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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
8章 モブですがイケメン公子の婚約者です!?
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「ノア!さっきのはどう言うこと!?」


食事会あ終わり、私はノアを連れ出して問い詰めた。

「人影の少ない場所に連れ込むなんて、私って結構大胆♡」なんて考えてる暇はない。

混乱している勢いのまま私はノアに喰ってかかる。


「そのままの意味だ」


ノアは「何がいけないの?」と言わんばかりの顔を見せる。


──だから、そのままの意味って………、意味って!!


ギャンと叫びたくなった私はグッと押し込んで、さっきの食事会をもう一度思い出す。


──何でこうなってんのよ…






「今すぐとは思ってません。ただ、僕は彼女と、将来的に成婚することを望んでいます。僕が結婚するなら彼女以外はありえないから」


ノアは何かを報告するかのように言った。

ノアの突然の発表にテントの中は、今日一番の盛り上がりを見せる。


「まぁ!素敵な方ですって♡」

「公子からそんな話を聞けるとは」

「なんてこと!」

「若いとはいいですな」

「最近は、恋愛を楽しむ方々もいますからね」

「すぐに結婚しなくてもいいだろうな」

「私もあと20歳若ければ、公子にアプローチしましたのに」

「ダメですわよ。やっと公子が興味を持たれた方に貴方が敵いまして?」

「実におめでたい!」

「社交界が大騒ぎでしょうね!」

「公爵家も安泰の様ですな」


離れた席の人までも騒ぎ始めていたが、私は脳の整理が追いつかなくて、それに反応を示している暇が無かった。


──え、夫婦?めおと?夫と妻?旦那様と奥様?


ノアの発言から、情報をきちんと認識しようとしていたのだけど、どれもピンク色の文字で浮かんでくる。


「本当に!?ミミとノアお兄様が結婚してくれるの?」

「こら、ティア、ちゃんと座りなさい。あまり話を急かしてはいけない」


ティア皇女が椅子の上で立ち上がって喜び始める。

皇太子がそれを諌める声を聞いて、私はやっと現実に帰ってくる。


──これは…現実?


確認するためにノアを見る。


「……!?」


ノアは、何故か達成感に満ちた顔をしていた。


──why!?


冷静になるために現実を見ようとして、余計混乱した。

本気で、ノアは私と──


「2人は既にお付き合いを始めていたのね」


皇后は驚きながらも、どこかあっさりとした声を出した。

流石に否定せねばと声を出そうとすると──


「はい」


ノアが躊躇うこともなく答えた。


「ふぇ!?」


本日2度目の変な声を上げてしまった。

もう、わけわかめですわ。

だって、いつから私ってノアと付き合っていたの?


「もしや、その腕章は…」

「はい、ミンディ嬢から頂きました」


ノアが当然の様に答える。

さらに周りは盛り上がりを見せる。

「若いね」なんてニヤニヤした顔が増えた。


──あぁあああああ゛あ゛!!


