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「初めまして。俺は   の兄だ。この前は妹が迷惑を掛けたようで、済まなかったな」

 翌日、村長と何人かの男達に連れられ、村の奥にある屋敷に連れていかれた。すると、そこには昨日の彼女と、彼女と同じ髪と瞳を持つ少年がいた。

 もしそんなこと思っているのなら、彼女に嘘を吐くはずがない。

「にいさまがやまにきれいなはなばたけがあるって、いったのよ」

 だから、わたしがみにいこうとしたんだもん、と彼女は不満そうに言ってくる。

「あの山に花畑があったら、綺麗だろうな、と言っただけだ」

「にいさまのばか!!」

 彼女はそっぽを向く。どうやら、この二人は喧嘩をよくしているようである。だからと言って、兄妹仲が悪いと言うわけではないだろう。この少年は妹が可愛くて、虐めてしまうのだろう。

「俺のお陰で、王子様に出会えたんだから、感謝して欲しいものだ」

「にいさま!!」

 彼女は顔を真っ赤にして、少年をぽかぽか叩く。

「王子様?何のことですか?」

 あの山に、王子様なんていたか?ここら辺に、この国の王子様など来るはずがない。

「王子様は白馬の王子様さ。自分を助けてくれる運命の人のことだそうだ。ぶっちゃけた話、こいつの一目惚れさ」

 こいつ、執念深いから、気を付けろよ、と彼はウインクしてくる。運命の人?誰がだ?俺がきょとんとしていると、彼女は俺を睨んでくる。え?まさか、俺?

 思いもしない、その少年のカミングアウトに、俺は何も言うことができなかった。


「………何か面白いことしているね」

 鏡の中の支配者(スローネ)が乱闘の模様を立体映像として出現させていると、アルが入ってきて、その映像を見る。

「黒犬、ちゃんと来たみたいだね」

「そうだな。それより、身体の方は大丈夫なのか?」

 こいつはこの前、“時”の力を何回も使っていた。その上、世界の時間まで止める荒業までしでかした。あの時は黒犬の機転のお陰で助かったが、今頃、天に召されていたかもしれない。

「今のところは。それより、いい匂いするね」

 彼はそう言って、机の上にあるケーキを見つける。

「ケーキだ!!食べていい?」

「ああ」

 もともと、これはお前のリクエストだろう、と思いながら、許可すると、

再生人形リバースドールも一緒に食べない?」

 アルは近くにいた再生人形リバースドールにケーキを勧める。

「いいのですか?」

 彼女は俺を見る。別に、ダメな理由はない。

「構わない」

 俺がそう言うと、あの二人はケーキを切り分け始める。

聖焔セラフィムの料理は美味しいよね。お菓子は黒犬の方が美味しいけど」

「確かにそうですね。黒犬のお菓子はあの子から戴きますが、プロ顔負けの味です」

 二人でお菓子評論を始める。俺はそれほどお菓子を作らないのだから、そこまで上手くなくてもおかしくない。

「あの三人は何をしているんですか!!黒犬君にあっさり抜かれて」

 鏡の中の支配者(スローネ)は画面に向かって、そんなことを叫ぶ。

 おそらく、黒犬にコンビネーションの悪さを狙われたのだろう。執行者は基本的に個人活動が多い。集団戦はあまり向かない。コンビネーションが悪くても文句は言えない。だが、連携プレイの訓練をさせるべきかもしれない。ここまで、あっさりやられてしまっては意味がない。

「………先が思いやられるな」

 風精はとにかく、あの二人は次世代を担う存在だ。もうちょっと粘って欲しかった。

「あの三人は後でお仕置きしますか?」

 冷酷な聖女はそんなことを言ってくる。

「その必要はない。これはレクエーションだ。あれも愛嬌と思えば、可愛いものだ」

 これは何の任務でもない。俺の趣味。だからこそ、俺は強制しなかったし、命令も出していない。あの二人はとにかく、風精までお仕置きされたら、たまったものではないだろう。

「そうですか」

 彼女は残念そうに手に持っていた鞭を引っ込める。どうやら、彼女はその鞭で、彼らを叩きたかったらしい。こんなことで、お仕置きを受けるのは流石に可哀想だ。

 ああ言った戦い方をする奴もいると分かっただけでも収穫になっただろう。それにしても、まさか、奴があの刀を貸すとはな。まあ、あの刀は特殊なものだから、黒犬でも安心して扱えるが。

 そんなことを思っていると、扉が吹き飛ぶ。おそらく、黒犬の魔法だろう。それにしても、普通、人の部屋にぶつけるものか?

