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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
4章 男主人公キャラのモブ友人になりました
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──ストーカー…


一瞬、そんな言葉が過った。

前世で、そいう類の話は聞いたことがある。

アイドルが困ってるなんて記事を読んだのを思い出す。

まさかと思って、私は考えを振り払う。


──イヤイヤ、考えすぎだって……


と、思うも、世の中が善人だけではないのはよく知っている。

陰で色々という人が多くいるのは承知の上だ。

それに、なぜか真似をしてくるれいなの気味の悪さだって知っている。

ストーカー気質の人間がいないなんて断言できない。


──気をつけるに越したことはないけど…


思い浮かぶのはわんこ状態のノア公子。

一度、友になると引き受けてしまった。


──友だちやめようとか言ったら落ち込むだろうな…


耳と尻尾が下がっていくのが目に見える。


──いや、ノア公子は普通にいい人だもんなぁ~


そこ。

向こうから友達になってくださいとか言われてたけど、こっちだってあんな素直な人とお友達なんて嬉しい話だ。

普通に彼には好感を持っているし、友達になりたい人だと思う。


だからこそ、他人がどうこうするからと離れるのは違う気がする。


──それをしたら、私が私を嫌いになっちゃいそう


そんな自分は好きじゃない。

大体、それが嫌で吹っ切れた17年前のあの事を忘れるわけがない。


「うし」


もやもやとしていたものを振り払う。

あの人には気をつけた方がいいのは分かった。

それでいいではないかと終わらせる。


普通に怖かったが、それは別の話としておく。

なんとか、普通に戻った私は食堂に着くと、辺りを見回して、コーラさんを探す。


「あ、コーラさん」


先に去った彼女の元へ駆け寄る。

「さっきの人怖かったですね」なんて話をしようと思った。

強がって「あんなの怖くないわよ」なんて言うのだろう。

そう思っていると、振り返ったコーラさんの表情は思ったよりも暗かった。


「…何の用ですの?」


だけど、コーラさんはかなり低いテンションで言葉を返してくる。


「あ、え、さっき…──」


言いかけて、私は止めた。

その話よりも、今のコーラさんの方が気になる。


「あの、気分が優れないのですか?」

「……違うわ」


私が問い掛ければもっと顔色を悪くしてコーラさんは答える。

おかしい。

さっきから彼女と全然目が合わない。

彼女はどんな時もこっちに食い掛かるような目を向けてくれる。


──さっきの事、何かあるのかな


『落ちこぼれ』


彼女はそう言っていた。

私の『嫌われ者』と同列で言っていたと言うことは、そのままの意味なのだろう。


──気になる…


めちゃくちゃ気になる。

涎が溢れるぐらい興味津々。


けど、目の前のコーラさんはそれを聞かれるのを怯えているようにも見える。


──話したくない事ってあるよね


その気持ちは分かってしまう。

分かってしまうから、私は聞けない。


「…」


何も言えなくなってしまった。

変に気を使うのも違う気がする。


「…用がないなら、失礼するわ」


コーラさんも私から去ろうとする。

でも、なんとなくコーラさんを1人にしてはいけない気もする。

でもかける言葉がなくて──


「あら、2人とも、ここにいたのね」


そこにクリスティンさんがやってきた。


「後少しで、女官復帰ね」


クリスティンさんはふんわりと笑いながら話しかけてくる。

一瞬朝帰りの事を思い出したけど、それは忘れよう。


「あはは、そうですね」

「…そうですわね」


私のぎこちない笑いと、コーラさんのそっけない返事。

クリスティンさんも変だと思ったみたい。

けど、下働きで元気がないだけだと思ったみたいで励ましてくれる。


「きっと、ノア公子にも会えるわ。楽しみでしょ?」


それは逆に気まずい。


「1ヶ月後にはティア殿下の祝賀祭もあるからね!」


令嬢が喜ぶキーワードを並べまくる。

けど、私もコーラさんもテンションは上がらない。


「……チャンスを掴まないと」


コーラさんはそう呟やいた。

そしてそっぽを向いてどこかへ行ってしまった。

