シデリアン洞窟編ⅩⅩⅡ
「なんだ、騒がしいな。サボってないで、ちゃんとタグの反応見ろよ? あと、たった六人なんだからな」
受付のおじさんがやってきていた。三週間ぶりくらいかな?
「おじさん!」
「誰がおじさんだ。俺にはグレイブって名前が……あ、る……。嬢ちゃん!?」
私に気づいたおじさんが素っ頓狂な声を上げた。
というか、おじさん、グレイブって言うんだ。
「え!? 戻ってきてたのか!? いつの間に?
「グレイブさん、奥の魔法陣で戻ってきたんですよ、彼ら」
「あー! そんなのもあったな。使うやついなさすぎて存在を忘れてた」
「おやじ、じゃあ何か? 往復一ヶ月程度の道のりってのは魔法陣のこと忘れてた上での発言だったってことか?」
クガルーアさんがイラついている。
「まぁ、そうなるな。すまん。だが、こっちから一番奥に戻るための魔法陣があるなんて言うわけがないだろ」
「それは、確かに……」
「なぁ、クガルーアさん。そんなことより、報告しとかないといけないことあるじゃないですか」
ロア君が宥めるように進言した。
「あー、そうだった。ギルドにしばらく洞窟を封鎖して中のメンテナンスをしろと伝えてくれ。ロックイーターの変異種が新人たちをむさぼり食っていたぞ」
「ロックイーターだと!?」
「あー、それは何とか倒したからいい。ユニエラ様、例の話を」
「え!? あ、はい。ではなくて、ええ。この者らが倒したロックイーターの素材を中にそのままにしています。私の命の恩人ですから、褒美として、その所有権を私の一存で与えましたの。中に人をやって回収していただけますか?」
「セイル家の……。ご無事で何よりです。配下の方々の反応が途絶えて心配しておりました。洞窟封鎖の件ですが、はい。もう貸し出せる装備もなく、一旦、人の進入を止めようと話していたところでしたので、それはすぐにでも。というか、実際、もう人入りは止めておりましたので、中にいたのはあなた方で最後になります」
「そう、なら良かったですわ。……ええっと、私がロックイーターから救われたというのもそうですが、この方たちは、私を誘拐犯からも救ったのです」
「誘拐犯? と、言いますと?」
「ええ。私が一緒に入ったのは配下ではなくて、誘拐犯だったのです!」
えええ!? 初耳だった。ユニエラちゃん、誘拐されてあそこにいたんだ!
「新人冒険者を騙ってギルドに申請し、ここに来たときは配下のフリをしていたのです。密かに私の護衛についていたお兄様の配下の方たちが窪地を抜けた先で私を助けようと奮戦してくださったんですが、犯人諸共、ロックイーターに食い殺されてしまいましたの。もうどうしたらいいか分からず、自暴自棄になっていたところを助けてくださったのが彼らなのです」
そ、そうだったんだ!? 大変だったね、ユニエラちゃん。でも、みんなお兄様から借りたって言ってたような気もするけど、犯人に混ざって戦ってくれた人って意味なのかな? よく分かんないからそういうことにしておこう。
「お嬢ちゃんたち、なんかすごい大仕事をしちまったみたいだな。よし、その旨も含めて、ギルドに連絡だ! 急げよ」
おじさんが号令すると、私たちを迎えてくれたお兄さんたちが、いい返事をしてギルドへ連絡するために駆け出していった。




