表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
6章 モブなのに実は聖女の知り合いです
56/112

7

「……ミンディ嬢、君は不器用なのか?」


ノアが私に問いかけた。

私は恥ずかしくて、お馬さんの鬣に顔を埋めた。


あれか2時間は経ったでしょうか、やっとお馬さんの上に乗れました。

それでも上達したのだけど、進む速度がノロノロです。

馬の手綱を持ってくれているノアがゆっくり歩くだけでもついて来れるスピード。

何度もそこら辺を散歩しているポニーに追い抜かれました。


「意外と、思い切って駆けってみるか?」


ノアが私に尋ねてきた。


「これ…いける?」


私はこわくって震える足を指さすと、横をポニーが追い越した。


「…が、頑張りましょう」


ノアは絞るように声を出して、結局その日は、周りを歩くだけに終わった。


「この前よりは進歩しているのなら……大丈夫」


ノアは4時間も歩き続けてぐったりしていた。

下手にのろくて疲れさせてしまったのかも、私たちは、近くの木陰で休憩する事にした。


「ノアでも難しいのか」とアーノルドさんには驚かれた。


「コーラ、乗ってみるか?」

「いえ、私はドレスですし…」

「私の後ろに乗ればいい」


仲睦まじい兄妹は私達が休憩していると、遊び始めた。


「いえ…そうではなく…このままでは、馬が…」


コーラさんが暗い表情をする。


なんでだろう。

そういえば得意と言いながら、昨日もお手本を見せてくれなかった。

服装のせいにしては頑なすぎる。


すると、アーノルドさんは何かを察したみたい。


「重りか?外せばいいだろ?」


──重り?


「え?いいのですか?」

「あぁ、そこまで自分に負荷をかける必要もない。重りがなくとも、お前は十分誇らしい」

「それなら…」


全く分からない話をした2人。

けど、なんか絵に描いたような兄妹愛が見える。

コーラさんは嬉しそうに笑うと、少しドレスの裾をあげて足首についていた何かを外す。


──ん?


今度は腕を捲って、ボリュームのある袖から何かを取り出す。

そして腰に巻きつけてあるリボンの間からも同じ何かを出した。

コーラさんがそれらを地面に置くと──


ドスッ


すっごい重量のある音がした。

だって地面が揺らいだ。

音だけで分かる、尋常じゃない重さ。


「コーラさん、それ…何?」


私が聞くと、コーラさんは頬を赤く染めて俯く。


「令嬢として相応しくなれるように少し重りを…」


少しって重さではない。

照れたように言うコーラさんに私は唖然とした。


「少し行ってまいりますわ」


コーラさんはそう言うと、アーノルドさんに連れられて馬の方へ行ってしまった。

あの重さは確かに馬には負担だろうけど…


──あれをいつも付けてるの?


あれを付けたまま走ったりしてたの?

私の中でコーラさんの謎が増えた。


──あれを仕込む特注の服なの?


色々と考えていると、思い出した。

私は、疲れ果てているノアに顔を向けた。


「ノア、この前デネブレ公爵に服を仕立てる所を聞かれてピックアップしとくって言ったんだけどさ──」

「はい?」


明らかに表情が変わったノア。

木にもたれていた体を起き上がらせて、ぐいっと顔を近づけてきた。


「ノア、近い!近い!」


最近更に遠慮がなくなってきたように思う。


「なんで、父と?」


聞いてないのかな?


