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物語の主人公にはなれません〜魔力なしの令嬢に転生しましたが、なんとか踏ん張ります〜  作者: しーしび
最終章 モブでも踏ん張って幸せになります
104/112

8

「…」


ノアがずっと沈黙してる。

かれこれ5分は経過してると思う。


私はもう何も言うこともなくて、口をもぞもぞとさせて、ノアの顔をじっと伺った。


私は全部を話した。

前世があること。

そこで、普通の高校生活をしていた事。

そしてレイナとのいざこざも。

バビィさんとも出会いも全て話した。


ノアには理解できないいろんな事があるから、上手く説明できなくて困ったけど、それでもノアは根気強く聞いてくれた。


そして、話終わると、ノアは黙り込んでずっと猫を撫でている。


ミ゛ャ───


猫もそろそろうんざりしてきたみたいで、やめてくれって不機嫌そうな声を上げる。

私も早く何か言ってくれと催促したくなってきた。

もう言ってしまおうか、そう思って口を開きかけた時、ノアの口が開く。


「あぁ、そういうことか」


気の抜けた平坦な声がやっと出てきた。


「僕のマナがミミの体に流れ込んだから、あの魔石に送り込まれるマナが増えて、魔石だけじゃなく彼女も連れてきてしまったのか。僕のマナが暴走して時空が歪んじゃなくて、あの魔石がこっちに引き寄せられただけで、ミミの元から離れた瞬間にマナの供給がされなくて魔石がミミを追いかけてきただけかもしれない。あ、そうかリミッターを外せるの聖女の能力もあって魔石の能力が引き上げられた可能性もある」

「あぁ…」


それなら、確かにあの瞬間のレイナがこっちにきた理由がつく。


「だが、転生のメカニズムは解明できないな。ただ、魔石とミミの魔力の関係が強いかもしれない…。マナが魔石に蓄積するとしたら──いや、だいたいミミが生まれ変わった事自体も謎が増える」


ペラペラとノアは話だす。

もうその話に夢中だ。


──ん?


「ノア?」

「だとしたら、他にも転生するって可能性はあるし…いや、まさか記憶の有無なのか?記憶に特化した能力は──」


──こりゃ、聞こえてないね


そこは分かった。

けど、まさか感想もなしに分析されるとは思ってもみなかった。

さっきの緊張を返してほしい。


「ノア!」


大きい声で私はノアに叫んだ。

ノアはゆっくりとこちらに顔を向ける。


「結構、思い切って話したんだけど?」

「あ」


忘れてたとノアが声を上げた。


「話してもらったらちょっと嬉しくて…」


ノアがはにかんだ。


「テンションが上がっちゃった」


──『ちゃった』って…


ちょっと可愛いな、おい。

テンションの上がり方も独特で愛おしいとか思っちゃったよ。


心がふわってなったけど、そんなんで誤魔化されなぞって腹に力を入れる。

確かに私はノアに弱いが、そう簡単に籠絡されっぱなしではない。

恋する乙女もやる時はやりますよ。


「あ、言っちゃた…」


ノアは顔を膝の間に埋めて、隠れた。

首まで真っ赤っか。

そこで照れるの?てか、無自覚で言ったのかい。


「ん」


ノアが手を伸ばしてきた。

今日はなんだか猫みたいだ。

私はそう思いながら、ノアの手をとる。


「信じてくれる?」


私は尋ねた。

聞かないと、ノアは答えてくれないだろうって察した。


「うん」


ノアはいつものテンションで答える。

なんだか、いつも通りすぎて、しっくりこない。


「本当?」


再度尋ねる。


「うん。全部の説明がつく」


ノアは当然のように言った。


「それに、ミミが嘘をつくわけないし」


──あ~~~~!もうっ!


やっぱりノアはずるい。

ツボを全部押さえてくる。

これが整体だったら、もう最高だよ。

私は両手で顔を覆って、項垂れた。


「…嘘をつかないのはノアでしょ?」

「ミミもつかない。いつだって正直に話してくれる。でしょ?」


そう言われて思い返してみる。

うん、確かにそうかもしれない。


「まぁ、そっか」

「うん」


ノアにとって私の言うことに嘘がないって当たり前なんだ。

そう思うと、また膨らむ気持ちがある。


「それにしても、面白い話が聞けた。『電力』か…」


ノアの研究者魂に火がついた。

もしかしたら、私が嘘つかないとかより、この先の研究に役立ちそうだったからとかじゃないよね?

