冬の女王と三人の少年
簡素なあばら家の中。みすぼらしい風貌の男3人は円陣を組むように座っている。
「しかし、厄介なことになったものだな……」
彼らの中の一人が呟く。その男は眼帯をしていた。暗号名をアリスといった。この集団のリーダー的な立場だ。
「だがやるしかない。だろ?」
もう一人が答える。身長が極端に低い、杖を持った男だ。彼の暗号名はカーター。
「もちろんだぜ! この国の危機を救えるのは、俺達をおいてほかにはないぜ!」
金髪碧眼の美少年が息巻く。彼の名は賢治。
三人は目を合わせ、何かを理解したかのように頷くと家を出た。
--------
数分後、三人は塔の前に立っていた。ここに冬を司る女王。ゴジュンウィがいる。その顔は見ただけで生理的嫌悪を催すほど醜く、美しくなるために何人もの罪のない人間の魂を簒奪してきたともっぱらの噂だ。世のため人のため、じゃあくな存在である女王をナントカしなくてはならない。
「いくぞ!」
アリスが声を荒げ、扉を蹴破る。
塔の中には異形の魔物が巣食っていた。人間を冒涜するかのような造形の生物ばかりだ。手が30本生えた人間。首を挿げ替えられた双子。人間の骨でできたゾンビ。
涙を流しながら全員を倒し、ゴジュンウィのいる部屋にまでたどり着いた。ここに辿り着けたのは賢治だけだった。アリスとカーターは真名を看破され、地獄に落ちた。
「出て来い!」
叫び、ドアをぶち破る。するとそこにはゴジュンウィが!
「うおおおお! お前を生け捕りにした報奨金で一生遊んで暮らしてやるんだあああ!」
賢治は冬の女王に挑みかかる。彼の武器はチャクラムとトンファーだ。かつては隣国最強の格闘家として名をはせていた。
「甘いわよ……」
ゴジュンウィは微笑を浮かべながら賢治の攻撃をすべていなす。いや、それだけではない! 賢治の身体と武器が少しずつではあるが凍っていく。そのせいで動きが鈍くなっているのだ。
「こりゃちょっと不味いぜ……」
「お前は終わりだわよ」
「うっせえ黙れ」
賢治は煽られるほど強くなるのだ! トンファーとチャクラムを捨て、拳で殴りつける。
「グッグオオエエ!」
ゴジュンウィが吹き飛ぶ。塔の壁面にクモの巣状の亀裂が走る。賢治は追撃にかかる。
(待て!)
(止めろ! 賢治! お前の本分を思い出せ!)
賢治は地獄に落ちた仲間達の声を聞こえた! 正気に戻る!
「お前は季節がめぐるのを妨げた。懲罰房行きだぜ!」
「すいません……」
賢治は冬の女王をぐるぐる巻きに縛り付け、塔を出た。
そして、賢治は今回の報酬で楽しく暮らしましたとさ。めでたしめでたし。