想像と違ったコーラさんの反応にクリスティンさんは首を傾げる。


「お手洗いかしら?」


クリスティンさんの呟きに私は曖昧な表情を浮かべた。


何をそこまで拘っているのか私には分からない。

さっきの事に関係があるのだろう。

そして彼女の兄が言っていたことととも──


ただ、単に拘りたくなる気持ちは分かる。


──拘り始めたら止まらないもんね


その向こうへ行くには時間がかかると思う。

私だってれいなの事が吹っ切れるまで時間がかかった。




そう思ったけど、やっぱりいつもと違うコーラさんはなんだか変。

知り合って数日だけど、なかなか濃ゆい毎日を送らせてもらった。

そんな彼女が大人しいのはものすごく違和感がある。


彼女が色々と言ってくるから言い返せていた。

なのに、何も言ってこないなんて──張り合いがない。


その一日は本当に会話をしなかった。

したかったけど、全然そんな隙をコーラさんが見せてくれない。

むしろ避けられている感じ。


──聞いてもいいの?いいの?


また自分で問いかける。

でも、やっぱり勇気は湧かない。


結局その日は働くしかないと気分を切り替えるしかなかった。

やっぱりコーラさんは気になるけど、やることはやらねば。


*****


そして翌日。

やっと、女官としての仕事復帰となった。


「ミミ~!コ~ラ~~!」


笑顔で駆け寄ってくるティア皇女はやっぱり天使。

もう色んなことが吹っ飛んでいく。

私って単純だったのかもしれない。


「今日はね。お兄様の訓練を見にいくんだよ」


ティア皇女のお着替えを手伝っていると楽しそうに言った。


「訓練?」


なんのだろうと私が首を捻る。


「皇太子殿下は昨年から、剣術を本格的に始めておられます。時々、ティア殿下は見学に向かわれるのです」


バーリードゥ夫人が説明してくれる。

なるほど。


確か、皇太子は14歳ぐらいだったと思う。

やっぱり、皇族の皆様は顔がいいみたいで、ちょっとした「わーきゃー」な話は聞いたことがあると思う。一応、優秀だったとか。


思うってのは、興味がなくて、全然覚えてないから。

だってさ、年下の男なんて興味ないもの。

まず、男に興味がないけどね。


「コーラさんは面識がありますよね?」

「え?…えぇ、そうですわね」


バーリードゥ夫人の問いかけに、コーラさんはぎこちない表情を浮かべた。

うん、やっぱりおかしい。


「そうなの?お兄様の剣ってすごくかっこいいんだよ?」

「それは楽しみですね」


やっぱり天使は天使。

私はティア皇女の言葉に頷き続ける。


「ねぇねぇ!この前ミミがしてくれた服がいい!」


ティア皇女が言った。

ねだっている姿も最高です。


「同じ服装は、すぐには用意できません」

「えぇ~…」


バーリードゥ夫人にダメだと言われて、ティア皇女はしょげる。

やっぱり、女の子って小さい頃からオシャレに興味があるんだよな。

すると、コーラさんが焦った声を出す。


「殿下っ!今日はこの赤のドレスなんていかがですか?闘技場で華やかですわよっ!」


闘技場で華やかになってどうする。

闘牛かい?


「んん~」


ティア皇女はあんまりお気に召さない。

だって小さな子に赤と黒のドレスってどうなんだ。

私の歳でも着こなすのは難しいぞ。

てか、なんでそんなのある。


「ねぇねぇ、ミミはどれがいいと思う?」


ティア皇女が私に聞いてきた。

正直、このタイミングで聞かれるのは嫌だった。

だって、コーラさんの目が…


分かってる。

ティア皇女に悪気なんてないさ。

その純粋さに私は服従しているのさ。


「えっと、殿下はどれがいいですか?どんな色がお好きですか?形でもいいですよ」


私が問いかけると、ティア皇女は「ん~」と口をぷっくりと膨らませた。

悩んでいるのも可愛い。


「お袖がねフリフしてるのが好きだよ!」


ノア公子に似ている素直な答えが返ってくる。


「でしたら、こちらなんてどうですか?コーラさんおすすめの赤色ですし」


一応、コーラさんを立ててみた。


「うん、それがいい!コーラ、赤っていい色だね!」


──おぉ!


ティア皇女の天然のフォロー。

流石すぎる。狙ってないから天使なの。


「そう…ですね……」


だけど、コーラさんの表情はやっぱり浮かない顔だった。


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