「黒犬君はとんでもないことしますね」

 魔法を解けば、元通りですが、と鏡の中の支配者(スローネ)が言う。

「そうだな」

 まあ、俺達が吹っ掛けたのだから、これくらいされても文句は言えないが。


***

―空の上って、案外気持ちいいね―

 スノウの呑気な声が聴こえてくる。お前は呑気でいいな。精霊だから、暑さ寒さを感じないのか?俺は今にも凍えそうだと言うのに。

「アオちゃんの彼氏、もう少し我慢しな。もう少しでコンビクトの真上だ。できるだけ、教会の近くに落とすようには善処するが、変な所に落ちても文句言わないでくれよ」

 彼女の叫ぶ声が聞こえてくる。変なところ?それはどう言うところだ?

―池の中とか、屋根の上とかじゃない?―

 スノウはそんなことを言ってくる。屋根の上はとにかく、池の中だけはやめて欲しい。

「私の合図で飛び降りな」

 俺は彼女の言葉に無言で頷く。

「……スリー、ツー、ワン、ゴー!!」

 俺は彼女の合図とともに、下へと飛び降りる。だが、俺。何か忘れていないか?俺、無事に着地できる魔法も、運動神経もない!!

 彼女の合図で飛び降りちゃったが、俺、そのまま落下すると、誤って床に落ちてしまったトマトと同じ運命にならないか!?

―………君、それに今気付いたの?―

 スノウの呆れる声が聴こえてくる。気付いていたなら、飛び降りる前に言え!!お前は契約者様が自殺していいのか!?

―まあ、君に死なれると、面白みがなくなるから、助けてあげるとしようかな―

 ボクの胴体に捕まって、とスノウは言う。俺は言われるまま、スノウの身体にしがみつく。すると、スノウは大きい耳をもっと大きくする。なるほど、これで落下速度を落とすのか。パラシュートと同じ原理か。スノウ、偉いぞ。大きい耳はただの飾りじゃなかったんだな。

―ボクを見直した?―

 スノウはそんなことを言ってくる。今だけは見直した。流石、俺の相棒だ。安心しながら、俺は下を見る。すると、教会の立派すぎる屋根が真下にある。ちょっと待て。このまま降りると、屋根の上に着陸をする。

「スノウ、このままだと、屋根に着陸する。もう少し調節して、地面に着陸しろ」

 俺はそう叫ぶが、

―調節?どうやってするの?―

 スノウはそんなことを言ってくる。やっぱり、その耳は飾りか!?そうこうしているうちに、屋根に不時着してしまう。すると、教会を囲うように、僧兵と思われる人達が集まる。奇襲作戦のはずなのに、囲まれてしまっては意味がないだろ!!

―ああ、やっぱりこうなっちゃうんだね―

 スノウは他人事のように言ってくる。これもお前の不手際のせいだろうが!!傍観者のように言うな!!このまま、ここにいても仕方がない。俺は魔法陣を展開し、空間転移する。

 そして、俺は僧兵達の後ろを取り、蹴りを入れる。そして、素早く魔法陣を展開し、突風を起こす。一々相手にしているほど時間と魔力がない。

 俺は彼らの隙を掻い潜って、教会の入り口まで走る。すると、彼らは俺を追いかけてくる。何で、そこまで執拗に追いかけるの!?

―黒犬って、愛されているね―

 スノウはそんな光景を見て、そんなことを言ってくる。俺は彼らに愛されるようなことした覚えはない。

 早い話、速度強化魔法で、彼らを撒けばいい話だ。ここの僧兵は実力あると思うが、突出した化け物ではないはずだ。俺が念頭にいれなければならないのは執行者。盛大な出迎えをしてくれたのだから、執行者が出てこないはずがない。アルは非戦闘員なので、出てこない。聖焔セラフィムはラスボスなので、最初から出てこない。再生人形リバースドールは滅多なことでは出てこないので、そっちも放って置こう。問題は第二位から第六位の方々だ。第二位の方はどんな方か知らないし、第五位は空席らしいが、その他は顔見知りだ。俺の顔を立てて、出てこないと言うことはないだろうな。特に、帝王キュリオテテス。青い鳥の妄言で、俺を磔にしようとしていた。

 まともに戦ったら、俺は負ける。と言うか、彼らが集団で来られたら、終わる。

「そう言えば、スノウ、自然の力を使うって言う裏技はここでも使えるか?」

 あれが使えれば、相当楽だ。

―無理だろうね。この領域は鏡の中の支配者になっているから。まあ、君の魔法で書き替えたら、可能だと思うよ―

 そうだよなって、あの魔法下だったら、使えるのか?なんで、早くそれを言わなかった?

