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博士の愛しき発明品たち!  作者: 夏夜やもり
博士は刻(とき)をみたようです
13/54

13 謎の発明⑤『冥府まで追跡して人を叩き起こす目覚まし』の結末

「あたし、博士のお友達が気になるわ!」


 反射神経でしゃべる妹は、ご友人についズバリと尋ねた。


「何が気になるんじゃ?」

「んーっと、お仕事とか、そもそもあんな良く解らない機能がなんで必要なのよ?」

「ふむ? あやつは若造じゃが趣味が合ってのぉ、仕事は……どこぞの国に存在する何らかの機関から、さまざまな依頼を受けているらしいの」

「国!? 他国の人? 機関?」

「あの、博士……その依頼ってどんなものですか?」


 同時に疑問点をあげるのだが、博士は眉をしかめる。


「内容は守秘義務とやらで語らんし、聞きもせぬ。ただ人を地獄(じごく)まで追尾する何かがほしいと言ってきおった」

「え?」

「どゆこと?」

「あやつは機能を欲しておった。後はやるからっての! だから儂は誕生日に向けてこいつに機能をつけたのじゃ!」

「それをあげちゃうの?」

「うむ! 儂の発明はすべからく人のためにある! 自分で使うのは最後でええ!」

「それって……」

「えーっと」


 聞いた感じでは人を害するために使われそうなんですが!?


 私は妹と顔を見合わせる。そうだ、一つ確かめておこうか。


「博士……その人の所属とか部署とか、解ります?」

「いや、あやつは個人でやっとる。ただ、クライアントは、企業よりも団体? が多いと言っとったぞ」

「マジなの!?」


 どうやら妹もアヤシイ想像したようだ。


「博士は嘘、言わないよ」


 私の補足で、妹は丸くなった目をさらに丸くしている。 


「なんじゃ? 変な顔して」

「そのー、ご友人て、どんなお役目なんですか?」

「知らぬ。奴もプログラムの分野では化け物じゃが、そもそも趣味の友人なのじゃ。あまり突っ込んでは聞かんな」

「そうですか」

「博士、その人の誕生日っていつ?」

「もうすぐじゃよ?」

「ふむ……」


 妹と博士のやり取りを聞きつつ、私は考えていた。本当はあまり好みではないが、ネガティブな思考となる。


 そう、すっっっっっごい穿った見方をした場合の使用法だ。

 ちょっと触れただけで個人認識ができて、時間に合わせて静かに地獄の果てまで自動追尾もしてくれる。さらには、爆発したのちに蒸発するようなびっくりどっきり目覚まし……。


 使い方次第ではいくらでも悪用できる品を、何らかの組織が入手する、かも……?

 これ、大丈夫!?


「博士、この発明品がどんな使われ方するかわかります?」

「そりゃ、目を覚ますためのものじゃ! 友人は一度寝たら泥みたいに寝るからの! 打撲してでも起きたいのじゃろう!」


 だめだ、ご友人を信じ切っている……残念ながら私は今までの情報から、良い判断が出来ない。


「えっと、どんなやり取りか、教えてください」

「えっとじゃのう……」


 そのやり取りとは、趣味の話をしているときに、ふと、ご友人がこぼしたらしい。

 今、抱えている案件で、どうも人を追尾するための何かがいるらしい。

 そこで博士はプレゼントする予定だった目覚ましに、その機能をつけようと思ったのだ。


 ちなみにご友人が放ったワードから、作製は難しいと感じた博士は、逆にえらいやる気をだしたらしい。

 ・静かにひとを追尾するもの。

 ・ぶつかっていくことができるもの。

 ・音量調節が可能であること。

 ・何かが起きた時、痕跡を残さず消え去るもの。

 ・消える時は蒸発するように、周りへ影響を与えないもの。

 ・何かを搭載できるものであればなおベター。

 ・スカートの中身へ入って行くならエクセレントをあげるよ!

 ・どっちにしてもステルス機能でご婦人には認識できなくしてね!


 あのぉ……このワードを並べただけで、アウトな想像しかできないんですけど!?

 このご友人ってどっちが主なんだろう!?

