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博士の愛しき発明品たち!  作者: 夏夜やもり
博士はネコ耳天使に興味(製作的な意味で)があります
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06 悍ましき発明①『人体改造を必要とする作りかけのネコ耳・ウサ耳』の最後

「それじゃ、設計図と今出来ているものをお渡し下さい」

『な、なんでだい!?』


 白カラスさんがなんかわたわたしてて可愛い。おそらくご友人の挙動なのだろうな。ちょっぴりとほっこりしつつも、私はじとりと(にら)んで言い切った。


「裏で開発されても困るんですよ。だから、私たちが責任もって処分いたします」

「あれ、そういえばこれ、博士が持ってるの!? 作ってるの他国だったら壊せないとか?」


 あれ、そうだったっけ!?

 それは盲点だ。送るとなると、税関云々(ぜいかんうんぬん)で面倒だ……。

 というか、許可は絶対に下りないんじゃないかな?

 こっちから乗り込む?

 いやー、なんか身の危険を感じるんだよな……。

 しかし、まかり間違って完成し、追尾機能の方が発動したら自動的に飛んでくる感じがより怖い!

 あー、どうすればいいんだろう!?


「いや、機体はこっちにあるぞ?」

「え!? あるんですか?」

「というか、ひみっちゃんといもっちゃん専用だからの! 当然じゃろう?」


 ……え、えっと……つまり、え!?


『……ネコ耳もウサ耳も、微妙な動きや音の解析部分って、ソフトがものすごく重要だからね!」


 白カラスさんがなんか胸張った感じになり、さらに続けた。


『こいつは、僕の仕事の中でも、かなり気合の入ったプログラムだぜ!!』


 あれ、それって、え!?

 それじゃ、作ってるのは……博士になるんじゃないか!?

 私たちは博士を見る。


「プログラムを乗せる土台は儂が担当しとるのじゃよ!」

「え!? それって、メイン開発は博士って事じゃないですか!?」

「違うぞ! 開発の根幹はあやつじゃ! 儂は設計図通りにつくっとるだけじゃからな!!」


 博士は軽く息を吐き、少し眉を上げる。


「まあ、ちょっと理解が足りとらん所や、気になる点もある」


 えっと、それってどういう事だろう?


「しかし、儂は手掛けぬと約束したからの! 意見は伝えるし、安全面は配慮する。じゃが、勝手な修正は無しじゃ!」


 なんだろう、すっごく腑に落ちない……。というか、身の危険が高まった感じが強いんですが!?


「あの、私たちは作らないって選択肢を取っていただきたかったのですが?」

「すまぬ……じゃが、作るという衝動(しょうどう)は収まらなんかったのじゃ!」


 うん、本当にね、もう、もうもうですよ!!

 一回くらいひどい目に合わさないといけないのかな!?

 さすがの私もイライラが(つの)ってきている。


「まあ、いいわよ。どっちも出して」

『んー……何しようというんだい?』


 白カラスさんは小首をかしげた姿がかわいらしい。

 何だろう? あの時みせた渋さはどこにいったのだ?

 なんか、ちょっかい掛けたい。でも、中身ご友人だからなぁ……。


破棄(はき)と決まったのじゃ。耐えるんじゃぞ!」

『え? ええ? 何が起こるんだい?』


 博士は足取り重く研究室へと入っていく。

 その間に白カラスさんは、なぜかつぶらな瞳でキョロキョロと周りを見回している。くそう……それもまた、カワイイじゃないか……。


「またせたの……」


 そう言って博士が置いたのは、とてもリアルなネコ耳……という訳でなく、メカメカしい骨組みだった。

 ただ、一部だけには黒猫さんぽい感じの外皮がはっつけられている。これがもし、外装まで仕上がっていたらと思うとぞっとする。叩いて壊すのは精神的外傷(トラウマ)になりそうだ。


 ウサ耳の方も外側はちょっとだけしか出来ていない。アルミ製? いや、なんか変な文字が刻まれた感じの金属で出来た骨組みであった。

 どちらも根っこの方に紫に輝くコネクターのようなものがあり、先は丸まっているがざらざらした感じで、これこそが私たちの頭蓋骨(ずがいこつ)へ穴を空ける部分だと思われる。


「これが設計図じゃよ」


 博士は何時ものそれに比べたら、かなり薄っぺらい紙束を渡してくれた。

 あれー? これだけかいな?

 いつもは結構な束になっていたはずだけど。


「今回は少ないですね」

「そうかの? まあ資料は別に置いてあるからのぉ」


 そうか……何時もは、設計図と資料がまとまっていたのかな?

 あれ、でもこれ英語になってるな?

 白カラスさんが持ってきてくれたのって博士が翻訳したのかな?


「英語……ですね」

「あれ、あたしたちが見たのは日本語だったわよ?」

「そりゃこやつの機能じゃ」


 博士は白カラスさんを指して、大きくため息を吐いた。ふむ……突っ込んで聞いてみたい気もするが、壊してからでもよかろう。


『え、え? えーっとだ、博士? 僕たちの合作、どうするんだい!?』


 ご友人の声を聴かないようにして立ち上がり、ハンマーをポケットから取り出す。それを見た白カラスさんは、ものすごい急いでその場を離れた。


「じゃあ、お先に」

「うん」


 私は取り出したハンマーを振りかぶる!

