ボクノセカイ
――ハジマリは思い出せない。オワリはまだ知らない。
ボクの世界は、灰色だった。
――ショクブツは湿った紙屑に。ドウブツは乾いた埃に。
ボクの世界から、イノチが消えた。
――傷口から零れる血潮さえ、澱んだ泥水に。
ボクは、オカシイのだろうか。
――疑っているのは、きっと正気のアカシ。
ボクは、そう信じていた。
◇
――ソトに出ると、マチを歩くと。
黒いカタマリが蠢いていた。
――彼らは地上を覆っていた。
ソレはきっと、ニンゲンだったもの。
――無機質な音の羅列。
コトバがわからない。
――ムシしていたら、彼らは怒った。
ハイイロがひびわれ、静かに崩れはじめる。
――コワカッタ。
逃げて逃げて。
――辿り着いたのはガケ。
海が見えた。
――背後にはバケモノ。行く手には一面のクロ。
もうニゲラレナイ。
――ナラバイッソ。
ボクは、飛んだ。
――オチテイッタ。
ボクは、嗤った。
――ミナモに叩きつけられた。
ウミの青とソラの蒼が、ひたすらに痛かった。
――水の中に息づく、きらきらしたおサカナ。
ちいさなヒカリが、生まれては消えた。
――紺碧の深淵。
ヌルイ闇が、カラダを包み込んだ。
――さがしていたボクノセカイ。
誰もココにいない。
ご高覧、誠にありがとうございます。