序章〈記憶〉&プロローグ――過去――
こちらでは次回からこの作中の用語、キャラクター、アイテムなどを紹介していきたいと思っています。気になる方はぜひチェックを!
序章 〈記憶〉
彼の、いや、彼らの本当の運命はここから始まったのかもしれない······これは〈始りの十二支〉にとっての真の始りの記憶である。
日本のとある路地で、謎の男に首をつかまれ苦しむ少年がいた。
「ぐっッ!······アァ······」
謎の男は言う。
「悪いなぁ、そろそろ限界でねぇ······」
「な······に·········?」
男は首をしめる力を強める。
しかし、少年は諦めない。
「ま·····て······ぐゥ!!」
少年は男を蹴る。男の手が緩んだ。その隙に少年は男の手から逃れる。
しかし、そこは狭い路地、逃げ場は無い。
「無駄だ、俺からは逃げられない······」
その言葉は、非情な現実を後押しする。
しかし、少年は言う。
「······目的は······俺なんだろ······?」
その言葉は、直前まで首をしめられていたせいか、弱々しかった。しかし、その貫くような視線は······強い。
少年は続ける。
「アンタの目的は知らない······でも、俺を狙っているのはわかるさ」
男はわずかな興味を持った。そして語りかける。
「なら、どうする?お前に俺を止められるのか?」
少年は、視線を崩さず、先程より強い口調で言う。
「いや······アンタから逃れるのは無理だろう?」
男は戸惑う。この少年の意図がわからなかった。
すると少年は視線を自身の背後に移した。そこには。少年よりもさらに幼い、少女がいた。
「こいつだけは逃したい······」
「ふっ、まさか―――」
「わかってる······アンタのことは口止めさせる」
「······それを信用できればの話だがな」
すると男は、少年に近づく。
その時の光景はその場に居合わた少女と、その瞬間、新たに始りを迎えた、子〈ネズミ〉だけが、知っている。
一章へ続く
プロローグ ―――過去―――
――――二年前――――
この年、ある一家が行方不明になった。
理由はわからない。周りからすれば普通の家庭で、平穏な暮らしをしているだけだったはずなのに。
しかし、やつらにとっては違った。新たな技術と力を欲し、一家の両親の命を奪い、その娘が必要だった。
娘は、このときから残酷な運命と、力を背負わされた。それは、世界最大級の先進国といわれながらも、日本に存在する十二支の力を恐れた国家によって、十二星座をモデルに開発された技術。そしてそれを持つことで、一生縛られることになる人生。
やがて少女は、次第に自分が何者なのかわからなくなっていった。しかし少女は動く。いや、そうせざるを得ないのだろう。最後に残された、たったひとつの〈希望〉のために。
これが、この少女の、絶望の始り。それと同時に誕生したのだ。水瓶座〈アクエリアス〉の女神が。
NEXT――チャプター1
こちらでは次回のお話に関する情報や、場合によっては、作中の補足をしていきたいと思っています。