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シデリアン洞窟編Ⅺ ジンベイの悔恨

 元々直径三キロメートルほどのこの窪地。直進すれば大した時間はかからない。魔物さえいなければの話だけど。

「魔物を倒しながらぶっ続けで進むのは大変だったよ」

 冒険者の先輩である兄からそう聞いた僕はそのときに、それなら休める場所を確保して、休憩しながら進めばいいじゃないかと考え付いた。

 事実、今までは上手くいっていた。一日で進める距離こそ僅かでも、体力を維持しながら確実に進めている実感があった。

 後から降りてきたディティスちゃんたちを迎えに行って戻るのに三十分ほどしか掛からなかったという事実からは少し思うことはあるけれど、安全第一を考えれば、このタイムロスもそう悪いものではないと確信していた。

 この場所には変な異名が付いているようだったけれど、それもたびたび起こる、波のことだと思っていた。

 だけど違ったんだ。

 あの異名の意味はこういうことだったんだと、走りながら僕は、自分の至らなさ、楽観的だった今までの考えを深く反省した。

 反省するには遅すぎた。

 『蹂躙の窪地』と、そう呼ばれていたこの場所の、その理由を、身をもって体験することになった。なってしまった。巻き込んでしまった。

 自分のせいで大勢死んでしまうことになった。

 この洞窟に入るときにパーティを組んだ四人も、先ほどの襲撃で、もう三人死んでしまった。ミューラ、ゲイル、ダリル……済まない。

 他のパーティの人たちにも、謝っても謝りきれない。

 二日前に出会った少女の言葉を思い出す。

「この場所の異名をご存じであるのに、こんな悠長なことを……。それほどの実力者なのか、はたまたただのお馬鹿さんなのか。(ワタクシ)たちは先に行きますわ。生きてまた会えるといいですわね」

 二十人でパーティを組んでいた、あのお嬢様の話をもう少しちゃんと聞いておくべきだった。

 いや違う。聞くのなら、兄にもっと聞いておくべきだったんだ。なぜこの窪地を一気に駆け抜けたのか、なぜそんな物騒な異名があるのか。

 僕はつまるところ、最初から間違えていたんだ……。

「僕は――俺は大馬鹿者だった……!」

 戦い、道を開きながらも声が漏れた。

 自分は冴えていると、賢いと、そんな驕り(おごり)があった。それがこんな子供たちを危険にさらし、あまつさえ、事実、死なせてしまった。

 俺は自分の愚かしさを恥じた。

 それでも、今は前に進まなければならない。ここで投げ出そうものなら恥の上塗り、死んでいった仲間たちへの冒涜に他ならない。

 これ以上の犠牲を極力減らすために、弱音と涙を飲み込んで、残った仲間たちに指示を飛ばした。

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