 うーむむ……。


 私は、考え込む。これの使われ方を、である。

 もう具体的に言ってしまおう。

 私は博士の発明品が『組織に有害な人物を排除するために使われる可能性』を考えている。ついでに、『18歳未満禁止的な案件』の可能性もだ。

 そういった観点から考えると、これはとても有効活用できるのではないか?


 だってね、どうやって飛んだのかわかんない感じで飛び上がって、ぶつかって爆発するのだよ!?

 それにうちでの大爆発は、私と妹を叩き起こしてはいる。

 しかし、どうやっているのかまるで解んないのだが、その音や光も決めた範囲で収まるようになっていて、さらに爆発した痕跡は無く、きれいに蒸発していたのだ!!


 あ……そうそう、それに加えて、私の声で饒舌(じょうぜつ)にしゃべるってのも、背筋が冷えちゃう案件じゃないか!!


「ああ、ちょっと、腫れてるじゃない!?」


 ぼんやりとした表情でそんなことを考えていたら、妹が私の手を取り上げた。


「うあ、いったぁ!?」


 なんか結構響くような痛みが走る。


「ひみっちゃん大丈夫かの?」

「これ、もしかして打撲じゃすまないレベルとかあるんじゃないの!?」

「ほう、そんなのが良いのかいもっちゃん。儂は使わんが、機能を足すこともできるぞ!」

「ダメです! というか、危なすぎる!!」

「そうかの?」

「私、被害者ですって!」

「ああ、そうじゃったの……すまんかったの……ちょっと冷やすもん持ってくるぞ」


 博士が立ち上がって研究室へと走る。

 妹はその目覚ましを拾い上げた。


「ねえ、これさあ……ダメなんじゃないの?」

「うーん……これ自体を、博士が個人で使うには良いかもだけど、ご友人って人が、どう使うかだね」

「どうする?」

悪い事(セクハラ)に使うのか、もっと悪いこと(サイレント・キラー)に使うのか……むむむ」

「悪いことにしか使わないじゃん」


 妹は私を見た。多分、壊すかどうか、だと思う。あー、うー、どうなんだろう!?

 でも、なあ、博士は良いとしても、ご友人に使われるというのだから、その、黒い感じの想像しか浮かんでこないんだよなぁ。

 私、ご友人とお話ししたわけじゃないし……。


「あたしさ、これ映画みたいな悪い使われ方する気がすっごくするんだけど? どう思う?」

「……私も、同じ」

「どうしよう?」


 人様がせっかく作ったものを壊すのは良くない。けどねぇ、それが博士に業を負わせるものであれば、私は非情な決断をせねばなるまい。

 私たちは目覚ましを睨みつける。


『おや? 自爆をお望みですか? 自爆、いきますかね!! うふふふ!』


 しかし、この装置って饒舌だったんだなぁ……。

 あれ? これ私の声で変なマネされるとしたら……厄介ごとが起きる!?

