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キャラバン護衛編ⅩⅩⅢ

 私が告白したのに、ユニエラちゃんの方からキスされっぱなしっていうのがなんか癪だったので、唇だけを接触させて勝ち誇っている彼女にお返しをすることにした。

「ん……ん!?」

 唇の隙間から舌を滑り込ませる。

 驚いて一瞬、体が跳ねたユニエラちゃんだったけど、すんなりと私の舌を受け入れた。

 貪るように、お互いの舌を(ねぶ)る。

 ぴちゃぴちゃと、お互いの唾液の絡まる音が次第に大きく聞こえる。

「んう……ふー。ちゅ……あ、はぁー。ん――」

 お互いの荒い息遣いが、より興奮を誘う。

 ユニエラちゃんがさっきまで飲んでいた葡萄酒の香りが、私の口の中にも広がる。

 そういえば、私、さっきまでお肉食べてたけど、ユニエラちゃんは臭くないかな!?

 そこで口臭が気になってしまった私は我に返り、ユニエラちゃんを解放した。

「ぷはあ!」

「んあ――。はぁ、はぁ……。ディティス様、はぁ……急に激しくされると、驚いてしまいますわ。私としましては、求められて嬉しいことこの上ないのですけれど……」

 艶めかしい(なまめかしい)表情で、乱れた呼吸を整えながら、少し名残惜しそうにユニエラちゃんが呟くように言った。

「ごめんごめん、好きなんだって自覚したら我慢できなくなって……」

「シャルティ様とはまだ同等には愛せないと言っておいて、これなんですの?」

「シャルちゃんとはその……えへへ~」

 普段、二人きりの部屋で何をしてどういう風に過ごしているかは濁し、笑って誤魔化す。あんなほぼ情事みたいなこと言えるわけないし……。

「あー、なんとなく察しましたわ。あの程度の激しいキスはディティス様たちにとっては日常なんですのね」

「歯止めって大事だなって、私思うの。うん」

「二人きりだと、止めるものが理性しかないから、それが消えやすい自室ではエスカレートし続けると?」

 すごい翻訳能力だ。それで稼げそう。

「ディティス様、私、翻訳家なんてやる気ありませんわよ? 貴女のことしか分かりませんもの」

「あれ、私、口に出して――」

「顔に書いてありますわ。アイやロアにだってバレるでしょうね。まぁしかし、隠し事ができないというのはある種長所だと思いますわ。腹芸ができないというのは冒険者としてどうかとも思いますけど、それは私たちがフォローすればいいだけですものね。何せ、仲間なのですから」

 それはそうとと、ユニエラちゃんが話を戻す。少し照れ臭そうに。

「その、エスカレートし続けているお二人は、普段、どこまでしているのかしら……」

 それ言ったら私が笑って誤魔化した意味がないでしょう!

「も、もう、体は重ねてらっしゃるのかしら?」

 照れながら言うな、照れながら。……かわいいから。

「ま、まだだよ……そこはまだ、その、シャルちゃんは成人してないし……」

「そういうところにまだ理性、残ってますのね。……私、たぶん、ディティス様より年上ですけれど、最後までしてもよろしいのですよ?」

「それは、最初はシャルちゃんとって決めてるし、ここは外だし、人気は無いけど、いないわけじゃないし、最初はシャルちゃんとって決めてるし」

 大事なことは二回言って強調するってどこかで聞いたので。

「なるほどなるほど。ディティス様の理性の置き方はなんとなくわかりました。私も、シャルティ様を差し置いて情事に及ぶなどしたくありませんもの、もしディティス様から()()なんて聞こうものなら、平手打ちを差し上げていたでしょうね。……ところで、なぜ先程、キスをお止めになったのです? 私、あとちょっとでその……いえ、なんでもありません」

 あ、そうだった。いや、でもこれ言ったら怒るかなぁ……。雰囲気ぶち壊しだし……。

「怒りませんから、言ってごらんなさいな?」

 それ言う人って大体怒るんだよなぁ……。

()()()()()()()()!」

「あ、はい」

 すでに若干怒ってない?

「えっと、そのね、私の口、臭くないかなって……思っちゃって」

「それだけですの?」

「う、うん……。お肉食べてたし、臭いって思われてたら嫌だなって……」

 それを聞いたユニエラちゃんは、お腹を抱えて笑い出した。

 私が戸惑っていると、ひとしきり笑い終えたあとに、軽く謝罪した。

「何かと思えば、そんなことで……。ええ、ええ。少し香りましたわね、先程までディティス様が頬張ってらっしゃったケルベロスの肉の味と調理に使った香辛料の香りが」

「やっぱりいい!?」

「でも、だから何だというのですか? 食べさせたのは私ですわよ? それにです。その程度で揺らぐ恋心ならば願い下げ、むしろこちらから捨てて差し上げますわ! むしろ、匂いというのなら、私のだって、ガブガブと飲んでいた葡萄酒の匂いがしたのでしょう? ディティス様、葡萄酒はお得意でないようでしたから、お嫌じゃありませんでしたか?」

「そんなことないよ。葡萄酒は、味は確かにそんな好きじゃなかったけど、匂いは悪くなかったし。……いや! 別に葡萄酒の匂いまで嫌いだったら、それでユニエラちゃんのこと嫌いになるって意味じゃないからね!」

「なら、何も問題ありませんわね! さて、私としては、キスの続きをと言いたいところですが、本来の目的に戻らなくては。関係を深める機会なんて、今後いくらでもあるでしょうし。今日のところは、ディティス様から告白されて、キスをしたというだけで、お釣りがくるほどの幸せですもの。さぁ、ディティス様、行きましょう?」

「う、うん。えへへ、ありがとう、ユニエラちゃん」

 今度は、ユニエラちゃんが出した手を私が取り、繋いだまま歩き出した。

 蜂蜜水とパンを三人分、キャラバンの料理番さんから貰って、アイちゃんのもとへと向かった。

話は進んでないですけど、切りが良かったので、今回はこの辺で。

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