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のぼりとくだり

作者: 富士山 紗来

このページを開いてくださりありがとうございます!

なんか、書いてたらいつの間にか変なのが出来ました(自分で言うのもなんだけど)。

あ、あと誤字脱字があるかと思います_(。。)_

3000文字ほどの短いお話です。

出会い、運命。


「おかあさん、あのね。えーと...」

「なに?」

「えーとね、...私彼氏できたの」

「へぇー!あんたがねー!...そう、よかったね」


8月、夕暮れ。この季節は一日中暑い。暑くて暑くて、恋愛どころではない、はずなのに。


「実紀さんは、その、お付き合いされている方はいらっしゃいますか...?」

「恋人...ですか。いえ、私にはとても」

「なら、僕は」

「えっ?」


彼の目は本気であった。


「お試しでも構いません。僕とお付き合いして頂けないでしょうか」


人生初めて、男性から告白というものをされた。そとは暑い、眩しい太陽の光が大きなアスファルトの上に反射してこちらを攻撃してくる。暑い、熱い、あつい。


頬がポッと花開いた。淡いピンク色のコスモスのように。


「はい」


それから3年という月日が経ち、私たちは結婚式を挙げた。

昔の友と乾杯し幸せいっぱいの1日であった。


1年後、彼はこの世から居なくなった。信じられない、再びあの恐ろしい戦争が起きたのだ。大切な人が他界する、愛する人が他界する。こんなにも残酷なことがあるだろうか。


「あなた...」

「実紀さん」


仏壇の写真はいつも笑っている。こちらに微笑んでいる。娘と3人で写った最初の家族写真、思い出のあの日。

あの日、いや、もっと前、私たちが出会う前に戻れるなら、戻れるなら、いいのに。


悲しい、寂しい、私もあなたの元に。


「ママ?」


あれ、なんで私、この子を置いて。...酷い母親。


「大丈夫よ」

「ママ、お腹空いた」


外に買い物に行くとしても、黒焦げの人達がぶっ倒れているだけでなんにもない。

無理、無理、無理無理。



「大丈夫...ですか?」



誰...?



「あ、なた...?」

「落としましたよ」


そう言って渡してきたのは、昔、母に買ってもらったハンカチ。

黄色とピンクの縞模様、あの日あなたと出会った日に。


「あなた...」

「はい?」

「あっ、えっと。」

「これ、落としましたよ。」

「...どうも」


あっ、まって。行かないで。

彼が私の元から去っていく。また二人ぼっちにさせるの?あの子とこれから一体どうすれば。


ドンドンドンッ!


ドアの音、聞こえる。風の音、雨、台風か?


「実紀!いい加減起きなさい!」


ここは、私の部屋?


お、おかあさん。


「おかあさん...」

「まーたそのまま寝たんでしょ?アホだねぇほんと」

「ここは?」

「おまけに寝ぼけてるし。もうしらん!」


ドタドタドタッと階段を降りると、伊達メガネをかけた父と弟の(りく)がトーストを咥えていた。


「あー!私のトースト!」

「ばかだねぇ、姉ちゃん。昨日予約忘れたでしょ?」


うちは朝食は完全予約制。はっきり言って変わっている家庭だ。


「そう!だからあんたの分はない。だが!」


代わりに出てきたのが、トースト納豆...


「う、うえー」

「意外とイケるんだよな」

「うんうん」


寝坊した人にあえて嫌いなものを...この家族いつか呪ってやる。


「あら、食べた」

「しょーがないでしょ?!これ食べないとお昼までないんだから!...!?」


あっ、喉に詰まらせた


「ほら言わんこっちゃない〜、アホだねぇ」


制服を着て家を飛びだした。

走ってるのに、足の感覚がない。あれ、おかしい。暗い。


地面は真っ暗で影すらも見えない。どこ、私は一体どこに居るの?


「ママ!」

「...わぁ!」


目が覚めると娘が目を赤くして胸ぐらを掴んでいた。


「死んじゃった?ママ、ママ?!」

「大丈夫!大丈夫よ、安心して」


泣きじゃくるわが子の頭を撫でる。あれは、夢?


「実紀さん、ただいま」


えっ...、嘘。


「夢よ、ね...?」

「どーしたんだ!?愛しい子猫の顔が台無しだよ。一体何があったんだ?」

「あ、あなた...?」

「うん、迎えに来たよ」

「あ、ありがとう」


ねぇ、後ろにいるのはだれ?


