表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/267

シデリアン洞窟編Ⅷ

2025/04/27 改稿

 というわけで、再び三人での戦闘ということになった。

 キャンプからそんなに離れていない距離で、ひとまず食料確保を目標にしようと方針を確認。

 三人で三角形になるように、背中を向けあう陣形をとって、全周警戒をする。

 これはもう慣れた形なので、無意識にそうなる。


 程なくして穴が弾けた。

 アイちゃんの方向に三つ。私がこの洞窟に入って最初に遭遇した、今や皆のアイドルと言って差し支えない燃料源だ。

「援護いる?」

「だ、だいじょうぶ!」

 私が聞くと、すぐに返事が返ってきた。まぁ、そりゃそうよ、あの魔物相手ならもう慣れたものよね。

「キツかったら言ってね!」

「う、うん!」

 念のための声がけも、返事が聞こえた瞬間には、アイちゃんが横薙ぎに鎌を振るって、一匹目を両断するところだった。

 それを横目で見た私は、いらぬ心配だったなぁと、自分の目の前に集中し直した。

 また程なくして、ロア君と私の前にも穴が現れた。

 ロア君は二匹、私は三匹分。

「うわ、本当に多いなここ!」

 ロア君が独りごちるのが聞こえた。

 二匹くらいで何を言っているのかとそっちを見ると、ロア君の方に、さらに続けて三つ穴が開いていた。うわぁ、本当に多いじゃん……。

「野郎、やってやんよ!」

 ロア君が自分を鼓舞しているのが聞こえる。

 自分を自分で励まさないとやってられない気持ちは分かる。

「キツいなら言いなよ!」

 こっちをすぐに片づけて援護しに行くつもりで言ったのだけど――

「自分の心配してろ!」

 返ってきた言葉の意外性に目を丸くしたけど、なんかイヤな予感がして自分の前に向き直ったら、私の前には、追加で五つも穴が開いていた。

「なんだか楽しくなってきたかも……」

 聞く相手のいない皮肉を呟いて、盾を構えた。


 総数にして八匹。最初の三つが弾けるのとほぼ同時に、魔物が飛びかかってきた。ゴブリンだ。

 両腕を体を守るように前に出して、身を低くする。

 衝撃が三つ、間髪入れずに盾にぶつかる感覚。

 そのまま正面に向かって走り出して、ファーストアタックに失敗して着地したばかりの一匹目と正面衝突して弾き飛ばした。骨の砕ける音。

 前進しながら少し盾に隙間を開けて、前方の穴、五つを確認。


 ――突進続行!


 そしてこれが、さっき先制攻撃された――

「お返しっ!」

 穴が弾け、魔物が出るのと同時に、固まり気味だった正面の二匹めがけて、思い切り体当たりをぶつけてやった。

「ドンピシャ!」


 一度の突進で三匹のゴブリンの骨を砕いて、正に大戦果といえる出来栄え。

 ズザザッと横滑りしながら止まってみたりした。

 止まって顔を上げたその先には、最初に弾き飛ばした魔物の残りが追いついて飛びかかってくる姿が迫っていた。

「うわっ、この!」

 高く飛んでいる方は、左手側でいなす。

 シャオンと、武器のこすれる音と、飛んでいくゴブリンの鳴き声。

 低い方は、右手側のアッパーでもって、頭部を下顎から粉砕した。

 これで四つ!


 突進で出鼻を挫いた集団もようやく追いついてきた。

 残りが、犬型の魔物が二匹、ゴブリンが二匹かな? ゴブリン一匹はさっきどっかに飛ばしちゃったけど……。

 なんて思っていたのも束の間、左手でいなしたゴブリンが後ろから飛びかかってくる声がした。

 思ってたより近場にいた!?

 これを咄嗟に再び盾で逸らした。

 ゴブリンは、飛びかかってきたそのままの勢いで、正面にいた犬型の魔物とぶつかった。


 今度は、残っていたもう一匹のゴブリンが、犬型の魔物に騎乗して、剣を振りかぶりながら、すぐ目の前まで迫っていた。

「うわっ!?」

 逸らすのが間に合いそうにないから、盾で正面から受ける。キンッと高い音。腕に衝撃が響く。

 押し返すように腕を押し広げて、ゴブリン(相手)の体勢を崩す。

 犬から落ちそうになっているゴブリンに、金属製の脛当てを着けている足で、渾身の蹴りをお見舞いする。

 防御しようと咄嗟に前に出した剣ごと自身の肉体をへし折られて吹き飛ばされるゴブリン。

 乗り手を失った犬は、着地後すぐさま反撃を試みる気配、もう手は打ってある、というか盾だけど。

 蹴りを放った勢いでクルッと回って、盾をアンダースロー気味に手放しておいたのだ!

 犬っぽい魔物は、着地点に飛んできた盾によって頭部から粉砕された。

「六つ! あと二匹!」


 さっきゴブリンを放った方を見ると、残っていた犬型共々姿がなかった。

 やば、見失った!?

 ワウッと吠える声が聞こえ、振り向くと、犬しかいなかった。

「どこ!?」

 慌て、犬を警戒しながらゴブリンを探す私の胸に、小さな衝撃が走った。

 視線を落とすと、左胸にナイフが刺さっていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