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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
6章 モブなのに実は聖女の知り合いです
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8 ノア視点

──やってしまった


僕は、いきなりミンディ嬢が駆け出して行ってから頭を抱えた。


これは僕が望んでいる形ではない。

あんな攻撃的に言いたかったのではなく、少し矛盾を感じて──


自分のコントロールできない何かに僕は気持ち悪さを感じた。


俯いて唇を尖らせたミンディ嬢。

あんな表情をさせたいわけではない。


──追いかけよう


僕はそう思って立ち上がり、走ろうとしたが体力を使い切っていて、へなりとその場に崩れた。


「おい、ノア、どうした?」


そこに乗馬を楽しんでいたはずのアーノルドがこちらによってきた。

アーノルドが僕の顔を覗き込むが、ミンディ嬢のことが過って何故かまた気持ち悪さが込み上げた。


「……別に」

「別にって事はないだろ?」


そう言って、グイグイと来る。

それが今日は何だか煩く感じる。


「…今日のアーノルドは嫌いだ」

「は?」

「僕は君が嫌いなのかもしれない」

「お前な…」


僕がそういえば、アーノルドは理解するのを諦めたように頭を掻いた。


「ところで、ミンディ嬢は?」


アーノルドが周りを見渡して問いかける。

それが気に入らない。


「……ルグ……嬢」

「あ?」

「ウルグス子爵令嬢だ」

「は?お前もミンディ嬢と呼んでいたろ?」

「ウルグスだ」

「はいはい。ウルグス子爵令嬢は?」

「…」


追いかけたかった。

けど──


「はぁ…」


今日の僕はどうかしている。

制御の効かないもう1人の自分がいるみたいだ。


「おい、どうした?」

「僕はもっと大人になるべきだ」

「お前は十分大人だ。20歳だろ?」

「…そうじゃない」


僕はアーノルドを煩く思いながらも答える。

元々の要因には彼だって関わっている。


──いつの間に知り合いに…


父もチェイスもだ。

ティア皇女も彼女を独占すると言っていた。


知らない間に彼女が他の人と──そう考えるとまた肺のそこら辺がギュッとする。


──彼女が僕の他に人間関係があるのは当たり前だ


「いや、僕がとやかく言う話ではない」

「そうだな。歳は、勝手にとるもんだ。お前がどんなに足掻こうと関係ない」

「…」


今日は、アーノルドのこんなところが余計に嫌だ。


「僕は、寛容な部類に入る人間だと思うが、君のそういうところが許せない時だってある」

「私が何を言った?」


僕がそう言えば、アーノルドは目を細めてくるが、僕はそれに答える余裕はない。


「お前も、前置きをしておけば許されると思うなよ?」


アーノルドはそう言った。

確かにそれはそうだ。

僕が悪いのかもしれない。


ティア殿下の所に行ってから、何だか落ち着かない。



「ティアがミミを貰うから!ノア兄様は見てればいいよ!」


ティア殿下は僕に会うなりそう言った。


「ずうっと、ミミにもティアにも会いに来なかったから仕方ないからね!」


仁王立ちでティア殿下は宣言した。

バーリードゥ侯爵夫人は「殿下、公子にも事情があるのですよ」と窘めるも、ティア殿下は頬を膨らませ僕を責めようと意気込んでいた。


「好きって言ったくせに、お兄様なんかダメ!ミミにあんな顔させたからね!」


どんな顔をさせたのだろう。

そんな事が気になっていると、ティア殿下は言葉を続ける。


「だから、私のお兄様にするの!」

「……フィン?」

「そうだよ!ミミをお兄様のお嫁さんにするの!」


僕がその言葉に驚いていると、バーリードゥ侯爵夫人がそこに割り込む。


「殿下、勝手に物事を進め、言いふらすことはよろしくありません。結婚はお遊びではないのです」

「ティアがミミを貰うって言ったら、いいって言ってくれたのに!」

「それとこれは別です」

「何で!だって、ミミがね、いらないって人が捨てたものでも欲しいなら貰うって──」

「殿下、話が違います」


バーリードゥ侯爵夫人がティア殿下にそう言った後、僕にそっと告げる。


「殿下は最近ミンディさんの言動に憧れてしまっていて…」

「そうでしたか」


それは理解できる。

だが、フィンとミンディ嬢が──



それから、どうもおかしい。

思考の全てが一方へ導かれていくようにどこかへ辿り着く。

その結果、正論だと思うも何か棘のある言い方をしてしまった。


──大体、彼女が懸命でいれば恥は何もないと、自分で言ったんだ…


何がそこまで彼女を追い詰めたのか。

久しぶりに会った彼女は、今にも消えそうな表情をしていた。

ティア皇女に、カラッとしたした笑顔を向けていた彼女らしくなかった。

それでも笑ってくれて、それで僕も安心したはずなのに──


なのに唐突にあんな言葉を言ってしまった。

正しい事を言ったつもりだ。


ただ正しいことを言ったつもりなのに、何故か後悔する。


──何で言ってしまったんだ…


後口が悪い。

僕はこんな気分になるのがいつも嫌だった。

だからずっと避けるようにしていたはずだ。


「…アーノルド、君は妹に厳しい言葉ばかりをかけると言っていた」

「あぁ、言ったな」


アーノルドはゆっくりと頷いた。

そして、「やっとまともに話す気になったか」と細めた目を開く。


「なぜだ?」

「心配だからだよ。何度も言ってるじゃないか」

「心配……」


──そうなのだろうか。心配なのか?ティア殿下や、フィン皇子、父やアーノルド達と親しくなる事が?


何か、違う気がした。


「僕は彼女に謝るべきだ」


僕がそう呟くと、アーノルドは首を傾げる。


「私ではないのか?」

「…」

「今日のお前はより考えが読めないな」

「読んで欲しいわけじゃない」

「それに、口が悪い」


それは事実なのだと思う。

こんな攻撃的な感情は初めてだ。


それでも謝りたいと思った。


僕は彼女を責めたいわけではなかったから。


彼女があんな顔をするのは、僕の望みではない。

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