2話 暴言は控えましょう。
話し始めようと思っているのに話が進まない。
まともな言葉を続けることができなくなった。
勝手に昨日のことが思い出されてくる。
暴言の連発。
すでに頭には血がのぼっていた。
腹わたが煮えくり返る。
テーブルの下では両手が小刻みに震えている。
よく周りが見えない。
——アノ人、何て言ってた?
最悪な気分だった。
端的に起きたことを言ってしまえば、こうなる。「妊娠したかも」と告げたら、今季夏休みから半同棲中の彼氏(?)に逃げられた。
同棲するのも早かったなら、逃げられるのも早かった。しかも「妊娠したかも」というのは嘘だった。
大事なことだから繰り返しますが、嘘です。
ちょっとした出来心。
悪戯心。
筆の滑りのようなもので、軽口のつもりだった。
まさか、あのような展開になるとは思ってもみなかったのだ。
嘘をついたことに関しては何も言うなかれ。
とんでもない結果になった。
反省するべきなのかも後悔するべきなのかもわからない。
今の私には冷静な判断ができない。
だから、大学生活の苦楽を分かち合ってきた親友・モエに、話を聞いてもらおうとしていたところだ。
突如、出現してきたアヤミは知らん!
いつものことだし、話は聞いてもらうけど!
かくかくしかじかと必死になって説明している間。
幾度となく私は、暴言を吐かざるを得なかった。
みなさまには、とてもお聞かせすることができない。
モエとアヤミに関しては、罵詈雑言を聞いても意に介さず。
もう3杯めになるアイスカフェオレを注文して、ちゅーちゅー飲んでいた。
ちゅーちゅー。ちゅーちゅー。
このときの私はやさぐれていて、「カフェオレなんて甘ったるいものを、飲むやつの気が知れない」などと思いながら話していたのだが。
後々、きっちりと御二方にはコミダのお茶代を請求されてしまった。
すでに奢らせることは決定事項だったらしい。
人生とは、ままならないものだ。
自分の感情すら思い通りにならないとは……。
申し訳ございませんでした。
❇︎❇︎❇︎
「もともと、リホは都合のいい女っぽかったじゃん?」
「そうだよう。浮気してるっぽいって話してたよね?」
いきなり、ズバッと切られた。
かわいい顔して2人とも、ひどいこと言うのね……。
しかしながら、紛れもない事実だった。
浮気してるっぽいのではなく、浮気はされていた。
むしろ、私が浮気相手だったのではないだろうか。