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14話 責任の問題ですか。

 こざっぱりした綺麗な私の部屋に入ると、アオイくんは悲鳴をあげた。

「待って!? 俺の荷物はッ!?」


 いろいろ、捨ててしまっていた。

 普通の服もジャージも歯ブラシセットも。

 それらが入っていた鞄も。


「ごめん、諦めて」


 きっぱりと言い切る私。

 シュン、と肩を落とす彼。


 まじで申し訳ない。

 でも、「別れよう」という言葉を使った方も悪い。

 てっきり、縁が切れたものと思っていたのだから。


「なに飲む?」

 お気に入りのペアマグカップを戸棚から出しながら、つとめて明るく私は聞いた。

「コーヒーがいいな」と言うので、アオイくんにはホットコーヒー。

 自分にはホットミルクを用意する。


 マグカップは捨ててなかったんだ、と少しだけアオイくんは嬉しそうにしていた。

 燃えるゴミじゃなかったからね、とは口が裂けても言えない……。


 久しぶりに、2人で食卓テーブルの定位置についた。

 大事な話をしなければならない。

 受け入れてもらえないかもしれない、と思ったら極度の緊張を覚えた。


 しかし、話さないわけにはいかない。

 深呼吸をする。

 単刀直入に、私は切り出した。

「妊娠したの、今度は本当に」


「うん、そうなのかなって思った」

 穏やかな声で、超絶なイケメンは笑う。

「俺がホットコーヒーなのに、まさか君がホットミルクを飲みはじめるなんてね」


 なんかイラッとした。

 もう、何?

 こんなバカみたいに察しのいい超絶イケメン、いろいろ大変なんですけど。

 全っ然、タイプじゃない!

 日々の生活に、私は安らぎを求めているのに!


「笑ってごめんね」

 さらり、と謝られた。

 ぱっちり二重の目力の強い瞳が、私を見つめている。


 そして、次の瞬間。

 アオイくんは、信じられない言葉を口にし始めた。


「産んでよ、リホ」

「えっ」

「俺、子ども好きだよ?」

「は?」

「俺じゃ、力不足?」

「や、そうじゃなくて」

「来年から社会人ですけど、何か問題でも?」

「本気で言ってるの?」

「本気で言ってるよ」


 コントみたいなテンポで、話が終わりそうになっている。

 いやいやいやいや、おかしいだろ。


 冗談の話ではない。

 もっと真剣に考えてほしい、と私は抗議しようとした。

 でも、超絶なイケメンの形の良い唇が先に動く。


「だって、リホは堕ろせるの? 堕ろしても平気でいられるの?」

「………」

「無理でしょ? 俺も無理。……だから、責任取るよ」

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