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34話 つわりの恐怖

 診察が終わってから、机と椅子のある談話室のような場所に呼ばれた。

 今後について、いろいろな説明があるらしい。


 20代後半くらいの白衣を着た助産師さんに促されて、私は丸椅子へと腰掛ける。


「つわりは大丈夫ですか?」

 目元の印象が柔らかい。

 優しそうなお姉さん、という感じの助産師さんだった。


「大丈夫です」

 大丈夫ですか? と聞かれたら、大丈夫と反射的に答えてしまう私。

 でも、本当に大丈夫だ。


「良かったですね」

 ふわり、と助産師さんが微笑む。

 素敵な笑顔である。


 明るくて優しい女性しか、エンゼルレディースクリニックでは働けないのだろうか。

 受付のお姉さんも助産師さんも、例外なく感じの良い人しかいない。


 心なしか顔面偏差値も高い気がする。

 そして、全員が全員。

 スタイルが良く、健康的に痩せていた。

 みんな、きれいなお姉さん。


 引け目を感じた。

 やっぱり私という存在が場違いに思えて、帰りたくなる。

 でも、まだ話は始まっていない。


「まず、今後の予定についてお話しますね」


 A4の紙を1枚、助産師さんが手渡してくれる。

 須崎莉帆のマタニティカレンダーだった。


「えっと、今日は11月の8日なので……」

 カレンダー表を見てくれるお姉さんの様子に、戸惑いが感じられる。


 思わず、私は指差してしまった。

「ここです」


「あっ、ありがとうございます」

 再び、お姉さんが笑う。


 かわいい。

 ちょっと隙のある雰囲気に癒される。

 親しみやすい人なのかもしれない。


「8週の6日ですね!」

 助産師さんが優しい瞳で、私を見ている。


 しかし、次の瞬間。 

 衝撃的な事柄が告げられた。


「つわりの症状が出てくることがあったら、しっかり水分だけは摂ってください。だいたい、9週と10週がピークなので」


 えっ、9週って明日!?

 いきなり、爆弾が投下された気分になる。


「もし、水分も摂れないレベルでしたらエンゼルレディースクリニックに遠慮なく電話してください。点滴も打てますので」


 水分も摂れないって、どういう状態!?

 驚きの余り、声も出ない。

 優しい瞳が、慈愛に満ちていた。


「妊娠悪阻といって、入院しないといけないレベルの症状が出ることもあるにはあるので」

 極めて稀なケースではありますが、と申し訳程度の言葉が付け加えられる。


 天使のような微笑みを、お姉さんは浮かべていた。

「無理はしないでくださいね」

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