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キャラバン護衛編Ⅹ

 先頭を走る魔物。三首の犬型、ケルベロスだった。

 洞窟でも最後の方で相手を……ロア君たちがしてたけど、多くても二匹同時だった。それが今回は、しー、ごー、ろく……。

 うん、十匹以上はいるね!

 その後ろからも、ホブゴブリンやら猪犬を二回り大きくしたのやら、私が見たことのない強そうなのが狂乱状態で突っ込んでくる。

 洞窟の時とは違って、今度は護衛対象があるので、私たちは逃げ出すわけにいかないのが凄くつらい。

「おいおいおいおい! なんだよありゃ!? あんな強いのが沸くようなルートじゃねーぞ、ここは!?」

 すぐ後ろのグループの冒険者から驚愕の声が上がった。

 そっか、あれ異常なんだ。いや、見るからにそうなんだけど、顔ぶれがさらにおかしいと……。

 あと百メートルといったところまで迫ってきた魔物の大群を前に、私たち冒険者は、いよいよ覚悟を決めた。

 数の圧力で体が竦むけど、私は盾だから、最初に前に出なくっちゃ!

「前に出ます! 援護を!」

「ついて行くぞ、ディティス!」

「わ、私も!」

「私も参ります」

「置いてけぼりは嫌なので、俺もー!」

 同じ馬車のみんなが同行の意思表示。よし、行こう!

「先行する冒険者を援護する! 弓隊! 矢つがえ!」

 他の馬車の冒険者からも杭盾持ちの人が何人か出てきていた。そして、私たちと彼らを援護するため、キャラバンの護衛の弓隊が、後ろで一列に並んで構えている。

 矢の補充ができない洞窟では、使ってる人がいなかった弓。なんだかんだ初めて見る気がする。

「突撃!」

「放て!」

 私たちが駆けだして、その頭上を矢が追い越していった。

 文字通り、矢継ぎ早に矢が飛んでいき、魔物の大群へ吸い込まれるように降り注ぐ。

 接敵間近でバン! といくつか音が聞こえた。他の冒険者の持つ杭盾からだった。地面に杭を打ち込み、完全防御の姿勢だ。あー、そうか、本来はあー使うんだと、横目で感心しながら、私は先頭のケルベロスにシールドバッシュを思い切りぶつけてやる。

「後続を玉突き事故させる!」

「何言ってるの!?」

 アマンさんが意味不明と声を上げるが――

「了解、脇と背中は任せろ!」

 慣れてるロア君たちがアマンさんを引っ張って私の後ろについた。

 盾の面を三首と正面衝突させ、踏ん張る。

 ベキョと骨の砕ける音。そして、後続の魔物が急停止できずに勢いを残したままケルベロスを押し潰しながら私の盾にぶつかる。

 さすがに後続の数が多くて、勢いが止まるまで大分押し戻されたけど、何とかなった。

 途中横に抜けるのや、乗り越えて飛びかかってくるのを、私のすぐ後ろで構えていたみんなに処理してもらったおかげでもある。

 他の盾の人のところにぶつかった列も同じように対処されている。私と違うのは、盾を持ってた人もショートソードで迎撃に加わっているところと、私のより抑えた敵の列と後ろに並ぶ冒険者の列が一つずつ少ないところか。

 私たちが抑えきれず、後ろに抜けていった魔物たちについては、残った冒険者や、キャラバンの護衛の人たちが対処してくれていると信じよう。冒険者は知らないけど、キャラバンの人たちは、私たちよりずっと経験豊富だろうしね。

「え!? なんなのこの子、一人で魔物の群二列も止めてんだけど!? こわっ! しかも、杭盾なのに杭使ってないし!?」

 アマンさんが、脇を走り抜ける魔物を流れ作業のように、両手に逆手で持った短剣で屠りながら私を気味悪がっている。私はあなたの無駄のないその所作がむしろ怖いんだけど……。なんなの、キリングマシーンなの?

「お?」

 盾が再び押される感覚が来た。後続で無事なのが前方の死体の山から脱出したのだろう。魔物の死体がポンポンと脇や後ろに投げられて、こちらに足音が複数近づいてくる。

 踏ん張りをやめて、私も戦闘態勢に入る。

 盾のストッパーが無くなると、見るも無惨な、先頭にいたケルベロスだった肉塊と、その他何か分からない後続の魔物の肉塊がいくつか崩れるように転がった。

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