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博士の愛しき発明品たち!  作者: 夏夜やもり
博士はネコ耳天使に興味(製作的な意味で)があります
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05 交渉③『さまざまなやり取りの結果交渉の果てを発見する』

『僕はね、カワイイの具体化に挑戦しようとしているんだ。何でそれを止めるんだい?』


 ご友人がとったであろうアクションを白カラスさんがしてくれて、ちょっとかわいい。

 そんなものには惑わされないぞ!

 その決意を新たに、ちょびっと視線を外して私は言った。


「まず、そもそもそんなもんの具体化をやめてください! 開発中止を要求します!!」

「人の頭がい骨に穴開けて、脳を改造するんでしょ? しかも、あたしたちの!?」

『そうさ! カチューシャじゃ、作る意味はないんだ!! AIが予測して動くブツはあるからね! ……でもさ』


 白カラスさんはとてとてと私たちに近づいて大げさに羽を広げる。羽が膝に当たってくすぐったいのを我慢しつつ、続きを待つ。


『神経を繋げて自分で動かせて、かつ耳の聞こえが(ケダモノ)並に良くならなきゃ駄目だろ! ネコ耳・ウサ耳を名乗る意味が無い!』

「いや、脳になんやかやするんでしょ!? 失敗したら廃人でしょうが!」

『大丈夫さ! 僕が設計したんだからな!』


 白カラスさんはオーバーリアクションで決めポーズをとった。目の端で博士が小さく首をひねったのを、私は見逃していない。


「じゃあ、形になったらご自分でお付けください!」

『僕が付けてもカワイイが無い! それじゃまるで意味がないだろう? それに、これはオーダーメイドだ。データが正確でなきゃ、機能が狂っちまう!』


 であれば、自分のデータで作ればいいのに……。

 断る口実にしていると、意地悪く(とら)えることもできるぞ?

 あと機能が狂ったら生体はタダじゃ済まないってこと、解ってて言ってるの!?


「そもそもぉ! 初めての()()()は製作者という法則があるって知ってますか?」

「そんなのあったんだ!?」

「無いぞ! 絶対にないぞ!!」


 外野、黙っていなさい!

 特に妹! 私が言い負かされたら、困るでしょうが!!


『逆になんでつけたくないんだい?』

「廃人になりたく無いからです!」

『ならないとしたら?』

「そのリスクだけで、付けないです!!」

『ワガママだなぁ』


 私知ってる! 人の言い分を聞かずに自分の都合を押し付けるって人格こそが、ワガママだってことをね!!

 しかし、このままだと堂々巡りとなりそうだなぁ……よし、路線変更してみるか?


「ていうか、膨れタコさんや深海魚さんがネコ耳つけてたらどう思いますかね!?」

『な……!? それは……』


 ……!? あの、白カラスさんさぁ、ご友人は本当にそんなポーズしてるの?

 ってくらい見事なオーバーリアクションをしている……。

 てか、そんなにショックを受けるもんか?

 いや、ここは追撃すべきだろう。


「良いんですかね? 深海を這いずり回ったような(おぞ)ましいヒゲ眉毛さんが、ネコ耳を付けた姿、見たいんですか? はっきり言ってください!!」

『そ、そりゃ……コンセプトの『カワイイ』が全て崩壊……むう、うむむ、ぐ……そうなったら、僕はどうすりゃいいんだ!?』


 お、行けるかな? おし、このまま押し込んで……。


『……いや、待った! 麗しの君は確か博士のイイひとだったよね』

「違います。ただ合鍵をもらっただけです」

「そこで合鍵とか言っちゃうからややこしくなるのに……」


 いや、こういうのって周りからイメージを作っていく博士の戦略だと思うのだよ。

 だからその都度(つど)否定しないとダメでしょ?

 妹よ、私のどどめさん(仮)戦略を察知してなかったのかな?


『ん!? 聞いてた話と違うぞ? 博士、どういう事だい?』


 急に振られた博士はこともなげに言った。


「ひみっちゃんは儂の愛人で間違いないぞ!」

「間違いです! 愛人じゃありません!!」


 私の否定を受け流し、友人さんは言った。白カラスさんが首をかしげるしぐさをした。


『たしか、美人さんなんだっけ?』

「うむ! 儂好みのすらっとした美人さんじゃ、ちなみにいもっちゃんは可愛い子じゃぞ」

『僕としては、そのカワイイってのにぐっと来るんだが、紹介してくれるかい?』


 おっと、ご友人、それは私も聞き逃せませんよ!?

 しかし、博士の言葉が早かった。


「駄目じゃ。いもっちゃんは幼いからの! お主のような(やから)と関わらせるわけにはいかん」

『なんだいそりゃ!? 僕がひどい男みたいじゃないか!!』

「むぅ、あんまり幼いとか、子供みたいとか、いわないでほしいわ……」


 博士と友人さんが何か色々やり取りを始めると、白カラスさんは私の肩に止まる。ご友人インストールの場合は、痛みはそれほどでもないみたいだ。

 ただし、博士と『太ももがどうたら』とか、『スタイルがなんたら』とか、ちょい聞きたくないやり取りが混じり始め、(やかま)しくなったので片耳を逆の手でふさいで妹を見やる。


 やっぱ、幼い……よなぁ?


 頬を膨らせた妹について考えた。こやつはときどき変な呪文を練習しているし、学校でちょっと洒落にならないようないたずらとかをしでかし、私たちを惑わせる。

 うん確定。口には出さないけど妹は幼い!


 そこまで考えて、ふと気づく。

 あれ!? そういえば、いろんな方々からの評価を耳にするんだけどさ?

