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シデリアン洞窟編Ⅲ

2025/2/8 改行や細かな表現の改稿

 道中の魔物退治。

 さっきの毛むくじゃらが出たり、より犬っぽいのが出たり、煮凝(にこご)りのようなのが出たりと、意外にバリエーションが豊富だった。

 半透明の煮凝りのような魔物は、殴っても殴っても、何度も再生してなかなかに苦労したけど、よく見ると、中に浮かんでいる、明らかに怪しそうな宝石みたいな物があって、それを狙って壊したら勝てた。

 魔物以外も、コウモリだったり、ムカデだったりが結構多い。しかもどれもやけに大きい。

 コウモリもムカデも、餌として魔物を狩るようで、私の獲物を横から持って行くことも間々あった。

 当然、私も襲われる。コウモリは空中にいるもんだから、面倒くささが尋常じゃなかった。

 最終的に、盾を置いて、出来るだけ先の尖っているそこらの石ころを力任せに投げまくることで蜂の巣にしてやった。

 お肉は、あんまり美味しくなかった。


 ムカデと戦ってるとき、口から吐いてきた液体が少しかかった左太腿が火傷みたいな傷になって地味に痛い。

 かかったのが倒す直前だったから、すぐに水で洗えたのが幸いだ。この傷の様子を見るに、下手をしてたら、ここでリタイアして、来た道を戻ることになってたかもしれない。今は一日に三回くらい傷口を洗っているけど、経過は良好だ。


 戦闘については、自分でも成長したと実感できるくらいにはなった。と、思いたい。

 戦闘で気付いたのは、正面から筋力に任せて攻撃を受け止めるよりも、敵の攻撃にあわせて、盾で攻撃を逸らす方が、体力の消費量的にも、戦術的にも有効だってことだ。

 まぁ、タイミングとかは、まだ経験が足りないから、失敗して爪とかが胴の防具に当たったりとかするんだけども……。

 でも、成功するとすごい。相手は確実に体勢を崩すから、脳天粉砕盾の角パンチorチョップが確定で入って相手は死ぬ。

 あと、攻撃を逸らすときに、爪とかが盾と擦れると、すごく良い音がする。シャオンっていう音。この音を聞くために戦闘してるまであるくらいお気に入りの音だ。


 ここまでに、疲れて二回くらい寝たから、たぶん二日くらい経ったと思う。その頃には、私にもルーチンみたいな戦闘スタイルができていた。

 まず、敵の攻撃を受け流して、それで体勢が崩れるなら攻撃。崩れなかったら、そのまま盾の面で体当たりして、崩す。そして思い切り頭を殴りつけるっていう感じ。

 私の力でもって、殴られた魔物や動物は、今のところみんな一撃で死んでいる。


 さっき二回寝たって言ったけど、こっち方面でも発見があった。

 少なくとも、この洞窟内では、火を絶やさずいれば、ある程度の魔物の出現や動物の接近を防げるということだ。

 これは、受け付けのおじさんが教えてくれなかったことだ。単に知らなかったのか、あえて教えなかったのかは分からないけど、とりあえず、トイレ中や就寝中などに襲われる危険はこれでだいぶ減って、比較的安全に洞窟を進めるようになった。って、誰に言ってんだろう私は……。

 洞窟に入ってから独り言が増えた。

 話し相手がいないからね。あー、シャルちゃんに会いたい。というか、とにかく人に会いたい。


 そんなこんなで進んだ四日目。寝て起きたらとりあえず一日経ったってことにしてる。

 少し先の方から戦闘らしき音が聞こえてきた。

「お、やっと人の気配が。急ごう!」

 足取りが自然と軽くなり、速度が上がる。

 だんだんと音が近づいてきた。

 金属同士がぶつかるような高い音が複数聞こえてくる。

 一対一の戦闘ではなさそうだ。というか、金属同士ってことは、お互いが武器を持っている?


 遂に辿り着いたそこには、二振りの剣を振り回す少年と、杖のような物で殴る少女。そして、十匹ほどの緑色の小人が見えた。

 既に、二人の周りには、別に十匹ほどの小人と、犬の魔物が何匹か倒れていて、二人は共に息がだいぶ上がっているように見えた。

「いけない!」

 このままでは、体力が尽きたところを嬲り殺しにされてしまう。

 荷物を咄嗟に下ろして、小人の群れに向かう。


 群れの一番外側で、自分に一番近い小人を、最前線の、少年と戦っているやつに目掛けて盾の面を使って殴り飛ばした。

 甲高い奇声を上げて少年に切りかかろうとしていた小人が、私が飛ばした小人に激突されて一緒に地面に転がったのが見えた。ナイスショット私!