 そしてそのハンマーを、頭蓋骨に穴を空け、なんか神経的なものを伸ばして脳へ接続し、おそらく耳を良くしたり、耳をかわいらしく動かしたりする感じの……ご友人いわく『世界の文化遺産的なカワイイの象徴』へ、躊躇(ちゅうちょ)なく叩き付けた!


 一度大きくゆがんで跳ね上がるネコ耳に、さらに打ち付け!

 叩きつけ!

 二度と(よみがえ)ってこないよう、叩き壊した。


「はい」

「ありです」


 そして、妹にハンマーを渡すと、妹は機能としてはネコ耳と同様ではあるが、そのすらりと伸びた形からセクシーさを引き立てる、(つや)やかさの具体化に、私よりも大きく振りかぶって、激しく叩きつけ、打って、打ち付け! 壊してしまった。


『なんだい、この音は!? のおおおおおおぉぉぉーーー!! もしかして、な、なんてことしてんだあああーーーー!?』

「ううーーー、ぅおぉぉぉ、儂も、しっかり手伝ったのじゃ……うう……ぐうう」


 ハンマーを恐れた白カラスさんは逃げてしまったらしい。ずいぶん遠くから声が聞こえる。博士も、自分が作り上げたということもあって、落ち込んでみえた。


「今回は私、申し訳ないとは言いませんからね」

「ひとの意見はしっかり聞きましょって話だもんね」

「うう……儂も暫くは、我慢(がまん)したのじゃ……しかし、すまんかったの……」


 なんだろう、博士も人付き合いがあったとかかな? いや、まあ、私たちに危機を及ぼしたという話だから、同情はなるべく抑え込む。

 そして、卓上ライターを借りて暖炉へと行き、いつもよりも薄く思える設計図をちょっと雑にちぎって投げ入れ、火をつけた。

 私と妹は、ひとまずほっと息を吐く。


「良いなぁ…………火は。私たちに多くを教えてくれる」

「うん……ヤバ過ぎる何かも、こうしちゃえば良いもんね」

「そうだね。だから、火は良い」

「火は、良いわね」


 あれ、紙質も違うのかな、いつもと燃えっぷりがちがうなぁ……?

 いつもはじんわり黒くなっていく感じだけど、今回は少し変な色に炎が変化して、そして激しく燃えていく。


「……ひみっちゃん、火はええかの?」

「……ぇっ、博士!?」


 安心して気が抜けていたのだろうか? 博士がすぐ近くに現れたため、不意を突かれてびっくりした。


「そこまで驚かんでもよかろう? というか、食い入るように見とったぞ」


 隣に座っていた博士は寂しそうな声で何かの資料、例の設計図に必要だったものを私に見せ、暖炉へと投げ入れた。

 それなりの分厚さがあった束は、中々燃えてくれない。


「ああ、束で入れちゃだめですよ! 燃え残りができてしまう、一枚ずつしっかりちぎって細かくしなきゃ!」


 私は投げ込まれたばかりの束を、火掻(ひか)(ぼう)を巧みに操って取り戻し、火を消したのち博士に渡す。


「ひみっちゃん、儂にそれをしろというんか?」


 あ、すっごい嫌そう……まあ、それもそうか。


「じゃあ、代わりにやったげますよ」

「うー、むむむぅ……頼むわ」

「はい」

『おう……火の音か……もしかして、設計図まで燃しちゃったのかい?』


 私と妹が発明を壊すときはかなり遠くへ避難(ひなん)していた白カラスさんだが、今は博士の肩に止まっていて、その耳元で言った。


「仕方あるまい、破棄すると決めたじゃろ」


 どうやらご友人の気持ちが切にわかるらしい博士は、眉をしかめてからなだめるように言う。


『し、しかし、あれのために、僕は結構苦労したんだぜ!?』

「儂は何度もやられておる。だから、おぬしも受け入れるんじゃ! ……まあ、完成前に壊されるのは流石に心苦しいがのぉ」


 唇を尖らせる博士、やっぱり気合い入れて作ったという感慨深さがあるんだろうな……少しだけ同情心は湧く。しかし、そのたびに自分へ言い聞かせるのだ。


効果が私たちへの脳改造ですからね? 擁護(ようご)はしてあげないもん!


【おまけ】

「えーっと、そういえば、そんな人だったっけ?」

「うん。だからね、もしそういう感じの外見だとさ」


 妹は考えている。そして何でもノートを取り出した。


「ちょっと待って。凄惨なのはNGだからね」

「ぅぐっ、見抜かれたか」

「ときどき描きたくなるの?」

「いやぁ、でも思いついたのをささっとね」


 ささっとでも、トラウマレベル描くからなぁ。


「どうせならさ、縦巻カールにしよう」

「うぇ、最も似合わないわね」


 そうだね。

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