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博士の愛しき発明品たち!  作者: 夏夜やもり
博士は次元の壁に挑むようです
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11 謎の発明(アイデア段階)『私と妹にネコ耳とかを取り付ける!?』

「うむ! 天使の翼はひみっちゃんに似合っておる! 素敵じゃ!」


 博士の笑顔はとても素敵であった。しかし、私には悪魔が見せる無邪気な笑いに見える。


 うん。ちょっと待ってほしい! 治すついでに天使の翼ってどういうこと!?

 えと……正気!? なんで、そんな発想になるの!?

 対象って私ですよ? この世で最も似合わない感じでしょ!!


「ちょ、博士、なにを言っているんですか!?」

「いや、元に戻すってのはつまらんじゃろ? それにひみっちゃんに天使の翼はぴったりじゃ!!」


 どこを見たらそんな感じになるんですか!!

 私が言葉を挟む前に博士は立ち上がり、白衣を(ひるが)してから構想を語る。


「他にもじゃ! 角とかしっぽとか、カワイイとやらを生やしても良い!」

「はいっ!?」


 一瞬だが、面食らってしまった。そして言葉の意味を考える。博士は、何を、言ってるの!?


「天使の翼に、角や、しっぽ?」


 そして、私は自分の出来の悪いコスプレ姿を想像し、それが二度と外す事のできないであろう未来まで想像して、青ざめて立ち上がり、強く否定した!


「や、やややや、やめてください!!」

「おや? 急に元気になったの? しかしひみっちゃんにとても似合うぞ? おし、ならば……」


 博士は、自分の言葉でインスピレーションが湧き続けているっぽい。


 急いでホワイトボード駆け寄り、何かぶつぶつと数字の羅列を始めたっ!? その呟きには、ニューロンがどうとか、錘体路(すいたいろ)がなんたらとかが含まれている!!


 うげげげげっ、なんか、キーワードが人体改造っぽいんですがっっ!? しかも対象(ターゲット)は私ですよね!?

 ヤダヤダ! ムリだって! 絶対にお断りです!! というか、本当、そっち方面に振り切らないでっっ!!


「も、ももももっ、もしもっ、そんなことが現実になったら! 私、二度とここには訪れません!」


 私の言葉に博士は目を見張った。勢い込んで言ったが、背中に怖気が走っている。


「むぅ……それは嫌じゃな。しかし、面白そうだし、研究だけでもしてみたいが、駄目かの?」


 良いわけないだろっ!? 博士ってば、自動(じどう)追尾機能(ついびきのう)とか付けるでしょうがっ!!


「博士、そういった(たぐい)の研究をしていると知ったら、問答無用で壊します。研究所ごとですよ!」


 強く言った(おど)しに、しかし、博士は何故かにこにこと笑ってから、お茶をすする。


「そりゃこわいのぉ。じゃあ気を付けるわ!」

「絶対に! 研究とか! しないでくださいね!!」

「わかったぞ! じゃあひみっちゃんも、絶対に大怪我・大病はせんでくれな!」


 なんだか真摯な瞳で言って来る。あのですね、私は博士のお体の方が心配なんですが?


「むー……はい、気を付けます。命にかけて……博士も、ご自愛ください!」


 博士の言葉に軽ーく返して、ふと気が付く。

 あっれー!? 私ってもしかして、下手に怪我とかできなくなってない!?


「そうじゃ! 儂の友人が『いちばんカワイイのはネコミミだ!』とか言っとったぞ!」

「えっ!?」

「儂はネコミミとやらが何か知らん、じゃがこれは研究しちゃ駄目か?」


 おそらく(くだん)の友人さんですよね? 本当いいかげんにしてください!! 博士をおかしくしたのって、たぶんご友人の影響も少しはあるんでしょう!?

 ま、まぁ、ちょびーっとだけ、私も入っているかもですが、それは忘れました!


