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冤罪スローライフ   作者: アッサムてー
強姦の冤罪着せられて国外追放されちった(笑)
6/36

 行きでハンター達と出会ったところまで戻ってきた。

 当たり前だが、車もハンター達もいなかった。

 そこでようやく、山の主要道路がどうしてこんなに広いのか気づく。

 最初は大型トラックのためかと思っていたが、それにしては広すぎる。

 これは冬に除雪で道幅が狭くならないようにする対策なのだろう。

 そうして気づいていけば、点々としているがあちこちに注意書も兼ねた道路標識が存在していることに気づいた。


 (魔物の飛び出し注意の看板なんて初めてみた)


 思わず呟くとリューが解説してくれた。

 何も知らない人が見れば愛護関連かなと思うところだろう。


 だが、違う。


 たとえば、魔物が道路に飛び出してきて車で轢いたりする。

 それこそ轢いたのが、熊みたいな動物系だった場合車が壊れるのだ。


 大破させた人もいるらしい。


 運が良ければ凹むだけで済む。

 しかし大概のエンジンは前方のボンネットの中に収まっている。

 つまり大きい鹿や熊、動物よりも頑強な魔物を轢いたりするとボンネットの耐久性以上の衝撃が加わってしまう。

 するとどうなるか?


 エンジンが壊れてしまうことがあるらしい。


 一方には鬱蒼とした森林が広がり、もう一方は崖である道が続いたり途切れたりしている。

 道路から見るとそびえ立つ崖のそばを走ったりする。

 そこには、魔物や動物の飛び出し注意の看板以外に、土石流などの看板もある。

 山火事注意なんてのもあった。


 「そういえば、ハンターっていうかマタギの人、えっとワルターさんだっけ?

行きにすれ違った人の格好さ、なんか想像してたのと違ってちょっと驚いた」


 「想像?」


 「こう、動物の毛皮を着たりしてるイメージ」


 「何十年前のイメージだそれ。

 むしろ色々勘違いした冒険者がしてる格好じゃん。

 今はそんな格好する人いないよ。

 お前がケツに敷いてる雨具あるだろ、そのちょっと良いやつ着てるし、靴だって同じメーカーから出てる作業しやすいやつ使ってる」


 めっちゃ現代的だった。

 ちなみに、クリスがうっかり尻の下敷きにしてたのは、他国にも展開している雨具メーカーの商品である。

 普通のビニール雨具と違い、しっかりとした布を使って保温性も高めている代物だ。

 どの農家の家にも必ず数着はある雨具だ。

 もう一つ、なんてことはないが農業ーー専業兼業問わず、一般的には農民と呼ばれている彼らは自分達のことを【農民】と自称することは、ない。

 【農家】もしくは【百姓】とお互い呼んでいるし自称している。

 【百姓】呼びが基本とのことだ。

 しかし近年出版されている著作物のほとんどは、差別用語だとか好き勝手ぬかした一部の知識人のよくわからない弁が浸透して言葉狩りの対象となってしまい、駆逐されつつあったりする。

 しかし、当の百姓達はそれが差別用語だという認識が皆無だ。

 百姓は百姓とのことだ。

 近年、移住してくる者の中にはそう自称すると酷く怒るよくわからない考え方の人間もいたりする。

 そこまで怒る理由も無いはずなのだが。

 何故か今まで普通に使っていた言葉が怒りとともに全否定されるという変な現象が起きているのも事実だ。

 まるで、都会の知識がすべて正しいと言わんばかりに熱弁を振るった者がいたとかいないとか。


 その場に居合わせた地元民は面白がって動画を撮影していたとか、いないとか。


 まぁ、当事者の百姓達ーー農業従事者達は本当に気にせず使っている。


 たしかに、農作業用の出版物は大変参考になるがそれにしても本の知識だけではーーこれは農業に限ったことではないがーーわからないことがたくさんある。

 予想外のことは常にどの仕事でも起こりうる。

 クリスの場合は筋肉痛だった。

 魔法での失敗をした。


 ちょっとびっくりしたことはまだまだある。

 こうやって車を走らせていると、時おり視界に入る不法投棄されたらしいゴミの山。

 家電だったり、冒険者達が使用していたであろう壊れた武器や防具だったりが所々で軽い山を築いている。

 その横には、やはり【不法投棄は犯罪です!やったらブタ箱へぶちこむ覚悟しろ!!】という、不法投棄を辞めろという看板が立っている。

 むしろ、捨ててみろ末代まで祟ってやるオーラまで出ている。

 自治体と猟友会で環境保持につとめるも、手と金が回っていないのだ。

 ボランティアでこの集落は定期的に場所を限定してゴミを片付けている。

 それでも、壊れた大型家電や壊れたとはいえ何かしらの効果が付与されている武器と防具を処理するには金がかかってしまう。

 なので本当に少しずつ皆でお金を出しあって、さらに少しだけ有名な神殿があるのでそこへの寄付(お賽銭ともいう)をあてがって処理している。

 神聖な寄付なのに、神様へのお金なのに不謹慎だとかいう者がたまにいるが、神殿の整備もただではないのだ。

 それに少しだけ有名と言っても、ちゃんとした神官がいるわけではない。

 神殿というよりも昔の言葉でいう神社が近い。立派な村の運営費である。

 神社の管理はこの集落の者達が協力しておこなっている。


 さて不法投棄された道具の中には、少し手を加えればまだ使えそうなものがあったりする。

 朝顔を初めとした花や、野菜などの支柱に細い魔法杖や折れた槍の柄を使っていたのには驚いた。

 

 使わなくなったお父さんのゴルフの道具を、物干し竿代わりにするアレに見えなくもないのがおもしろい。


 あとは、たまに見かける集落の子供達が持っている昆虫やザリガニをとる用の網。


 既製品の物よりちょっとデカイなと思っていたら手作りだったことを知った。

 柄の部分は、折れた槍や松葉杖よりも長いロッドと呼ばれる壊れた魔法杖を使い、網の部分には各家の小屋にありそうなジャガイモなんかをいれる使わなくなった網か、対魔物用に防水加工されていたが大きく裂けてその効力が半分以下になったマントなどが使用されていた。


 それで昆虫よりも少し大きい虫系の魔物や泥の中に潜んでいる魔物を取っ捕まえてくるのだ。

 生まれた時からそういった魔物や動物、そして場所に触れて慣れているからか不思議とこの数日クリスは子供が大怪我をしたという話をきいていない。

 魔法がすごい、変なおっちゃんとして子供達に認定されたクリスのところへ、休日に捕った戦利品を自慢しにきたのだ。

 恐らくクリスの反応が面白かったのだろう。

 集落の大人達には珍しくもなんともない、昔から見ている戦利品達だ。

 しかし、クリスはなんの訓練も受けておらず、遊びで虫取よろしく魔物をとってきて場合によってはペットにしてしまう子供達がとても逞しく見えた。


 今日も何か見せびらかしにくるかもしれない。

 そう思ったが、すぐに考えを改める。

 熊が出たのだ。外出の注意喚起や規制も出ている。

 さすがに今日はないなと思った。



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