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冤罪スローライフ   作者: アッサムてー
田舎暮らしと子育てと
33/36

 「そういえばさ、この前ドラグノフさんの所行ったら、強盗みたいな子いたでしょ?」


 ノエルの問いにファルは売店で買った紙パックのジュースを一気に啜って、空にしてから返した。


 「ノエルが盛大に床に叩きつけた子?」


 「そう、その子。

 えっとハガネって名前だったかな?

 なんかね、聞いた話だと一時的にリューさんが里親になって預かってるんだって」


 「へぇ」


 「で、時々ドラグノフさんと一緒に畑やったりしてるんだけど、毎日いる訳じゃないみたいだし」


 「学校行ってるんじゃね?」


 「だったら、ここに転校してくるはずでしょ。

 でもそれがないし」


 「何? ひょっとして一目惚れ? 

 ノエルってああいうのがタイプなん?」


 「顔は普通に良いとは思うけど、タイプとかじゃないなぁ。

 いやね、ちょっと気になってることがあるんだよ」


 そこで、クラスの誰にも聞こえないようにノエルは声を落とした。

 そして、続ける。


 「ファルには言って無かったけど、何て言うのかな? 

 床に叩きつけた時、あの子、変な感じがしたんだよね。

 こう、人じゃないみたいな。

 どっちかっていうと他種族、オークとかオーガとかみたいな頑丈な手応えだったというか」


 (そういえば、人だった。

 みたいな変なこと言ってたっけ)


 ーーそういえば、人でしたねーー


 珍しくすっとぼけたこと言ってるなぁとは思ったのだが、正直な感想を呟いたに過ぎなかったようだ。


 「なんで、そんな気にしてんの?」


 「ひいおじいちゃんやファルみたいに、今度は手合わせしてくれないかなって」


 無理なんじゃないかなぁ、とファル思った。

 スタミナの問題で、ノエルは長時間動き回ることが苦手だ。

 本人は鍛えているのだが、中々理想にはほど遠いようだ。

 それを抜きにしても、初対面で鳩尾に一発、からの背中への大ダメージ、からの鼻から雑炊という荒業を喰らわせた人物と顔を合わせたいかというと、ファルだったら嫌だ。


 我ながらよく友達をやってるよなぁ、と思う。


 「久々に、綺羅星のリオ姉とも手合わせしたいなぁ」


 ノエルはスタミナは無いのに、何故か血の気が多いのだ。

 【綺羅星のリオ姉】というのは、毎週、週の中頃にパンや惣菜などを車で売りに来る綺羅星というお店のパートのお姉さんのことだ。

 お姉さん、と言っても歳はノエルやファル達よりも少し上の二十歳前後。

 銀色の髪と赤い瞳の、エルフにも負けない美貌の持ち主である。

 ここ数週間ほど、そういえば来ていない。

 スーパーまでは遠いし、夕飯のおかずを作ることが面倒なことだってあるので、この惣菜を買う人はそれなりにいる。


 「そういえば、最近来てないよね。

 ほんとだったら今日も来る日のはずだけど。

 あそこの菓子パンおいしいんだよねぇ」


 「私焼きそばパン派」


 ノエルがそう申告する。


 「自分は餡パンとメロンパンかな。クッキー生地が歯にくっつかなくてサクサクでおいしいんだよねー」


 「あ、わかるわかる! 他のとこのメロンパンってくっつくけどあそこのはちゃんとクッキーって感じでおいしい」


 「あー、話してたら久しぶりに食べたくなってきた」


 「案外、今日とか来るんじゃない?」


 「来てたら絶対買う。

 あそこのポテトサラダとコロッケも、お肉屋さんのみたいで好きなんだよね」

 

 「わかるわかる」


 ちなみに、いつも同じ場所で店を開いている。

 神社のすぐそばだ。

 帰りに寄ってみようと二人して決めた。


***


 夕方。

 仕事が早く終わったので、ハガネと友人の様子を見にリューは小屋に向かっていた。

 その途中、先日お礼参りをした神社のすぐそばに見慣れた車が止まっていることに気づいた。

 定期的に惣菜や菓子パンなどを売っている屋台だ。

 そこの看板娘らしき二十歳ほどの少女が、笑顔で接客をしている。

 ここ最近見ていなかったので、やめてしまったのかと思ったがそうではなかったようだ。

 リューも近くまで行って車を止め、惣菜を買おうと降りる。

 

 (コロッケでも買ってくか、おかずになるし)


 「いらっしゃいませー。あ、リューさん!」


 にぱぁっと、明るい笑顔が迎えてくれる。

 いつもは店長と二人のはずだが、今日はこの少女一人のようだ。


 「久しぶり、リオさん。見なくなったからもうここには来ないと思ってたよ」


 「皆さんから言われます。

 いろいろあって」


 苦笑しつつ、リオは商品をすすめてくる。


 「今日はなんとマスター特性のクッキーもあるんです!

 コロッケと、ポテトサラダもおすすめですよ!」


 その声に、最近クリスになついている女子高生の声が重なった。


 「あ、リオ姉だ!」


 「焼きそばパン、ありますか?」


 リオとも仲がいい、ファルとノエルである。

 リオは傾国の美女にも負けない笑顔を浮かべると、菓子パンを見せてくる。


 「あ、ファルちゃんにノエルちゃん。あるよー、ついでにマスター特製のクッキーはどう? はいこれ試食」


 リューにも試食を渡してくる。


 「ありがとう、リオ姉」


 「でもリオ姉、なんで最近きてなかったの?」


 ファルとノエルにそれぞれ問われ、頬をかきながらリオは答える。


 「んー、マスタのお店が潰れちゃって、あ、違う違うそっちの意味の潰れたじゃなくて、ちょっとガラの悪い人達に壊されちゃったんだ。

 それ直してるあいだ別のところで仕事することになって、私はその手伝いをしてたんだ」


 色々大変だったらしい。


 「本当は二週間くらいまえにはお店再開したんだけど、こっちまでこれる余力がなくて、やっと来れたってわけ」


 「大変だったな」


 リューが気遣う横で女子高生二人が、きゃっきゃっとクッキーを食べてはしゃいでいる。


 「あ、このチョコチップクッキーうまい」


 「こっちのナッツもおいしい」


 「おっさんに買ってくか!」


 「だね、お世話になってるし」


 そんな会話に、リューが割り込む。


 「お前たちまた来るのか?」


 それにノエルが返す。


 「はい! ハガネ君と手合わせしてみたくて!」


 「ハガネ君?」


 リオが奇妙そうに首をかしげる。

 しかし、だれも気に止めなかった。



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