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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
8章 モブですがイケメン公子の婚約者です!?
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13

私を断罪でもしようかというその空気に私はうんざりした。

何をどう解釈したのか彼女達には最初から私はレイナの敵のようだ。


──やってられない…


「馬鹿馬鹿しい…」


あまりの茶番に私はそう口から漏らす。

そして、正義感に浸っているレイナに浸っていた空気がピリつく。


「ちょっと…貴方っ!レイナ様がここまで言ってるのにっ──」

「さっき聖女様が仰った事はそっくりそのまま返しますよ」


私はベイリーが話すのを遮って言った。

けど、私の言葉を信じない彼女達には無意味だろうなと思う。

だから、もう放棄した。


「さっきも言いましたが、どうぞ飲んでください」


私はベイリーにわざとらしい丁寧口調で言う。

ベイリーも腹が立ったようで眉をピクリと動かす。


「もう私は何も言いません。阿婆擦れ呼ばわりされてまで皆さんの心配をする程私もお人好しでもありませんから。後味は悪いですけど、これ以上私にはどうしようもないですし」


阿婆擦れって自分で言ってみて感じるけど、よくこんな単語が簡単に出てきたなってベイリーに感心する。

言い慣れている人じゃないとそう簡単には出ないよ。

悪口って表現するのも結構大変なんだなとか思う。


「これもさっき言いましたけど、ミンタを飲むのなら皆さんには責任はありますけど、私には一切責任はありませんよ?後になって必死に止めてくれればよかったのになんて言葉は通用しませんから。なんなら一筆書いて飲んで下さい」


私はそう言って「書くものありますか?ほら、早く出して下さい。」と嫌な感じにベイリーを急かした。

嫌われてるなら、もういいやとか思ってしまった。

この人たちはどうせ私を見直そうとか言う気もないんだ。


「はっ、言い返すこともできないからって脅すつもり?」


ベイリーが言ってきた。


「なんとでも仰って下さい」


何を言っても彼女達には響かない。

馬鹿な発言をしているのはどっちかなんてどうやっても理解できなんだろう。


「ただ、私はこれ以上この件に関わりたくないだけです」


できるだけ冷静に言葉を続ける。

早口になったら勢いで「あんた馬鹿か」なんて言っちゃいそうだから、できるだけゆっくりと言った。


「「「っ…」」」


ベイリー達も私を憎々しげに見るだけ。


しばらく沈黙が続いた。




カチャッ




すると、私がやいのやいの言っていたせいか、既にレイナからティーカップを受け取っていた令嬢がテーブルに置いた。

それを見た何人かの令嬢も気不味そうに同じようにティーカップを置き始めた。


「え…みんな……」


レイナは驚いて彼女達を見る。


「そこまであの方が言うのなら、一度確認してからでも遅くないのでは?」

「そうですよね。ここでこうやって揉める話でもありませんもの」

「え、えぇ…冷めてしまうのは勿体無いですけど…ねぇ?」


ぎこちなく令嬢達は互いに目配せをする。

令嬢達はレイナを気にしながらもソーサーを奥に押して、ミンタ茶と距離を取ろうとする。


「みんなは、私が嘘をついてると思うの?」


レイナは悲劇のヒロインのように目に涙を溜めた。

その表情に令嬢達はさらに罪悪感に満ちた表情を浮かべる。


「レイナ様が嘘をついているなんて思いませんわ…ただ……」

「えぇ、まだここにきて数ヶ月ですし、この国のものを知らなくてもそれは仕方ないかと思うのです」


数人の令嬢達がそう言えば、それに共感を覚える人たちも次次に申し訳なさそうにカップをテーブルに置いていく。


「貴方達何をいってるの?」


さっきからレイナ信者のようにキツすぎる発言をしていた令嬢が彼女達に詰め寄る。


「気は確か!?」


そう言われても、彼女達も命を脅かされてまでレイナを信じようとは思わないみたい。

言い訳をモゴモゴと口にしなんとか逃れようとしている。


──追い詰められなきゃ判断できないって…


呆れながらも、この空間の中では彼女達はある程度はまともなのかもと思う。

それだけ、この空間は異常だった。


「精霊の嫌われ者の癖にっ……」


ベイリーが悔しそうに私に言う。

けど、そんなに凄まれても私は怖くもなかった。

彼女の盲目的にレイナを信じる姿は異常だけど、命まで捧げる姿はどこかわざとらしく陳腐に思える。

私はまっすぐベイリーを見返すと、ベイリーはグッと唇を噛み締めた。


「私が証明してやるわっ!」


「「「!」」」


ベイリーはそう言って、私が押し付けたティーカップに口をつける。

そしてミンタ茶を勢いよく口の中に流し込んだ。

令嬢達はその光景に悲鳴をあげる。

私も本当に実行するとは思わなくて、唖然としていた。


「ベイリー!?」


一気に飲み干したベイリーに真っ青な顔をしたレイナが駆け寄る。


「ゴホッ、ゴホッ…」


ベイリーは勢いよく飲み込んだからか、少し咳き込んだがそれが治るとゆっくりと顔を上げた。


「何が…毒ですって?」


ベイリーはそう言って、勝ち誇った顔を私に向ける。


「……」


体に異常がないことを証明するかのようにベイリーが両手を広げる。

私はそれを黙ってみていた。


──何ともないの?