「やめて!連れてかないで!お願い...」

「離せ、邪魔だ」


お願い、あなた。目を覚まして...あなた。


そして誰もいなくなった。きっとこんな時に使うんだろう、そして誰もいなくなった。



「実紀さん?」


目を覚ますと、そこは街中。ヒールが折れてころんでしまったのだろう、膝がすりむけていた。


「あー...、血が」

「大丈夫よ、これくらい」

「ダメだよ!近くにコンビニあるから、ここで待ってて」


コート、あの茶色のコート。懐かしい、初めてのクリスマスデート。あの日私はプロポーズされて、それで。


「じっとしててください」

「いてててて...!」


染みるような痛み、彼は優しく処置してくれた。


「ごめんなさい、こんなことになっちゃって」

「み、実紀さんのせいじゃないですし!それに、こういうのも今後一緒に生きていく上でまた話せるいい思い出になると思います」

「一緒に...?」


「実紀さん、僕と、結婚してください」


あぁ、こんな感じだった。そう、こんな感じ。結婚してください、シンプルだけどそれよりも、彼の目は本気であった。


「はいっ!」


深い口付け、深い愛。...でも、また私は落ちてゆく。


「お楽しみいただけておりますか?実紀さん」


目を覚ますとそこは真っ暗で何も無い空間だった。目の前にはシルクハットに青色の蝶ネクタイをした青年が立っていた。


「あなた...は?」

「私は、...うーん、秘密です!」

「ずるいわね」

「はい!私は最悪なので、あはっ」

「どうしてここへ?というか、ここどこなの?」

「それはもちろん、空間!そして私は次の空間へとご案内するために」

「空間?」


ずっと変だとは思っていたけれど、やっぱりこの『空間』を作り出しているのは彼なのか...


「嘘か誠か」

「え?」

「どちらだと思われますか?あなたは」

「これが?」

「ええ、もちろん。」


真っ暗な世界、彼とわたしだけ。


「彼は、彼は...、生きてるの?」

「いいえ、残念ながら」

「空間って...なに?あなたは人間?」

「はい。あー、正式には人間『だった』の方が良いかと」


なんだか、訳ありみたいね。そういえば、体が冷たい。...なんで?

もはやこれもこのよくわからない現象に比べたら気にならなくなってきた。


その時パーンッ!と何かがはじける音がした。


「クラッカー...?」

「おめでとうございます。15歳の誕生日ですね」

「誕生日?」

「あなたは馬のぬいぐるみを拾います、いえ、買ってもらうのです。おじさんに」

「おじさん...」


馬のぬいぐるみ、覚えてるかもしれない。昔、中学生なのにって弟にバカにされたの。そう、ちょうどこんな感じの。あれ...


「わーい!あたしの新しいお友達!」

「あらー、よかったわね実紀」

「あれ、パパは?」

「パパはね、今お仕事で手が離せないのよごめんね。」


パパのお仕事は、自転車修理。


「パパ!パンクしちゃったー!」

「そりゃ大変だ!パパさんが治してやるぞ〜」


あの頃は、なんにも知らずにただ遊び回ってたな。恋人とか、死とか、関係ないもん。




「おっと」


手を上げるとそっと手紙が届いた。


「手紙?」

「はい。きっとお父様からでしょう」

「おとうさん...」


内容はこうだ。


愛しい娘、実紀へ。




現実が全てとは限らない。





逃げろ




そいつを信用してはいけない




み、





実紀





ー父より





「何これ...」

「...お父様の最後の言葉を綴らせていただきました」

「最後の?え、最後のって何、えっ...?」


突然、頭を鈍器で殴られたかのような痛みが全身に行き渡り気を失った。しばらくして、目が覚めるとそこは見覚えのある風景。これは...


「おかあさん、あのね。えーと...」

「なに?」

「えーとね、...私彼氏できたの」


あっ、私、彼氏できたんだ。


「へぇー!あんたがねー!」

「それも、お父さんよりもずっとかっこいい人だよ!」


ええ、とてもカッコイイわよ。逃しちゃダメ、絶対に。


「今度の休み、初デートすることにしたの!」

「へぇー、どこ行くの?」

「...秘密」


ダメ、好きになっちゃ。


「ダメ、好きになっちゃ。...あれ、涙」


涙がとまらない、無理、悲しい、寂しい、...消えたい。


「呪いよ」

「...呪い?」

「ええ、あなたがこれからの道、絶対間違わないようにっていう」

「呪い...」


呪いって、そんなにいい物かな。やな事、いけないことをしちゃったから呪われる、違うのかな。


「大丈夫、あなたは」

「おかあさん...」

「幸せになりなさい」


ようこそ、幸せの無限ループに。


8月、夕暮れ。熱い、頬が林檎のように淡いピンク色になり彼はそっと口付けをする。


「はいっ!」



ーENDー

最後までお読み頂きありがとうございます!

コメントぜひお待ちしております、まぁ結果は見えてますけど...。

(そんな事言わないの。゜(PД`*)ノ)Д`)ベシッ)




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