―だって、訊いてこなかったから―

 なるほど、訊かなければ、答えないのか。酷い奴だ。親切な奴だったら、便利ツールは教えてくれるものだろ。

―そんなこと言われてもねえ。言う必要もなかったのもあるよ。だって、君、知ってか知らず、彼らの力を借りていたしね―

 あれはそう言う魔法だから。いや、待て。もしかしたら、あの魔法は自分のフィールドに創造している。だからこそ、自然の力を借りるのと同じことができる。そういうことか。

―それに、アレはそれ以外のところでやると、かなり危険だしね。あそこや君の魔法の中では彼らが君を好いてくれるから、無償で助けてくれるけど、それ以外のところでやると、危険なんだよ?無理矢理、彼らを従わせようとすると、君の魂が耐えきれずに飛散と言うこともあり得るし―

 だから、状況を判断して、使うことを勧めるよ、と彼は言う。スノウの言う通りなら、慎重に使うべきだな。あの魔法は体に負担がかかるので、ラスボス戦に取っておきたい。そうすると、やはり普通の魔法で戦って行くしかないのか。

「まあ、それは諦めるにしろ。聖焔セラフィムが何処にいるか、分かるか?」

 スノウは聖焔と面識があるそうなので、魔力察知くらいは可能だろう。

―うん。それくらいなら、できるよ―

 スノウナビの下、進んで行けば、聖焔セラフィムがいる。

―聖堂の右の扉の方だね―

 俺は聖堂を見回すと、右の方に扉がある。一度来たことがあるが、無駄に大きくて、立派な建物だ。まあ、ここが教会の本部と考えれば、納得できる。だが、この国は宗教より、魔法が浸透している。そんな国で宗教活動して、信者は集まるものだろうか?

 そんなこと思っていると、右の扉から出てくる人影がある。その人影は一気に俺との距離を縮め、俺の懐に入る。とっさに、親父から借りた刀で、彼の剣を止める。その剣は殺戮王(先代のキュリオテテス)さんが住んでいる剣じゃありませんか?

「帝王さん、その剣、貴方のお師匠様が眠ってらっしゃる剣じゃありませんか?」

 この前、その剣の精霊をし始めた殺戮王によって、彼の身体が奪われたのは記憶に新しい。

「だから、何や?」

 彼は興味なさそうに言ってくる。いやいや、また出てきたら、どうするんですか?

―ほう。これは奴が使っていた剣だな―

 そんなことを思っていると、剣の精霊さんこと、殺戮王(世界レベルの性犯罪者とも言う)がそんなことを言ってくる。ちょっと、帝王キュリオテテスさん、殺戮王(先代のキュリオテテス)さん、ばっちし起きていますよ!?

「それより、珍しい得物を持ってんな。刀やないか?東方の出身の奴らが好んで使うって聞いたことあんな。あんた、大剣はポキポキ折れるから、刀に変えたんか?」

 あんたが持っていたら、どれも同じやと思うけど、と彼は言う。悪かったですね。どうせ、俺の剣の腕はへなちょこですよ!!