「あの、ネコミミって、ヒトに猫さんの耳が余計についてる感じです。それも駄目ですからね!」

「ほほう……猫の耳か? ありゃ集音機能があって便利じゃな!? しかも、可愛いぞ? 駄目なんか?」

「カワイイとかそういう問題じゃありません!!」


 博士がにこにこと楽しそうにお茶をすするのにあわせ、私もぬるくなってきたお茶をいただく。


 お茶の香気を楽しみ、ほっとした一瞬の後、脳裏に閃きが走る。


 それは、嫌な未来の予想図だった。

 そう……これから数か月後に私は大事故を起こしてしまい、意識不明の重体とかになってしまった状況である。

 そこで博士が今日の話を思い出し、本気を出してしまうのだ!


 私って結構しぶといもんで、ひっどいことになっても息はあると思う。

 しかし、損傷(そんしょう)ってのが、じつは大変なものであり、復帰には普通のリハビリでは難しかったとしよう。

 その場合、妹は博士に一縷(いちる)の望みを(たく)してしまうかもしれない!


 『いもっちゃん、儂に任せるのじゃ!』


 胸を張り、白衣をはためかせて強く言った博士の暴走は実を結び、ようやく意識を取り戻した私が鏡をみると……。


 そこには、病衣来ている私であるが、見た感じは天使で、しかも猫耳をはじめとした、博士とご友人の趣味的何かがいろいろ生えてしまった(おぞま)ましい……。


『ヤダー!!!』


 私はお茶をすする外面だけは崩さないまま、心の中で大きく叫んだ。


 そして、精神的な疲労が激しい私は、呆然としながらお(いとま)の挨拶をし、ふりゃふりゃしながら帰路へと着いたのである。



**――――

「それが一週間前の話なのね?」

「そう……だからさ、次の呼び出しがこわくてね……」

「良いじゃん! 絶対需要あるよ!」


 需要ってなんだよ? 妹がにっこにことしている。

 くそぅ、他人事だと思ってからに……。


「何の需要!? というか、なして私が供給にならなきゃなの!?」

「でもさ、猫耳はありじゃない?」

「ない。耳は二つで良い」

「むぅ、あ、そうね。もともと地獄耳だもんね」


 そうだね。聞こえすぎてたまに(ふさ)ぎたくなる。妹の歌とか楽器は特に辛い。


「じゃ翼は? 飛べるかもよ?」

「飛ぶのはいや。何があってもいらない。というか邪魔(じゃま)