ノアの語り口から有毒で危険であるのは容易に判断できた。

私は空になったティーカップを見た後、じっとベイリーを観察した。

本当はどうなのか、私自身も混乱していた。


けど、ベイリーにはなんの異変も起こらない。


「ミンディさん」


すると、マリッサさんが口を開いた。


「レイナ様に失礼ではありませんか?穏やかなお茶会でこんなふうに騒ぎ立てて……これで十分でしょ?」


ベイリーを示しながら、マリッサさんは私を責めるように言った。

その言葉でレイナの取り巻き達が一斉に私を睨む。

そして、それに続くようにベイリーに寄り添っていたレイナも立ち上がる。


「これ以上、嘘をついても何にもならないよっ!」


先程の涙を溜めたまま、レイナは私に訴えかける。


「自分を苦しめるのはやめよう?今なら皆んな許してくれるから、ね?」


ヒロインは慈悲の心で、悪役を助けようとしている。


レイナを信じている人にはそう見えるのか、私を厳しい目で見つめてきた。

先ほどから躊躇いを見せていた人たちは、何が真実なのか混乱しているようでもある。


──飲んでも本当に大丈夫なの?


確かに危険性があるだけで大丈夫な事だってあるかも。

元気なベイリーさんを見ていると、本当は違ったのかもと疑問も湧く。


──でも、ノアは不確かなことは言わない…


どうして有毒なのかノアなら確かめて言うはずだ。

でも、これからどう言えばいいのか私には分からない。

ノアの言っていることは本当なのに、目の前の状況が確かじゃない。


「なんか言ったらどうなの?」

「あれだけ言っておいて、嘘でしたって?」

「呆れるわ」


口々に私を責める。

俯くべきではないけど、私は俯いた。

ここで隙を見せたらいけないのに、目の前の状況に私は辛くなる。

可能性を言っただけだと言っても彼女達には通用しないだろう。

私もあれだけ大口を叩いたから、そんなことわかってる。


「謝罪しなさいよっ!ほら、早く!」


1人が私の背中を押してきた。

ふらついて一歩前にでるも、そのままその場に座り込むほど弱くもなかった。


「っ…」


謝って終わらせるべきか悩む。

その間にも令嬢達は口々に私を責め立てる。


「もう、いいでしょ?ミンディさん」


レイナも私に寄り添うように声をかけるも、謝罪を求めてくる。


「もっ…」


収まる方法はこれしかないのだと口を開き変えた瞬間──



「ぐっぅっ……」



さっきまで余裕の表情を浮かべていたベイリーが足元をふらつかせてその場に崩れ落ちた。

そして、苦しそうに声を上げ始める。


「あっ……う゛っぅっ……」


ベイリーは呻き声を上げながらその場に倒れもがき苦しみ始めた。


「「「キャァーーーーーーーー!!!!!」」」


そして、さっきよりも大きな悲鳴が上がる。

泡を拭きながら倒れているベイリーに誰もが慌てふためく。

その部屋はすぐにパニック状態になり、中には逃げ出す令嬢もいた。


「ベイリー!?ベイリー!?」


レイナが駆け寄る。

けど、レイナの取り巻きの令嬢達はベイリーに近づこうともせずに震えている。


「い、一体なんですのっ…」

「本当に毒っ!?」


真っ青な顔で自分たちはとんでもないことをしたのではないかと慌てている。

後悔しても遅い。

私だけじゃなく、彼女達にも言えることだった。


次第にベイリーは痙攣し始めた。


「ベッ…ベイリー!ベイリー…」


レイナは動揺しながらただ彼女の名前を呼ぶ。

私も目の前で起こる突然の光景に最初は呆然としていたが、すぐにハッとした。


「早くっ、早く医者をっ」


私はすぐ横にいたマリッサさんに言った。


「なっ…なんで……こんな…」


マリッサさんはそんな私の声が届いてないのかそんな光景を見ながら呟く。

思考がどこかに飛んでいってるから、多分使い物にならない。


「あっ…あぁ…っ……」

「ベイリーっ!!」


ベイリーさんの息が途絶え始めた。

もう時間はない。


──ノアっ…


これしか方法はない。

ノアはレモラの中毒者の治療にも協力してる。

きっと解毒の知識もあるし、何よりノアにはその能力がある。

すぐさま呼ぼうと、ノアのくれたブレスレットに手をかけたその時だった。


「いやーーー!!!!!」


レイナが目の前で人が死にかけているという恐怖に耐えきれず、叫び声を上げた。

その叫び声と共に、何かが光る。

レイナをみると、レイナの胸元にあるピンク色の魔石が神々しく光っていた。


──あれは…


その光から発せられた力がレイナが抱き寄せているベイリーの体を包む。


誰も言葉を発さなかった。


突然のその光景に残っていた全員が目を見張り固まっていた。

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