 まあ一番、危ういのは製作者の博士だろうけどさ。


「ねえ、あたしが判断していい?」

「……いや、壊そう」


 妹の言葉に、私は軽く頷いた。


「おまたせー! ひみっちゃん、これ氷持ってきたぞい! 儂も前にたんこぶできたとき……」


 戻ってきた博士の軽い声が聞こえる。


「あたしがやるわよ」

「良いの?」

「手、痛いでしょ?」

「……うん」


 私は妹にアイコンタクトでポケットへ誘導した。

 すると妹は、私のポケットからハンマーを取りだし、博士特製目覚ましを拾って机に置く。


『脅威確認。ゆるしてね♪』

「えいっ!」


 時計の私が放った命乞いに、ちょっとだけだが躊躇(ちゅうちょ)しつつも非情な行動もできる妹は、その目覚ましを叩いて、打って、壊してしまった。


「なにゅっ!? の、のぉーーーーー!? いもっちゃんまで、何をするんじゃあああああ!?」

「ごめんなさいね、うちのダメな人でも怪我(ケガ)させちゃったから、あたし仇討(あだう)ちしなきゃだわ……」


 残念だが、私はまだ生きている。過剰防衛だろう。


「博士すみません。 起床時にトラウマを植えつけるだけならまだ許せましたが、心身ともにとなると見逃せません……」


 ばらばらになった部品をさらに叩いている。あ、妹ってば、私よりも容赦(ようしゃ)ない……しかし、あやつだけに業を背負わせてはならない。


「あと、博士、これはとても悪いことに使えてしまいます。だから、きっちり処分しなきゃいけません」


 ご友人との関係が解らないし、判断が正しいかはわからない。だが、今回は緊急性があると思ったのだ。


「設計図は何番ですか?」

「おお……あう……323……じゃな」


 そうか、世界の静止装置と世界の退化を作っている途中に、これを挟んだか……私は勝手知ったる人の家といった感じで、設計図入れまで行きその設計図を取り出す。


 中には結構びっしり書き込みがある部分と、かなり適当に書かれた部分のある図面を確かめて、添えつけの暖炉にて、痛む手を無理に動かし、しっかりと細かくちぎって投げ入れ、妹が借りてきてくれた卓上ライターで火をつけた。

 起床トラウマの製造も兼ねた、要人追尾型時限式爆弾の設計図は、炎に巻かれて消えていく。


「……うん、火は良いなあ」

「ああ、なるほどね。なんか、いいわねぇ……」


 二人してその『私っぽい自動追尾型の悪夢・外傷製造装置』の設計図が、灰になっていく姿をしっかりと確認したのちに立ち上がり、落ち込んでいる博士に言った。


「博士、お小言のつもりで来ましたが、ここらへんで勘弁してあげます」

「そだ、あたしにもダイヤちょうだい!」


 ここでそれはないでしょうに……というか妹、まだあきらめてなかったのか?


「おぬしら、強盗か?」

「いいえ、ただの被害者家族です!」


 博士の言葉にくすっとしつつ、妹がなぜか胸を張る。まあ、いいや。うん。


「そうだ、ちょっと話が長引きそうだし、お茶を淹れましょうかね?」

「う、ううう……お茶は……好きにいれるとええ……ぐぅうう」


 博士は今だに落ち込んでいる。私はお茶を淹れようとした……が、やはり手に痛みが走ってしまう。


「いったぁ……むう」

「あ……。これで冷やすとええぞ……ひみっちゃん……」


 私が痛そうにしているのを見た博士は、持ってきたスポーツ用の氷嚢を手渡してくれる。


「ありがとうございます」

「あたしが淹れるわね」


 妹は弱っている者にはやさしい。どうやら気遣ってくれるらしい。お言葉に甘え、お茶は妹に任せた。


「あ、結構いい茶葉だ!」


 そんな事を呟きながら、急須をゆらしている。ちょこちょこ愛嬌を見せるよなぁ……。

 というか、博士結構来客あるのかな?

 茶碗や急須は私の家ではキッチンに置いてるぞ。


「ポットお借りするね!」

「……うむ。ありがとな、いもっちゃん」

「そうだ、この和菓子をどうぞ」


 妹が満面の笑みを浮かべてお茶の用意をし、私は持ってきた和菓子を出した。

 そういえば妹って私には見せないけど、気遣いができる風にごまかしているらしい。謎の魅力があると親友ちゃんが言っていた。


 本性知らないからなぁ……(だま)されるかもだよなぁ……。


 そう思いつつ、私は妹の手際を見守る。ささっと淹れたお茶を出し、妹は胸を張って言った。


「おっし、本題ね! 博士!! ダイヤちょうだい!」


 やっぱ……騙せないかな?


【おまけ】

「じゃあ、これで」


 私は、真ん中の箱を選んだ。


「良いのね?」


 そう言われたら迷っちゃうじゃないか!


「むーむむむ……良いよ」

「中には……なんと! あ、うそ!? あたりじゃん!」


 お? やった!

 さっすが私、持ってるね!


「中には、幼き日のお手紙が入ってました!」

「うっええええ!? ちょっ、ええ!? それは、まっずい!」


 え!? 内容!?

 語れるわけないでしょう!?


「なになに、拝啓……」

「や、やめろぉ! 戦争になるよ!!」


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