息を吐き、気合を入れ直した。


【おまけ】

『発明は爆発と言い切ってよい!』

「言い切らないでください」

『だが、機構は電力ともいえるの!』


 ……奇行と聞き違えちゃったぞ?


「博士は電気にも詳しいの?」


 妹の言葉に白カラスさんは白衣をバサッとした感じに羽ばたき、私たちを見る。


『うむ! 電気に関しては基礎から発展まである!』


 そこから、ちょっと意味の解らない話となる。

 なんたらさんの法則とか、右手? 左手? の法則などだ。

 えと、何がわかるの? 



「あー、どっかで聞いたことある!」


 げ、妹も知ってるの!?

 あー学校で習うのかな?

 いや、お友達がパーンてするから、そういったのも得意かもしれない。


『つまり! 電気の最果てには、冥府との通話ができるかもしれん!』

「本当ですか?」

「最後良く解んない」


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