 少年は、一瞬呆けた顔をしたけど、直ぐに状況を飲み込んで倒れて呻いている小人に止めを刺した。すると、残った小人たちは、混乱状態に陥った様子になった。

 今少年に止めを刺されたのがリーダーだったらしい。

 よく見ると装備が少しだけ立派に見えなくもなくもない? 暗くて分からん。


 統率を失った小人の群れというか、集まりを、三人で各個撃破した。

 終わると、二人がこちらにやってきて、少年が口を開いた。

「いやぁ、助かったよ。後少し助けが遅かったら、俺たち死んでたかも」

 少年が握手を求めるように手を出したので、私は応えて手を握った。

 私の腕の盾の大きさを見て、少年が少しギョッとしたのを私は見逃さなかったけどね。

「間に合ってよかったよ。たまたま転がしたのがリーダーだったみたいで、結果オーライな気もするけど、役に立てて何よりかな」

「え、あれ狙ってやったんじゃないのか!?」

「狙ってはいたけど、リーダーだとは思ってなかったよ。後ろから仲間が吹っ飛んできたら注意逸れて戦いやすくなるかなってやったことだから。そんなことより」

「な、なんだよ?」

 万感の思いを込め、叫んだ。

「久々の人だー! 赤の他人だー!」

 万歳する私。いやうん。テンション壊れてるのは自覚してるよ。でもだって、四日ぶりですよ、他人と会話したの。

「気持ちは分かる。あんたも大変だったんだな――。えーっと、とりあえず自己紹介しよう」

 あぁ、はい。そうだね、まずは自己紹介だね。


「俺は、ロア=キール。この静かなのはアイ=キール。双子の妹だ」

 アイと紹介された少女は、ペコリと頭を下げた。

 この子も結構可愛い系。シャルちゃんほどじゃないけど。

「アイ、です。た、助けてくれて、あ、ありがとうでした……」

「私は、ディティス=アンカー。よろしくね、ロア君、アイちゃん。私は、二人の次の日に洞窟に入ったんだ。追い付けてよかったよ」

「次の日ってことは……四日も一人でここまで来たのか!? すごいな!」

「もっと褒めてくれてもいいよ? あんまり褒められ慣れてないから」

 私が言うと、アイちゃんに似て可愛い系の顔に乗ったロア君の瞳が怪訝な色になった。

「なんか調子乗りそうな気がするから遠慮しとく」

 ちぇーと口を尖らせる。


「ん? ちょっと待て。何で俺たちがお前の前日に入ったなんて知ってるんだ?」

「入り口で受付のおじさんが教えてくれたから。二人組が入ったって」

「あの無愛想なおっさんが?」

「無愛想? あー、最初はそんな感じだったかも。ちょっとイヤらしい目線は感じた。でも、最後は気さくに装備の相談とか乗ってくれたよ?」

「俺たちの時は終始ぶすっとした態度で、相談と言えば、二刀流なんて素人がやって良いことじゃないから止めろ。盾と剣を大人しく一セットで持って行けって、それくらいだったぞ?」

 あー、そうか。二刀流だもんね。こいつかー。まぁ、指摘するのはやめておこう。折角他の人と合流できたのに、いきなり喧嘩するとかはよくない。

 とりあえず、余計な事言わないように、心を落ち着けよう。荷物とか取ってこよう、うん。さり気なく。

「へぇ~。まぁ、人によって態度変わる人だったんじゃないの? あ、私、向こうに荷物置いてきたから、取ってくるね」

「おう」

 おじさんには少し申し訳ないことを言ったけど、今は許してほしい。

 それにしても、今の話の切り替え方はちょっと怪しかっただろうか。まぁ返事はあったし大丈夫だよね? 置いて行かれたり、しないよね?

「待っててよ?」

 少し不安になったので、念のためお願いすると、分かったよと苦笑された。


 荷物の元に戻ると、大ムカデが一匹、私の荷物を奪おうと取り付く寸前だった。

「触んな虫ケラがああああああ!」

 私も少し逞しくなったなぁと思う、格闘開始五秒前なのでした。

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