なんか、こわくて聞けない。


「でもよかった」


ノアが言った。


「前世があるから、ミミはミミだった」


穏やかな表情でノアは言う。

すらりと言ってしまうのは本当に恐ろしい。


「まぁ、どっちもミミだしね」


私は白旗を上げながら言葉を返す。


「そういうことじゃない」

「分かってるよ。ノアが何を言いたいかちゃんと分かってる。分かってるけど、そう簡単にド直球ばっかり打ち返せないから」

「え?」

「なんでもない」


私は唇を尖らせて上を向いた。

ため息が出るほど綺麗な青空は、分厚い雲が多くなった。

冬の空はこの世界も変わらないんだなって改めて思う。


「ミミはやっぱりすごい」


ノアは私の手を強く握った。

私はノアへ顔を向け直す。

ノアも空を見上げていた。


「僕なら諦めてたかも」


心底感心したようなノアの声。

いつも褒める時はこの声色を出す。


「すごくないよ。そうするしかなかったんだもん」

「そんな事ない。嫌になって部屋に篭る事だってできる」

「それね、引きこもりって言うんだよ」


私は笑いながらノアに言った。


「それでね、年月が経つとニートってのにも進化するんだよ」

「何、それ?」

「多分、ノアは羨ましがるよ」

「そうなの?」

「多分ね」


私は笑ってしまった。


もしかしたらノアは、引きこもりニートになっていた可能性はある。

でも、やるべきことはやるタイプだから、ずっと家にいたいなって思いながら学校には通うんだろうな。

それで、頭はいいからいい大学に行って、大学院も行って、もしかしたらそのまま大学の研究員。

いや、研究員じゃ将来が不安だって、どっかの企業に就職するかも。


想像が止まらない。


「何?」


私が勝手に想像して笑うのが気になるようで、ノアは私を覗き込む。


「ノアにはもっといろんな話したいなって思ったの」


私は笑いながらノアに伝えた。


「私の知ってるものを全部知ってもらって、一緒に笑いたいなって」


そうれば私は楽しくて仕方ないと思う。

ノアもきっと興味深く聞いてくれるはず。


「それは楽しみだ」


ノアも頷いた。


「君がどんな世界を知ってるのか、僕も知りたい」


ノアはそう言って空を眺める。


「なぜミミが転生したのか説明はつけない。けど、ミミがここにいてくれるのは僕にとって奇跡だ」


ノアは優しい声で言った。

また嬉しい言葉をくれる。

ノアは悲しかった時の私も肯定してくれる。

全部を肯定して、そして包んでくれる。

だからノアがいい。


もし、私が間違ったら、ノアはいつでも走ってきて教えてくれる。

そういう人だ。


──話せて良かった…ノアだから良かった。


十分だった。

ノアはどこまでも私を幸せにしてくれる。





「そうだ。聖女の事だけど、まだうちで預かる予定」


幾分かぼんやりとしていると、ノアがレイナの話を始めた。


まだレイナの本当の力は発表されてないから、教国も元老院もまだまだ諦めてない。

結局、あの凱旋式のレイナの行動はスコットレット伯爵に色々と吹き込まれたせいだってことになった。

実際、レイナの周りにいた人たちの中で、今回の件に関与していた家の者はいたしほとんどの人はそれで納得してしまった。

だから、レイナは被害者として扱われている。


それはそんなもんだろうなって薄々は思っていた。


国のいろいろな側面を見てきたし、仕方ないとは思う。

それが政治なんだ。


レイナはレイナでノアの離れに籠りっきりだ。

デネブレ公爵が時々、様子を見に行って、制御魔法をかけているけど、まだ現実が受け止めれない状況らしい。

多分、その原因もまだ分かってないだろうし、理解する方が難しいのだとは思う。


「難しい話だよね」


私は顔を顰めた。

私は私で複雑な気持ちだ。


「正直、僕は彼女を元の世界に返す方がいいと思う」


ノアが言った。


「いつまでも彼女の力が隠し切れるわけもない。それに今回みたいに命を脅かされる事だってある。ミミの話を聞く限り、この世界の現実は彼女には厳しいと思う。誰もがいろんな思惑を持って人を利用するんだ。彼女には向こうの方が似合ってる」


それはそうだろう。


「だけど……どうやって?」


そんな方法知らない。


「知ってる人がいるだろ?」


ノアが悪戯な笑みを見せる。

眉をぐいっと上げて私に問いかける。


「実績は信頼につながるものだろ?」

「あぁ…」


ママさんの事か。


「でも、レイナを返すなんて誰も賛同しないでしょ?」

「そうだね」

「正直、ノアの言う通りだと思う。レイナがここにいていいことはない。まぁ、本当は何がいけなかったか分かってくれればいいけど…、でも何を言っても認めてくれないと思う」


レイナはそういう性格。

だからといって、命が脅かされるのは話が違う。

生きてないと、自分を顧みることもできない。

これだけ持て囃されて、嘘でしたは通用しない。

人はすぐに牙を剥く。

犠牲者がいれば、それはより鋭くなる。


「そうだね。正直、僕は彼女がどうなっても自業自得だとは思う」


ノアは珍しく敵意のある発言をした。

私が目を丸めたからか、ノアは肩を竦めた。


「別に僕は人類全員に救われて欲しいなんて思わない。スコットレット伯爵が斬首になっても仕方ないって考えるには残忍だよ」


それは残忍って言うんだろうか。


「全部を思うようにはできない。それは君が教えてくれた。どこかで諦めるのも大切で、本当に大切なものを守るには切り捨てないといけないものだってある。ミミが危険になるのなら、聖女を容認し続けるわけにはいかないから」


私はノアの大切な人間。

それは私にとっても同じだ。


──ノアは強くなったな…


余計に手の届かない存在になりそうだ。

そんなノアが私を尊敬してくれる、信じてくれる。

だあら、私は私が好きになれる。


「そうだね。でもでも言ってられないよね!」


私は顔を上げて頷いた。


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