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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
4章 男主人公キャラのモブ友人になりました
31/112

8

「ミンディ嬢はやっぱり凄いですね」


壮絶なお茶会をなんとか乗り越えた後、ノア公子が私に言った。

コーラさんはどこかに行ってしまって、追いかけようと思ったけど、やめた。

多分、バーリードゥ夫人のお説教が残ってるから、話そうと思っても中断されちゃう。

謝るなら、きっちりとしたい。


「凄いのはノア様じゃないですか」


私は言い返す。

だってあの言葉は私自身を正当化するためのもの。

私が私として存在できる話だから、凄いとかじゃない。

エゴな考えが根本にある。


「首席で卒業されているのに、授業だけでしか勉強してないとか、化け物ですよ」


こっちは予習復習しっかりしましたよ。

家庭教師が教えてくれるレベルだから、アカデミーほどの難易度じゃないし。


「僕にできるのはそれぐらいなので、別に…」

「できるから凄いんですよ。研究職なのも全然知らなかったです」

「僕も、ミンディさんに魔力がないのを知らなかった」

「あー、それですね」


わざわざ『嫌われ者です』なんていう人なんていない。


「隠してたとかじゃないんですよ?」

「分かってます」


彼はなんでも分かってそう──なわけないか。


「魔力に関しては専門外ですが、魔力なしなのは、精霊に嫌われているというわけではないはずです」


わざわざそんな事を言ってくれる辺り、やっぱりいい人なんだなって思う。

だから私も素直に返事する。


「はい」

「魔力の小さい大きいの関係があると聞いたことがあります。マナを上手く魔力に変換できない何かがあるのだと」

「マナはありますもんね。ノア様がいつも見つけてくれるから」

「はい。すごくミンディ嬢らしいマナです」


私らしいって何だろう。


「ミンディ嬢のマナは不思議です」

「え?」

「どこかへ飛んでいくような感じがします」

「マナって見えるんですか?」

「いえ、見えません。そんな感じがするだけです」


よく分からない。

でも、何か発見があれば私だって魔力が使えるかもしれない。

前世の記憶がある私には、技術の発展に希望を持っている。


「ノア様が見つけてくれるかもですね」

「僕は専門外です」

「知ってますか?学問に垣根はないのですよ?」


私は得意げに言った。

ノア公子は不思議そうな表情を見せる。


「ノア様が研究している渦巻きがの計算が実は何かの仕組みと同じだったり、何かに応用できるかもしれないじゃないですか」


そうやって進歩したのを知っているもの。

想像し始めたら止まらなくなった。

技術が進歩すれば、夢の異世界ライフを楽しめるかもしれない。

今でも十分楽しいけど、魔法にはやっぱり未練がある。


「めちゃくちゃ、楽しみです」


私が熱を込めてノア公子に言った。

ノア公子は意外そうな顔をしたけど、顔を俯かせた。


──あれ…


なんか不味い事を言っただろうか。

そう心配していると、ノア公子は顔をちょっと上げた。


「…はい」


ぽつりと呟いたノア公子。

口元はなんだかむにゃむにゃとにやけてる。

何がそんなに嬉しいのか。

この人は本当に不思議だ。



「やっぱり、ミンディ嬢の言葉は嬉しいものばかりです」


柔らかい彼の声色がくる。


「やっぱり、2人で話すときはノアでお願いします」

「え?」

「言葉遣いも楽なものにして下さい」

「それはちょっと…」


いくら2人っきりと言っても、この宮廷で人目が全くないなんてことはない。


「……だめでしょうか?」


しょんぼりとするノア公子。

ずるいぞ。それは反則だ。

見えてしまった耳と尻尾…


「友として、もっと対等に話したいです」


普通、公子と子爵の娘がこうやって話すだけでも十分対等に近いと思う。

だけど、だけど…


──もうっ!


私はうだうだ考えるのは辞めた。

最近考えることが多すぎる。

ちょっとは楽になってやる。


そんな勢いで口を開く。


「それなら、ノアも普通に話して下さいね!」

「!」


すっごい勢いでノア公子の耳と尻尾が上を向く。

分かりやすい。


「はい!ミンディ、ありがとう!」


なんていい顔をするんだ。

嬉しそうなその笑顔、写真で撮りたいよ。


「ありがとう!!」

「○!※□◇#△!・・!!!!?」


ノア公子はその嬉しさのままに私をぎゅっと抱きしめた。

本当に、驚きすぎて、心臓が止まりそうだった。

そのままぎゅっと彼は存分に私を抱きしめる。


やばいよね?これぐらい普通?

このスキンシップって、いいの?

セーフ?アウト?

