新たな一員
「恩返しに来ました!」
「人手が足りないと聞いたので、立候補を」
哲と諫がそうして生徒会室の扉を叩いたのは放課後になってからだった。
雪菜は瑠絺琉の席(今は空席なのだが)を見やってから、自分の中で天秤がぐらつくのを感じていた。
「あのね、そのことなんだけど」
「なんですか?」
「昨日クライストから聞いたんだけど、依頼したのは『黒宮 留』っていう人なんだって」
だから、と付け足そうとしたところで諫が「黒宮って、あの子も黒宮でしたよね」と瑠絺琉のことを話題にあげた。
「何。黒宮の悪口?乗るけど」
生徒会室のもう一つの席の持ち主である黎夜が顔を出す。
今日は黎夜が先についたらしい。珍しいことが続きすぎじゃないかと雪菜は驚愕する。
「黎夜さん、黒宮留って人知ってますか」
「そんな人知らない」
「白石くんが、知らないの?」
クライストの嘘だったのではないかと疑うが、雪菜はすぐさま頭を振る。嘘は裏切り行為に該当するはずだ。
「まあ気をつけたらいいって話じゃないのか?」
「万全の状態であればなんとかなりますよ」
渦中の人間である哲と諫がこのような調子なので雪菜はなんだか拍子抜けしてしまう。
「一応気をつけておいてね」
「「はい!」」
二人は雪菜が恐る恐るといった様子で差し出した書類をひったくるように取り、持っていたボールペンですぐさま書きなぐる。
もうちょっと考えた方がいいんじゃないかな。
「これで借りは返すからな!」
「僕も頑張ります」
これで哲と諫は生徒会の一員となったわけだ。
査定と監査という立ち位置だが大いに助かることは変わりないだろう。
「これからよろしくね。哲くん、諫くん」
まだ賑やかな日々が続きそうだ。
雪菜は柔らかな笑みを浮かべた。