「むう、贅沢ねえ」

「そういう問題じゃないやい!」


 ついに私は駄々っ子になってしまった。


「あらあら、すねちゃってさ」

「だって、私、これから怪我とか怖くてできないんだよ!」

「いいじゃん。これから気をつければ?」

「あーもう、どうしよう?」


 もういちごミルクも残り少なくなっているな。ぼんやり見つめてから軽く息を吐き、私は言った。


「あー、でも私が帰る直前に、『いもっちゃんはウサミミとやらが良いのじゃな?』って言ってたよ」


 その言葉で、妹は表情は一気に変わり、顔面蒼白になった。


「はぁーっ!? なんであたし巻き込んだの!?」

「私は別に巻き込んでないよ。博士が言い出したのさ」

「ウソだ! そっちに話を向けたでしょ!!」


 さすがに察しが良いな。


「まあ、私も仲間(イケニエ)が欲しかったからね。助言してあげたのさ……」

「何してんの! 本当、何してんのよ!!」

「ああっ! そうだ! 『妹は六つに分かれた黒い翼を欲していました』って助言しちゃったよ!?」


 妹がそういったモノに憧れていたのは本当である。ちょっと前の、呟やきを覚えてて、ぽろっと出てしまった。

 伝える気はなかったが、動揺からか口が滑ってしまったのである。


「あの、ごめん! 本当に言う気はなかったけど、私も動揺してて……反省してる! 許して!!」

「うっわー!? もうもう! 最悪!」


 『本当に悪かった』系の表情を浮かべる私に、妹は真っ赤な顔して厳しく(にら)んできた。


「どうすんのよ! あたしまで巻き込んでさ!!」

「おっきな怪我しなきゃいいのさ。私も気をつけるからさ、学校とかで気をつけてね」


 しれっと放つ私の言葉に、妹は頭を抱えた。


「あー、もうもう! そんなもん、気をつけるけどさ! もし、万が一事故ったら、一生恨むからね!」

「大丈夫。その場合は物理的に仕返ししてくれて構わないからね。……博士に」


 私の言葉に、妹は眉を上げた。


「そうね。じゃあたしは、のうのうとしている人を昏倒(こんとう)させるわ」


 え!?


「んで、『おそろにして! それが贖罪(しょくざい)よ!』って、博士に頼むからね!!」


 な、ちょ、ええ!?


「え、なななな、なしてそんなことすんの!?」

「良いじゃん。あたし一人で痛い目でみられるより、二人で痛々しく生きていこうよ」


 えー!? いや、まあこうなるのは見えてたけどさ! しかし、おっそろしい未来が生えてきたなぁ……。こんな感じでの一蓮托生(いちれんたくしょう)はいやだぞ?


「……あれ?」


 ふと、首をひねる。私たちってさ、なんで改造されること前提で考えているのだ?


「あのさ……博士を先にどうにかしない?」

「出来るの?」


 ……うん、どうなんだろう? 少し私は考える。博士は、倫理や俗欲では動かない。ただ、面白そうって感覚と、作る事の困難さを楽しむために動いているようだ。

 もし、私達への人体改造が楽しくも苦しい道のりであれば……。きっと、やる気を出してしまう!?

 私たちが本気で止めるとしたら、博士をどうにかしなきゃならない。それが、できるだろうかといった話になってしまうだろう……。


 そして私は結論を言葉にした。


「無理だ……」

「ねー」


 こうして一瞬会話が止まる。

 私は、いちごミルクももうおしまいである事に気付き、お皿を重ねはじめた。同時に遅い朝ごはんの雑談も、終わりとなったらしい。


「ああ、いろいろと悩むことが増えちゃったなぁ……」

「余計な一言さえなきゃね」

「それって、私に息するなっていってるようなもんだよ?」

「知ってる。もうもう……」


 二人の嘆息(ためいき)が重なった時、ふと、視界から外していたはずのどどめさん(仮)が、急に活発な動きを始めた。


「あれ? どどめさん、どうしたの?」

「その名前はやめてって!」


 いつも通り妹に否定されたが、どどめさん(仮)はうねうねと(うごめ)き、ホラー映画でもなかなか見ることのできないような、絶妙の気持ち悪さを付加して、窓へと()いずって行く。


「んー? どうしたのかな?」

「あら? あれ……」


 妹が窓を指差し、私がその方向を見た。その窓から、コンコンと、くちばしでつつく音がする。


「あれ……は……博士の!?」

「みたいねぇ」


 そう、そこに居たのは白カラスさんだった。その端正な顔に渋い微笑みを浮かべ、悠々と舞い降りてくる。


「えーっと、どうしよう?」


 妹が聞いてくる。


「私は行くよ……一緒に来る?」

「今日は、大丈夫……まあ、たぶん止めないとね」


 こうして、私たちのもとへ、科学の深淵への招待が届いた。

 その内容はタイムリーなものであり、2人とも避けることができないものとなりそうだった。


                            第二部 おしまい

【おまけ】

「斉藤さん扱いかぁ……」

「それはまた今度だよ」

「むぅ……てか、ここで話終り?」

「収まりがいいからね」


 妹は少し考え、手を打った。


「ねね、たまには次回予告しても良いんじゃない?」

「ん、じゃあやってごらんよ?」


 言い出しっぺの法則である。


「えっと、次回、あたしたちは博士の発明を壊します!」

「え? その、どんな発明とか、そういうのは?」

「結果は決まってる」


……らしいです。それでは次回もお楽しみください。


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