「ほら、マリッサさんの件でわざわざ来てくれて、それで話すように──」

「はぁ…」


ノアは私が話し終わる前にため息をつくと、そのまま顔を背けて、黙り込んだ。

よく分からないでいると、ノアが呟く。


「どうして…次から次へと……」

「え?」


私が聞き返せば、また顔を近づけてきた。

さっきからノアの動きが忙しい。


「アーノルドとはいつから仲が良く?」

「仲良くは…ないんじゃない?」


うん、まともに話したのは今日ぐらいだ。

今まで私は逃げてたから。

すると、ノアが固まった。


「仲良くない?」

「うん」

「友では?」

「…ない、と思うよ?同僚のお兄さんなだけ」

「…」


ノアはまた黙った。

何を考えてるのだろう。


「チェイスは?」

「それは絡まれただけだって」

「手紙…あの紙切れ…」

「あれも、ただのナンパでしょ?行かなかったし、もう関わりたくないよ」

「…はぁ」


ノアがまたため息をついた。

今日は本当にお疲れなご様子だ。


「ミンディ嬢は僕を驚かすのが上手い」


驚かそうとした事は一度もない。

ノアだって、私をよく驚かせるくせに。


「…」

「…」


その後、いつもの沈黙がくる。

今日はノアの発言が腑に落ちなくて、私からはこの沈黙を破ってやるかと思った。

けど、チラリとノアを見れば、ノアは少し満足そうな顔をしている。

本当になんなんだろう。


「そうだ」


暫くして、ノアがもそもそと動き出した。

何かを探しているみたい。


「これ」


ポケットから何かを取り出して、私に差し出す。

私もそれを受け取ると、それは鍵だった。


「これは?」

「鍵」

「分かってるよ。何の鍵?」


私はさっきまで少し意地になっていたのに、笑ってしまった。

ノアは相変わらずだ。


「僕の研究室」


ノアはさも当然のように言った。


「くれるの?」


私が問い掛ければノアは頷く。


「聖女について知りたいって」


この前、会った時に、図書館にいた理由を聞かれて言った。

その事を覚えていたみたい。


「いつでも来て読めばいい」

「読めばいいって…」


人の部屋に勝手に入るのは少し抵抗がある。

特に綺麗に整理されたノアの部屋はちょっと足を入れずらい。

汚したらどうしようと思ってしまう。


「別にいい」


その事を話せばノアは気にしてない様子。


「書物を汚されるのは困るけど」

「流石にそういう意味じゃないよ」

「分かってる。だから気にしない」


こういう時のノアはよく分からない。

ただ、言葉以上の意味はそこに存在しないのは分かる。


「…じゃあ、ありがたく」


私はおずおずとしてそれを受け取った。

ノアも私がそれを仕舞うと、頷いてちょっと達成感のある顔をしていた。


「ノアにはお世話になりっぱなしだ」


私が言うと、ノアが首を傾げた。


「資料も提供してもらったし、乗馬も教えてもらったりさ」

「それなら僕も」


ノアが目尻に皺を寄せた。


「君からはいろんな事を教えてもらった」

「教えた記憶ないけど?」

「いろんなものも貰った」

「あげたっけ?」


どこにそんなものがあるのかと私は尋ねたかった。

寧ろ私の方がいっぱいある気がする。


だけど、ノアは頷くだけでそれ以上は何も言わない。

いい笑顔を見せてくるものだから、私も黙ってしまった。


「きっと聖女についての話は纏まる」


ノアがぽつりと話し始めた。


「そっか」

「式典も改めてするはずだ」


まだやってなかったけって、今更気づく。


「おそらく、簡素的なものになる」

「あれだけ準備したのに…」


私が項垂れると、ノアも頷いた。


「皆が思っているはずだ」

「でも元老院は聖女でウハウハでしょ?」

「そうでもない。ノイトラール公爵はかなり慎重的で、最後まで渋ってた」


そうなのか。

やっぱり帝国至上主義のノイトラール公爵。


それからまたぽつりぽつりといろんな話をする。


「ここに来る前に、ティア殿下に会った」


ノアが言った。


「あぁ、殿下の宮殿にも全然来てないから、寂しがってたでしょ?」


私はクスリと笑う。


だって、ティア皇女はプリプリ怒りながら、寂しそうな顔をしてた。

それを思い出すだけで、心が浄化される。


「いや」


だけど、ノアは顔を横に振った。


「寧ろ、めちゃくちゃ叱られた…」


明らかに落ち込んだ顔をしてノアが言った。

あの尻尾がシュンって落ちてしまってる。


──か、かわいいっ…!!


その表情についやられそうだった。

綺麗な顔って色々とずるい。


「えっと、多分、寂しさの裏返しだよ?」


フォローを入れるも、ノアは余計に元気を無くす。


「違う…、僕がしっかりしないならミンディ嬢は自分がもらうって言ってた」


ちょっと険しい顔になる。

その言葉に私も覚えがある。


「それ私も言われた。意味がわからなかったけど、次の日にリボン貰ったからその事と関係あるのかも」

「リボン?」


ノアは首を傾げた。

そうだった。ノアにはまだ報告してなかったんだ。


「この事!筆頭女官になっちゃった!」


嬉しいから後頭部をノアに見せびらかす。

「ほれ、ほれ~」と存分に振り回して、ドヤ顔をかましてみる。


「…」


けど、ノアの顔色は全然良くなかった。

何でだろ。


「そういうこと……」


何か納得したようで、片手で顔を覆うと、そのまま倒れるように木に背をつける。

ついには両手で顔を覆ってしまった。

表情が見えない。


「ずるい」


やっと、顔を見せたかと思うと、ノアはそう言った。

あ、もしかしてティア皇女を取られて拗ねてるの?

そりゃ、確かにそうかも。

あれだけ可愛いティア皇女は独り占めしたくなる。


「大丈夫だよ。私が殿下のお気に入りになれても、殿下にとってノアは別枠だからね!ノアの立ち位置を揺るがす人なんていないから!」

「?」


私が言うと、ノアは「何言ってるの?」ってな顔をこちらに向ける。


「大丈夫、自信持って」

「…」


私がノアの肩を叩くと、ノアはちょっと不満げな顔をする。


「ミンディ嬢は僕に距離が近いとか言ってくるくせに、そうやって簡単に触れてくる」

「ノアだって、遠慮なしに触れてくるじゃん」

「君みたいに触れること自体に不満はない」


私がちょっと反抗すると、ノアは拗ねたように顔を私からそらす。

コーラさんの反抗期が終わったかと思えば、今度はノアが反抗期になった。

よく分からない。


「何なのさ」


私はムッとして言葉を返す。


ノアは足に肘をついて、口元に手を置いた。

完全に拗ねてるポーズ。


「別に、君は確かに自分勝手なところがある」

「何それ?」

「この前、君が自分で言ってた事だ」

「言ったけど、今、それとこれ、どう関係があるのよ」

「君が殿下に…………いや……何でもない」


何が不満か理解出来ない今、私は批判されても反発してしまう。

ノアは、私とは会話にならないように途中で話すのをやめた。


──何さ…


その態度にいきなりカチンと来た。

今日のノアは最初から気分が悪かったり、良くなったりよく分からない。


「何?」

「いや」

「はっきり言って」


だけど、ノアははっきりしない。


その気持ちの起伏が理解出来ないし、何よりそれに振り回されているようで流石に気分が良くない。

最終的には会話を放棄したような仕草をされて、私も気が短い性格なのかいい加減付き合いきれない。


──素敵だとか好きだとか言ったくせに……


私は、そのまま立ち上がった。

ノアの顔を私だって見たくなった。


──折角、また顔を合わせれるようになったのに…


「今日はありがとう。もう、行くね」


私は早口でそう言うと、逃げるようにその場を去った。

ノアの反応なんて見てられない。


──すごく嬉しかったのに…


なのに、ノアはあんな事を言うのか私には理解出来ず…何だか、悲しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