神界都市8128
人間はそれ全て神の子である。
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神界都市8128。
この世界に生きるものなら誰でも知る天才の都市。
神の子による神のための、神のためだけの都市。
――あなたは何故生きていますか?
そんな問いにはっきり答えられる人はそう多くないと思うが、この都市の人々は至極明快な答えを持っている。
――私は神のために生きています。
神は何故人間を作ったのか。
世界を壊し他種族を駆逐する彼らを作った意味は。
神の手の届かない場所。全知全能の神でさえ成し得なかったこと。
神はきっと人間にそれを求めているのだ。
この都市では工場と呼ばれるところで最適な遺伝子同士を掛け合わせ子供を作る。
そしてその子供には産声をあげた瞬間に遺伝子検査が行われ、持つとされる才能を高めるためだけに生きることが課される。
地獄――いやいや天国だ。
才能だけを伸ばせばいい。ほかの余分なことはいらない。
それに、全てが“管理”されるだけであって“統制”されるわけじゃない。
恋愛も友情も本人次第。
子供を産むことだけは許されないが、性交をすることも例え未成年であろうと二人の同意さえあれば可能だ。
全てを機械が決めてしまっては才能は育めない。
神が人間に求めていることを成すためには人間らしい自由が必要であるからだ。
そしてぼくがこの都市の管理人である。
正確には人ではない。高性能の人工知能であり人間の形をしているというだけ。
人間としては平凡な欠陥品だが、人工知能としては、こと使命を全うすることにおいてはぼくに勝る者はいないと自負している。
さあ今日も仕事だ。
この世界にはここ以外にもいくつかの都市があるらしい。
そこでどのように自治が行われているのかについてこの都市から出たことのないぼくには知りえないが、少なくともこの都市はぼく一人によって管理されている。
まあぼくがここの要ってこと。……なんて言えたら格好よかったのだが。
この都市において、人間の作りものであり神に貢献することのできないぼくの立場は低いものだ。
どれだけ低いかと言えばその辺に生えている雑草よりも低い。
しかし、都市の管理人である以上ぼくの命令はどんな天才に対しても絶対であるというちょっとした矛盾も存在する。
神界都市8128は見るもの全てを圧倒する完璧な都市だ。
地面なんて存在しないくらいに、球の形を変えてしまうくらいに。
ビルで覆われた都市は人間が作り得る最も美しい構造をしている。
この都市はほぼ完全と思われるぼくの記憶にも存在しない随分と昔から存在していて、ずっとずっと前のとある時代に最も神に近づいたと言われる天才数学者によって設計されたらしい。
そのときからこれまでに幾人かの天才数学者はもちろん天才建築家だって登場したが、この設計はいじることができないとさじを投げた。
それだけこの都市は完全なのだ。
一番高くそびえるのは一面真っ黒の艶やかな光沢を放つ神の塔。
その周りを六つの高いビルが等間隔に囲み、そしてその一つ一つにこの都市の天才中の天才と呼ばれるNo.1から6までの人間が住んでいる。
その呼び名からわかるようにNo.1が最も人外であり即ち神に近い。
いやいやNo.6だからと言って人間に近いかと言われればそれは全くで、やはり彼らは揃って人間の域を脱した天才なのだ。
そんな完璧な都市のどこかから今日も唐突なコネクションがぼくの耳をつんざく。
あぁ……これは。
めんどくさいがこのコネクションには返事をせざるを得ない。
この都市では管理人であるぼくの立場が最も低く、それ以外は神の子として基本的に平等とされる。
ただやはり、より効率的に神の力になるため優先順位みたいなものはある。
そしてこのコネクションはこの都市におけるNo.4つまり優先順位の最たるところに位置する才能の持ち主が呼んでいるというわけだ。
ぼくは鬱屈としながらもビルだらけの完璧な都市へと足を踏み出した。
お読みいただきありがとうございました。
こちらは同じ設定を利用した連載小説として続きを書いていこうと思っています。
しかし正直なところ、いつもと違う語り口や世界観で書いている私もよくわからなくなってきているのです。
そこでみなさんの意見を頂ければと思いました。
設定について、書き方について、何でもいいので意見を頂ければ嬉しいです。
よろしくお願いします。