香織:第三話 さぁ、書こう!
まだ書いていません・・・・・・。勿論、ナレーションも出ていません・・・・・・。
いや、でも、次話こそは、次話こそは必ず出ます!!
ふぅ、師匠に3ヵ月分の鬱憤も晴らしたことだし、早速小説書こうかしら。
……とはいえ、あの師匠は3ヶ月間、本当に、ホンットウに、小説のおもしろさだけ、しか教えてくれなかったからなぁ……。
ナレーションってどうやって書くの?
これは一番の問題点ね。だって書けないもん……。
いや、きっと成るようになるわ!! だって、あの師匠と3ヶ月も一緒にいたのに、私の胃には穴は開いてないのよ!!
弟子の間、ずっとずっとそれが気がかりだったのよねぇ……。
毎日毎日、あぁ、胃に穴が開いたらどうしようどうしよう、と思っていたけど、流石、私の身体ね! 無事に私の身体は健康よ!! だから、ナレーションだって大丈夫!! なんとかなるわ!! 今更ながら私の長所(短所とも言えるかもしれないけど)は楽観的なとこだ、と自分では思う。プラス思考は大切よね!
とはいえ、パソコンでどうやって文章打つのかしら……?
何もわからないけど、私は文章を打てる機能を探し始めた。って、ああ!!
ディスプレイのど真ん中に「小説仙人に、不可能はない!!」って書かれてるのがある!!
多分、これを使えばいいのかな? 早速やってみよう!!
え〜っと、ダブルクリックよね……、
カチカチッ
・・・・・・・・・起動中・・・・・・・・
お、起動できた!! さっすが私!
なんだか変な、デフォルメの仙人のかっこした爺さんのキャラクターが現れたわ。
ん? なんか話し始めてる、文字がブワッと出てきた。口もパクパク動いてるわ。
『カッカッカッカ、今宵もワシを求めて、新たな小説家志望の者が、やってきた。』
!? なにこれ!? なんか爺さんが腕組んで豪快に笑ってる!!
セリフはまだ続いている。
『よいか、決して楽をして書こう、などと思ってはいかんぞ。ワシの修行は厳しい。心して修行に臨め!!』
………何? このどっかで見たことあるようなジジイは?
『さぁ訊こう。お主の名はなんじゃ?』
何? このふざけたキャラクターは?
え? 名前書く欄が出てきたんだけど、名前を打てばいいの?
『香織』
これでいいのかな?
『ぬ? なに。ふざけるなぁぁぁ!! 名前といったらフルネームに決まっておろうが!!! 打ち直せぇい!! それとも何か? お主の名は、香 織か? 読み方がわからんわぁぁぁぁああ!!』
ムッ、なによ、このジジイ! フルネームならフルネームって言ってくれないと、分からないじゃない!!
画面の中で、ジジイが顔を真っ赤にして、地団駄を踏みながら怒っている。恐くないけどね!
とりあえず打ち直すか……。
『柏木 かお――』
ガタンッ、ガタゴトガタゴト……
わぁ!? ビックリしたぁ……、もう発車だったのね。まぁ、とりあえず打ち直したし、Enterを押すわよ。
カチッ
……って、あ。
『柏木 かおえい』
間違っちゃった……、揺れたもんねぇ。わかるかな? パソコンのキーボードの「R」の隣は「E」なのよ。「R」と「E」を間違っちゃったの。
ま、まぁいいよね! そうそう、こんなことはとんでもなく小さいことで、気にするだけ無駄無駄!!
でも、小説仙人は……?
『ほうほう、お主の名は【柏木 かおえい】か。少々変わった名前じゃな。』
お? 以外にもこだわらないのね! よかった〜!
なんだか安心して、上向いてため息吐いちゃった。ん? でもなんか視界の下らへんで赤いものが見えるような……なんだろう? ちょっと気になったから赤いものを見ようと下を向くと、……ノートパソコンの画面だった。小説仙人が怒りの炎らしきものを燃やしている。その隣でふきだしの中の文字が一気に増えていく。
『……なんぞと言うとでも思ったかーーーー!!!! いい加減にせぇ!! この、大馬鹿もんがぁぁぁあああ!!! 書き直しじゃぁ!!』
……時間差攻撃? たかがソフトのキャラクターのくせに、なんてテンションが高いの!?
もう、めんどくさいなぁ。流石にうんざりしてきたわよ。
『そんな歳で、そんなにテンション上げてたら、血圧が上がりきって死んじゃうよ?』
思い切って、意見を述べてみた。
『ふむ、【そんな歳で、そんなにテンション上げてたら、血圧が上がりきって死んじゃうよ?】 ……オオ、これはなんと……、ワシは、かれこれ1000年生きておるが、こんなに長い名前を見たのは、初めてじゃ!!』
え!? それ、名前だって認めちゃうの!?
『ワシは今、猛烈に感動しているぞ!!! ……などと、言うとでも思ったかーーー!! 名前の中に「、」や「?」が出てくるわけがなかろう!! 何だこれは? これは、もしや心配してくれているのか!?? それはどうも有り難う!!!! じゃが、今まさにお主のせいで死にそうじゃーーーー!!!! 書き直し!!』
やるわね、たかがソフトのキャラクター、されどソフトのキャラクター……。まさか、ノリツッコミをやるなんて……、しかも律儀にお礼まで言うなんて……。しかも、今のジジイの後ろには、噴火しそうな火山がある。まだ噴火前なんだね。
『いえいえ、ご老体の心配をするのは、人として当然ですから。』
とりあえず、返事書かないとね。
『・・・・・・』
ん? おかしいなぁ、返事がないや。しかも、向こう向いて座ってるし……。
よし、もう一回クリックよ!
カチッ
『……フッ、何度クリックしても同じことじゃぞ。ワシはもう、意地でもお主にツッコまん!!!』
あ〜あ、いじけちゃった……。ボケたつもりはないんだけどなぁ。しょうがない、真面目に書いてあげるか。
『柏木 香織』
よし、Enter!
『フン! どうせ、また変なのなんじゃろ? 絶対に見るものか!! 全く、全く気になったりは……、しないが、折角お主が一生懸命打ったんじゃ。しょうがないから見てやるとするか……。』
うわ、仙人の顔が平静を装おうとしてるんだけど、好奇心に満ち溢れた顔が隠しきれてない! すごく気になってたんだね……、わかりやすっ
『なになに? 【柏木 香織】 柏木 香織? なんじゃ、この文は!? 意味がわからない! ワシは、……ワシは一体なんとツッコンだらいいのじゃ!? ……って、名前じゃないかぁぁぁああ!!!』
な、なんで? なんでお望み通りフルネームを教えたのに驚かれるの?
ジジイの顔は、今驚いて飛び出ている。わっかりやすいリアクションね!
『……コホン、【柏木 香織】よくぞワシのもとへ来たな。歓迎するぞ。このソフトでは、小説を書ける。そして、あらゆる賞へ応募も出来るのじゃ。では、健闘を祈る。何か困ったことがあれば、右クリックして、【仙人に聞きたいことがある】というアイコンを押すんじゃぞ。 では、さらばじゃ!!』
そう言って、仙人は消え去った。代わりに、文章が書ける画面が現れた。あんなにテンション高かったのに、消えるときはあっさりしてるのね。
ま、それは良いとして……、さて、張り切って書こうじゃない!!
どうでしたでしょうか?
お読みいただき有り難うございます。
あの、私の笑いのツボが果たしてどれほどずれているのかどうか、是非知りたいので、お読みいただいた方、どうか、ここが面白い、やここが面白くない、というのを教えてください!
お願いします!!!!