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最高密度の黒
「ふ、ふふ、ふ、あはは!」
最高密度の黒がそこにはあった。
烏の濡れ羽色のような髪、黒真珠のような目。
肌の白だけが浮いた黒の塊。
無限の黒。
夢幻の黒。
有限の黒。
幽玄の黒。
恐ろしく“整い過ぎた”美しい少女が一人、肩を震わせていた。
夜を、宇宙を内包する少女はブラックホールのような作り物の表情で顔を覆いかぶせる。
「面白くなりそうだね、ロシェ」
蜂蜜に砂糖を溶かしたような甘い声で愛おしそうに首から下げたロケットに話しかける。
そこには、ロシェ・デュ・プランティエの写真があった。
「でも、大丈夫」
「何があっても、世界を滅ぼしてあげるから」