 なんか……私よりは幾分かましとかいう声もちらほら……んー?

 むむむ、まあいいか。思考を口から出さず、一応のフォローを入れておくかな。


「まあ、博士からしたら幼いと思うよ。たぶん」

「んー、それもなんか……複雑よね」

「それにさ、ご友人は駄目な人っぽいからね、目をつけられたら大変だよ?」

「うん、それは大丈夫」


 そんなやり取りをしていると、ようやく話がまとまったらしい。


「つまり、おぬしはひみっちゃんたち『着けるひと』の言い分を聞き届ける義務があるのじゃ!!」


 なんだろう、博士には『着けない』と言っている言葉が聞こえないのかな?


『そうだな……解った。博士の顔を立てようじゃないか』


 少し落ち込んだように言った白カラスさんは私の肩から机へ移動し、私に顔を向けた。


『麗しの君は美人さんだからさ、『カワイイ』が高まるように、ネコ耳が必要だろう?』

「いりません」

『おう……』


 白カラスさんは軽く首を振る、そして妹へ顔を向ける。


『麗しの妹ちゃんは、その魅力をより色っぽく高めるために、バニー耳が必要じゃないか!?』

「ムリ!」


 即座に否定する私たち。白カラスさんはなんだか落胆したようなしぐさを取った。

 なんていうか可愛いと思えてしまうのが、ちょっと腹立つ。

 それから、白カラスさんはとぼとぼと歩いてから、飛びあがり、私の肩に止まって博士に向かう。


 あの、あなたは私を止まり木化しようとしてません?

 って、うお、ちょびっと痛みが増したぞ!?

 心を読んだ!?


「わかったの! この儂も我慢しとるんじゃぞ? 開発は中止せざるをえまい!!」

『ふーむ、画期的だと思ったんだがなぁ……アニマルイヤー型聴覚補助具』


 商品名だけ聞けば何か画期的に聞こえますよね?

 だけど、装着の為には自動で穿頭手術が起きてしまう設計だからね!?

 マッドサイエンティストの妄執(もうしゅう)と断じてしまえる一品でしょう!?


「人体に傷をつけないような普通なものを作ってくださいよ?」

「どっちにしても、あたしたちは付けないけどね」

「というか、普通に聴覚補助具じゃダメなんですか?」

『それじゃカワイイが足りないじゃないか! というかさ、そんなもん他にもあるだろう!』


 無いです!

 ……と突っぱねようとして、ふと考えてしまう。

 嫌に自信満々だしさ、えと、あるのかな?

 わざわざ脳と機械を繋げちゃうもの?

 えといろいろ怖くて、普通は作れません……よね?


 ……でも、実はあるのかも!?

 いやいやいや、()()()()やっちゃいけないはずだよね!?

 もしかして、どこかではやってるのかな!?

 ああ! そうだ、少なくとも今、ここでやっているじゃん!?

 負けちゃだめだ、私!!

 攻撃対象が私たちなんだから、否定しなきゃダメでしょう!!


「ねね、じゃエルフ耳とかにしたら?」


 ふえっ!? 妹が目を輝かして言いおった!?

 あああああっ、あのね、あのさ、妹さん!?

 この人たちがやろうとしていること忘れてない!?

 何度でも確認したげるけどさ!

 基本的な仕様がね、頭蓋骨に穴を空けて、脳細胞と機械をつなぐという、悍ましいと表現するべき『人・体・改・造』だからね!


 ぶっちゃけて言うと、外見とかを考える必要、全くないんだから!!

 私の葛藤(かっとう)をよそに、妹の発言をうけたご友人が感銘(かんめい)を表す。白カラスさんは私の肩で妹を見た。


『……天才か!? きみは、麗しの妹ちゃんかい!』

「え、ああ、しまった! 無し! 今の無しで!!」

『そうだったよな! うん、エルフから象さんまで、幻想乙女シリーズがあるじゃないか!!』


 象さんて、幻想乙女だったのか……!?

 負けてしまいそうになるのを何とか踏みとどまり、私は大声で言った。


「ああもう! 人体に取り返しのつかない感じの構造で、シリーズまでできてしまったら、そこまで出かけて行ってハンマー食らわしますよ!! 頭に!!!」


 その瞬間、白カラスさんはめっちゃ怖気が立つように羽を広げた。ぐっ、痛ったた……あの、力加減、間違いましたよ!?


『のおおぉぉぉ!? そいつぁ過激だよ! 銃や刃物は想定内だが、ハンマーは無理だ! だから、解ったからやめてくれよハニー!』

「はにぃって何じゃ? ひみっちゃんは儂の愛人じゃ!」

『おおう、恋することもNGってのは酷いんじゃないか?』

「どっちにしてもNGです……」


 誰がハニーや愛人だ……。急に始まる博士たちの私に関する争奪討論を聞き流した。


「はぁ……全く」


 そして、最終的には物理による解決が手っ取り早いという真理をみつけ、私は小さく息を吐いた。


【おまけ】

「ってことで、水に流してもらったわ!」


 妹がふんぞり返っておる。あのね、私がどれだけ苦労したか解ってるのかな?

 あーんなことや、こーんなことを要求してくる斉藤さんに、なだめすかしてご機嫌とったんだよ!


「まあ、これ以上王子とかはやめよう」

「うん。でも銀髪ロリ博士はおしいなぁ」

「んー、じゃあご友人は金髪ツインテにしよう」


 妹がすっごい顔でこちらを見た。


「あの人、奥さんと恋人に刺されたって言ってなかった?」

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