分からない。分からないけど、なんかめちゃくちゃいい匂いがする…


頭の中はこんがらがって、変な方向に思考が飛んでいた。

しばらくして解放された私は、脳が沸騰するかってほどいろんなダメージを受けていた。


「ミンディ、僕もティア殿下の様にミミと呼べるぐらい頑張る」

「へ?」


私を解放したノア公子はまたいい笑顔で言う。

眩しすぎるし、よく分からなくて私は変な声で返事をした。


「呼び方だけで、こんなに嬉しくなるとは知らなかった…」


何か感動してる。

私を置いていくな。

なんの話だよ。


私を置いてノア公子は進んでいく。

別にミミって呼べばいいじゃんとか思ってたけど、ノア公子はそんな言葉を望んでいるわけじゃなさそう。


──変な人…


そう思う。

そう思うのに、私はそれを思い出すとなんだか笑みが溢れてしまう。



*****



「コーラさん!本当にごめんなさいっ!」


バーリードゥ夫人の説教を終えたコーラさんを捕まえて私は、お得意の土下座謝罪をした。

日々、謝罪の気持ちは更新されるけど、謝罪の仕方は更新されない。

こんな短期間で土下座を2回もするとは思わなかった。


「コーラさん、黙ってて、ごめんなさい!知り合いになったけど、どう説明すればいいのか分からなくて、敢えて言いませんでしたっ!」

「…」


土下座してて、コーラさんの反応は分からない。

分からないから余計に怖くて言葉を続ける。


「事故ではありませんっ。故意的に言いませんでしたっ!私が有責です!!本当にごめんなさい!!」


地面におでこをを擦り付けた。


「それに、なんでか分からないけど、コーラさんの怒っている理由を教えて下さいっ!お願いします!」


ちょっと擦れておでこが痛かった。

けど、おでこよりも罪悪感が勝る。


「…」


最後まで言い切ったけど、コーラさんの反応はない。


──こわい…


沈黙が恐ろしかった。

目が瞑っているからか暗闇が追いかけてくる感じ。


「…」


──お願い反応してっ


肩に力が入った。


なんでこんなに必死なのだろうか。

なんでこんなに罪悪感が込み上げるのだろう。


コーラさんは嫌いだった。結構嫌いだった。

でも、いいところがだんだん見えてきて、次にはワイアットに見えてきた。


ワイアットと全然違うけど、あれだけ色々と言ってくるくせに、肝心な彼女の何かを聞いていない感じがした。

あのグッと堪える口の中の言葉をもっと知りたいと思ってしまった。


──だって、いい奴とか思っちゃったんだもん


家の事が大好きなところとか。

水汲みの時だって文句言いながらも、体力ないくせに私と仕事が半分になるように頑張ったりとか。

ナンパ男のことを心配してくれたりとか…


やっぱり、いいところばっかりでズルい。

ズルすぎる。


──そんな人に嫌われたら、めちゃくちゃ凹むじゃんかっ!!!




「別に…怒ってませんわ」



私が心の中で嫉妬を爆発させていると、コーラさんが言った。

わざとらしいつっけんどんな言い方だった。

久しぶりのその言い方。

突き放す感じじゃなくて、私は嬉しくて、顔を勢いよく上げた。


「コ゛ーラ゛ざぁあああ゛ん!」


ブワッとさっきの感情の続きで、いろんなものが溢れてきた。

絵面的に絶対やばい。


「ちょっと?!貴方?!それは、どうしたのっ?!」


コーラさんが慌てて私の額にハンカチを押し当てる。

私は何がなんやら分からない。


「ゴーラ゛ざん、そこ目じゃないですぅうう」


涙を拭いてくれてるのかと思って私は泣きながら言った。


「違うわよっ!血よ!?血っ!!」

「ぶぇ?」


見せられたハンカチを見てびっくりした。

白い布の上に赤い血がのかってる。


「えっ?!な、なんでっ?!」

「あ、ちょっと触ってはダメよっ!?傷口に何か入ったらどうするのよっ?!」

「え?!あ、そっか、え、なんじゃこりゃ」

「手からも出てるじゃない?!」


私とコーラさんはわちゃわちゃとし始める。

どうやら、土下座しながら力が入りすぎてたのかも。

ざらざらの床で、ぐりぐりしてたらそりゃ血も出るわ。

幸い、そんな深いものじゃなくて、表面を擦ってただけみたい。


2人で慌てていると、人が集まってきて──ってやってると、その内、血は止まってた。

よかった。


って思ってたけど、全然よくなかった。

騒ぎを聞きつけたバーリードゥ夫人が登場。


「また貴方たちですかっ!」


駆けつけたバーリードゥ夫人に捕獲された私たち。

コーラさんは本日2度目の説教を受けることになった。

なんか、ごめん。


けど、事情を理解すると、バーリードゥ夫人は「今回だけですよ?」って水汲みは回避できたみたい。


説教を終えると、コーラさんは


「やっぱり、意図的に黙っていたのは気に喰わないですわ」


って言って、そっぽを向かれてしまった。

けど、少しだけ、前に戻ったみたいで少しだけホッとした。

いや、結構、ホッとした。


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