私は恥ずかしさで消えちゃいそうで、顔を覆った。

堂々と言って欲しいものじゃない。

私の中で、ここで失態をしちゃいけないなんて考えはどこかに吹っ飛んでしまっていた。


「まぁ、いつから?」

「皇后、あまり無粋な質問はしてやるな。やっとノアが見つけたいい縁なのだ。そっと見守ってやるのが我々の役割だろう?」


皇后が話を盛り上げようとすると、それを皇帝が制した。

皇后を制しながら、周りの浮き足立っている貴族達も制す。

皇帝はやっぱり、何かが違う。


「それに、成婚となれば話が別だろう?結婚とは家同士の問題だ。なぁ、デネブレ公爵」


皇帝がノアのお父さんに話を振る。

どこか俯瞰的にその場を眺めていたノアのお父さんが笑い顔を浮かべた。


「おい!」って私は叫びたくなった。

だって、皇帝はこのまま話を流してくれる人だと思っていたから、デネブレ公爵に話を振るなんて裏切り行為だ。


「ミンディ…おっと、ウルグス嬢ね。ウルグス嬢がうちの嫁になってくれるなんて願ってもないことですよ」


ノアのお父さん、デネブレ公爵は調子気に言った。

その反応に、皇帝が食い付いた。


「其方は、彼らの結婚を認めると?」

「えぇ、いいんじゃないですか?私は賛成です」


そう言って、公爵はシャンパンを煽って、嬉しそうに笑う。


「ウルグス嬢が来てくれたら、我が家のシャンパンはもっと美味くなりそうだ」


ついでに笑いも持っていく。

ノアはどんなつもりか分からないけど、「僕もそうなると思う」ってぶんぶん頷いてる。


すると、皇帝は顎髭をさすりながら、柔らかく悪戯な微妙な笑みを浮かべた。

何だか、私は背筋が凍る気分になる。

皇帝は周囲を観察して、ゆったりと口を開く。


「ほう、そうか。それなら、皇家も後押しせざるをえんな」


「「え?」」


皇帝の発言に、私とレイナの声が重なった。

私は驚いてレイナを見ると、レイナも驚いてこちらを見ていた。


だけど、そんな私たちなんてお構いなしに、皇帝が言葉を続けた。


「ティアの女官として、尽くしてくれているウルグス嬢への恩義がある。それに報いるのなら今だろう」

「恩義だなんて……、十分頂いておりますっ」


恐れ多い。既に報酬を貰っている。

何なら、これから年金まで貰うつもりでいるから、これ以上なんて望んでいない。

想定外の展開に私は頭を上げるのが恐ろしくなった。


「まぁ!!とってもいいお話ですね。陛下からのお許しを貰えるなんて、花嫁としてこんな嬉しいことはないでしょう。私もミンディさんの友人として嬉しいですわ」


そこへ追い討ちをかけるようにヴェロニカがわざとらしく声を上げた。

こいつ、絶対何かに利用する気だ。


「スノトーラ卿もそう思いませんこと?」

「…」


いきなり、ヴェロニカに話を振られたスノトーラ公爵は相変わらず険しい顔をしている。


「問題がないのなら、いいのでは?」

「まぁ、そんな堅苦しい言葉ばかり言わないで、私の友人にお祝いの一言でも言ってくださいませんか?」

「……」


渋々発言したスノトーラ公爵にヴェロニカがさらに話しかける。

私は心で「やめてくれー!」と叫ぶ。

絶対、これってヴェロニカなりのスノトーラ公爵に対する嫌がらせだ。

まだ、薬草の事を根に持っているらしい。

スノトーラ公爵はずっと険しい顔なんだけど、彼を取り巻く空気がだんだんと重くなる。

ヴェロニカの代わりに私が追い詰められている気分だ。


「さて、気が早いかもしれぬが、若い2人の未来を祝福しようではないか」


皇帝が立ち上がり、グラスを上に掲げた。

それに習って、次々とお偉いさん方が立ち上がりグラスを持ち上げる。

ノアもすぐに立ち上がっていた。


──何で!?


私は訂正する暇もなしに話が進む、進む。

完全に祝福モードのこの状態。

私はそれをどうにかする術も勇気も無かった。


勿論、周りに呑まれすぎて、その時のレイナの表情なんて気にする余裕なんて全く無かった。







私はノアを連れ出して問い詰める。


「付き合ってるって、どういうことっ!?」


ノアは冗談を言うタイプではない。

嘘も嫌う人だ。

なのにあの発言をしたってことは──


「僕が『好きだ』と言ったら、君だって『好き』と言った」


ノアが悪びれる様子もなく言ってのけた。


「は?あれって、『友達』としてって…」

「友達じゃない。それは君が勝手に言っただけだ」

「え?」

「君もそういう意味で僕に言ってない」


私に尋ねることなく、ノアは決定事項の様に断言する。


──え、待って?伝わってたの??


私は混乱する。

絶対、ノアは分かっていないと思っていた。

きっと、純粋なノアは友達として私と付き合っているものだと思っていた。

距離は近いのは友達だからだと。


けど、ノアはそれを理解していた。


私が頭を抱えていると、ノアが説明するように淡々と話を続けた。


「君は『僕』だから気になるって言った」


言った。


「僕もそうだった。『君』だから他人以上に気になる」

「ノアにとって、珍しい友達だからじゃ…」

「友達はアーノルドだっているし、いないわけじゃない。それとは明らかに違う事ぐらい僕にも分かる」


ノアが少しムキになって言った。

ちょっとそんなノアが可愛いと思ってしまったけど、そこは置いておく。


「君が勝手に『友達』と解釈したのも、君がきっとこの関係のままでいたいからだと僕だって納得したつもりだった。だが、君も僕に答えたんだ。はっきりと僕に好きだと言ったじゃないか」


「言ったよ!言ったけどよっ!!」


私はそう叫んで顔を覆った。


「そう、好き好きって連発しないでよ!!」


平然と連発されすぎた言葉に私はいっぱいいっぱいになる。

だって、伝わっていたなんて思いもしなかった。

寧ろ、私が気を使われていて、結局自分から近づいていて──


「じゃあ、あの時からノアと私は付き合っていたと!?」

「僕はそう認識している」


堂々と宣言された。


──こっちは認識してないよっ!!


そう心の中でツッコミながらも、嬉しいのか恥ずかしいのか、驚きすぎているのか、私の中でぐちゃぐちゃになった。


──それに、言ったけど、色々省略しすぎじゃない?


そんな気がする。

もっと、なんか色々とあるはずなのに。


「だって、付き合おうとか一言も…」

「付き合うにも許可が?」


私が苦し紛れに言ったら、ノアが首を捻らす。


「え、いや、だって、よくあるじゃん。お互いに好きだけど、付き合ってなくて的なさ。だから付き合うってお互いに認識があってとか…、もっとちゃんと『付き合う』ってこう、はいっ両思い!っ的な展開があるものじゃないの?」

「婚約のように書類がいるものでもない。お互いの好意が確認できれば交際関係は成り立つと思う」

「いや、まぁ、そうだよね。確かにそうだ…」


交際って概念的なものなんだなって今更ながら思った。

にしても、何だろう。

この腑に落ちなさ。昨日まで腕章作って悩んでいた私は何だったんだ。


──ってか、私って感情ってノアにダダ漏れだった!?


