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13話 どれだけサイテーな男でも。

 玉森くん似の超絶イケメンが、私の姿を認めて言う。

「はぁ。……やっと、会えた」


 安堵のため息で、ずっと彼が私に会おうとしてくれていたことがわかった。

「なん、で……」

 思わず、涙が零れ落ちてしまいそうになる。


「謝りたかったんだ。やりすぎたな、と思って」と、彼は言葉を続ける。

「ずっと通話かけてたんだけど、出てくれなかったから」


 感情が波立つ。

 頭が混乱していて、言葉の処理が追いつかない。


 逃げられたら困る、とでも思っているのだろうか?

 全然、ついていけていないのに。

 矢継ぎ早に、彼は形の良い唇で言葉を紡ぐ。


「そっちはさ、あの日の夜のことを俺が忘れたと思って傷ついているんだと思うんだけど」

 違う? とアオイくんが聞いてくる。


 なんで、そんな言葉が。

 なんで、あの日の夜のことを覚えていなければ出てこないような台詞が言えるのか……。


「演技だったんだ」


 アオイくんが演劇部に所属していることは知っていた。

 出会った最初の日に、話してくれたことだ。


「あのときの俺はね、君が『妊娠したかも』といって俺の気を引こうとしているんだと思って、イラついて」

 超絶なイケメンが私に近づいてくる。


「あの日の夜のことを、覚えていないフリをしたんだ」

 ぱっちりとした二重の瞳で、私を見ている。


「ごめん、やりすぎた」


 アオイくんは私に歩み寄ると、優しく私の痣だらけの左手をさすった。

 たったそれだけの行動で。

 どのくらい彼が、ちゃんと私を見てくれているのかがわかる。


 それなのに。

 私は全然、彼のことが見えていない。


 ……こんなの、どうすればいいんだ。


 玉森くん似の超絶なイケメンで、木原莉帆のレベルでは相手にもならなくたって。

 とんでもない浮気ヤローで、他に女が山ほどいたって。

 カッとなったからって、迫真の演技で「別れよう」とか「俺の子なのか?」とか言っちゃうサイテーな人間だったとしても。


 ……大好きだった。

 何でも私のことをわかってくれる。

 アオイくんのことが。


「うわぁぁぁあああん」

 急な大声で。

 小さな迷子の子どもみたいに私は泣いた。

 恥も外聞もプライドも全部かなぐり捨てて、声が枯れるくらいの大きな声で。


「もう、しょうがないなぁ」と、かなり呆れていたけど。

 アオイくんは私のことを引き寄せて、強く抱きしめてくれた。

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