今更だけど、バレバレだったという事実に私は愕然とした。

ノアってもっとはっきりとしないと分からない人だと思っていた。

だって、確かじゃないことは分からないって言う人だから。

けど、ノアに確信させるほどの私の言動があったのは間違いなくて、伝わってないと思って色々と行動したあれこれを思い出す。


「あ゛ぁあああ゛!!!」


今日は何回も叫ぶ。

心の叫びも含めたら、大変な回数になりそう。


思い出せば恥ずかしいことばかり。

密かなときめきとか思っていたのに、ノアにバレバレの下心だった。

頭も心も全く追いついてこない。


「ミンディ嬢」


私がいろんな感情に襲われているとノアがさっと距離を縮めてきて、私の手を取った。

ドキドキするから触れないでってのもノアは知っていたのかも。

私は自分の言動を思い出すたびに、恥ずかしさで悶えそう。


「ミンディ嬢は嫌だった?」


私の手を握って俯いていたノアは、こっちを寂しそうに見つめる。

水色の透明感のある目は、曇り空の様に曇って、憂いを覗かせる。

もしかしたら涙も出てくるのではないかというその表情に私は思わず「うっ」となる。


大体、ノアを色々と知ってしまって、何なら恋までしちゃっている私がここでノアを突き放せるわけでもない。

考えてみれば、ノアは自分の考えを言っただけ。

空気が思わぬ祝福モードになっちゃって、ノアは満更でもなさそうで──


「いや、結局逃げ場がないからね?そんな顔で騙されないからね?」


私はノアを恨めしそうに睨んだ。

あんな発言をする前にちゃんと言って欲しかった。


──でも、あんな事ないと一生付き合ってる認識をせずにいたかも…


勘違いをするなと自分を律してきた私の努力は何だったのか。


「確かにそうだ…」


ノアは更に視線を下にしてしまう。

しっぽが完全に下がって震えているように見えた。


「ただ、僕の考えを伝えたくて…」


落ち込みながらノアがぽつりぽつりと話す。


「皆が笑ってくれて嬉しくて…、僕も浮かれてしまった…。君の意見も聞かずに…」


──浮かれてたのか。それは仕方ない。


そう思っちゃう私は、ノアに甘いのかも。


──いや、結局好きだから。嫌じゃなかったから…


これが、惚れた弱みってやつなんだ。

私はダメだなと悟った。


逃げ場がないって抗議しておきながら、逃げ場がないことにホッとしている。


「ミンディ嬢、嫌なら断って」


ノアはそう言うと、握っていた私の手を両手で包んだ。

そして祈るように目を閉じたまま顔を上げ、ゆっくりと目を開く。


今度は透き通ったいつもの目だった。

けど、どことなく奥には不安が過っている。

私を包むノアの手に力が入った。


「僕と結婚してくれますか?」


いつもより緊張をはらんだノアの声が響く。

ぎこちなくて、優しくて包まれるのが心地よいと思えるノアの温もり。

私はこの温もりに溺れたいし、守りたいと思う。

そして、ノアも同じように私を気を遣ってくれる。


今、私がノアを断ってもノアは私を受け入れるのだと思う。


──今までの行動って、私だったからなんだ…


恋人としてノアは接してくれてたんだ。

友達ではなく、恋人として私はノアの中に存在していた。

きっと、それは他のだれとも違う『特別』だった。


むず痒くて、甘酸っぱいこの感覚。

何だか、嬉しいのに、ちょっと落ち着かない。

私は可愛い子じゃないから、これに浸る事は出来ない。


「うりゃ」


ゴンッ


「えっ…」


私はノアに頭突きをした。

しんみりとしたノアを見たいわけじゃない。

ノアはびっくりして、片手でおでこを触る。

何が起きたかノアは理解してない。

私はその表情がおかしくて笑った。


「ノア、後で自分が勿体無いとか思っても遅いからね」


私がそう言うと、ノアはその端正な完璧な顔を更に輝かせる。

蕾が花開するように、驚きから笑みにゆっくりと変わる。

顔の全ての筋肉を緩めて、まるで私に流れてくるかのようにノアは私を抱きしめた。


「うん。ミンディ嬢が嫌になるほど一緒にいるから」


優しいノアの香りに私は包まれた。

ノアの抱きしめる力が前よりもキツくて、私は余計に笑ってしまった。

まるで、私はノアの大切なぬいぐるみになったかの様だった。


でも、私はぬいぐるみじゃない。

ノアは強く私を抱きしめながら、私が苦しくならないように力を緩めていた。


腕ごと抱きしめられていて、私は抱き返すことも出来なかった。

それが余計に面白くて、私は子どもの様に笑い声を上げてしまった。

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