「親父からの借り物だ。だから、手加減して下さい」

 返せと言われたので、折ったら、怒られてしまうかもしれない。まあ、あの親父が怒るところなど見たことがないが。

「それは無理な話やな。あんたを抹殺して、邪魔者を減らす」

 ですよね。貴方の青い鳥を思う気持ちは凄いですよ。恋は盲目と言うが、彼の場合、盲目すぎると思う。

 周りを見てみると、今まで追いかけてきた僧兵達は手を出してこない。まあ、味方とは言え、あんな恐ろしい人達の近くに行きたくないのだろう。味方でさえそうならば、敵である俺は彼から一刻も早く抜け出したい。スノウ。

―はいはい―

 俺は魔法陣を展開する。すると、頭痛が襲うが、一瞬、帝王キュリオテテスの動きが止まる。しめた。やはり、彼は凄い剣士だが、魔法耐性は高くないようだ。

 彼が魔法に嵌まっている間に、お暇させて貰おう。俺は右の扉へ向かおうとすると、そこから雷が直線に走る。やはり、敵は帝王だけではないのか。俺はとっさに避けると、俺の後ろにいた帝王キュリオテテスに当たる。まさか、あの雷は俺ではなく、帝王キュリオテテスに当てる為か。

「うげ。誰や!?オレに雷を当てたのは!?」

 魔法から解き放たれた帝王キュリオテテスはそう叫ぶ。

「………感謝して貰いたいものだ。そのまま、魔法の中にいたかったのなら、そのままにしておいても良かったが?」

 金色の髪をなびかせて、断罪天使エクソシアが現れる。その後ろにはカニスもいる。ちょっと待て。断罪天使エクソシアはとにかく、なんであんたが出てくる?関係ないだろ?俺に何の恨みがある?……って、あったな。カニスと帝王キュリオテテスの恐怖の鬼ごっことか、青い鳥の件とか。

 とにかく、あんな化け物共三体同時に戦え、と。冗談じゃない!?俺は間違いなく死ぬ。

断罪天使キュリオテテス!?魔法って、何のことや?」

「………お前はさっき、黒犬の幻術魔法にかかっていた。黒犬は魔法使いだ。魔法を使ってくるのは当たり前だ」

 断罪天使キュリオテテスは呆れた様子で言う。凄腕剣士と凄腕戦士と凄腕魔法使いの組み合わせって、ありですか!?

 こんなことなら、青い鳥を連れてくれば良かった。いいや、これはあいつの為だ。俺一人でやらなければならない。

「………黒犬、お前には恨みがあるわけではないが、ここで手加減すると、鏡の中の支配者(キュリオテテス)に何を言われるか分かったものじゃない。本気で闘わせてもらう」

 彼はそう言って、雷を放つ。俺はどうにか避ける。恨みがないのなら、下がっていて下さい!!

「お前の力見せて貰う」

 カニスはそう言って、剣を手にして、俺の懐に入り、近づく。それをやっとのことで、刀で防ぐが、

「あんたら、下がってろや!!黒犬は俺の獲物や!!」

 帝王キュリオテテスはそう言って、斬りかかってくる。俺はとっさに避けると、その剣は近くにいたカニスにも当たりそうになる。

帝王キュリオテテス、何をする!?」

 孤高の狼王は非難がましく帝王キュリオテテスを見る。

「それはこっちの台詞や。あんたは下がってろや」

 帝王キュリオテテスはそう言い返す。ん?待てよ。

「………お前ら、避けろ」

 断罪天使エクソシアはそう言って、俺に向かって、雷を放つ。すると、帝王キュリオテテスやカニスはどうにか避ける。

断罪天使エクソシア、邪魔するんやない」

「危なかった」

 帝王キュリオテテスとカニスの声が聞こえる。やはり、彼らは協力して戦うと言うことに慣れていないのか。彼らは強い。いや、強すぎるから、一人で仕事をこなすことが多い。だからこそ、集団戦のコンビネーションが上手くとれない。俺は青い鳥とコンビを組んでいるので、ある程度のコンビネーションプレイはできる。だから、コンビネーションについて、何も考えてこなかったが、あれは長年積み重ねて、培って行くものなのかもしれない。だからこそ、彼らは全然息が合っていない。

 これは勝機がある。

「うおおおお」

 俺は帝王キュリオテテスに向かって、刀を振り下ろす。

「うわっと」

 彼は持ち前の反射神経でそれを受け止める。それは予測できる。すると、カニスは斬りつけようとしている。よし。俺は上手く刀で流し、カニスの剣が帝王キュリオテテスに向くようにする。

「自滅してろ!!」

 俺はそう叫び、断罪天使エクソシアがいる方に向かう。すると、断罪天使エクソシアはやはり雷を放つ。それを俺はどうにか避ける。すると、後ろにいる帝王キュリオテテスたちにその雷が当たる。

「………しまった」

 断罪天使エクソシアは焦りを見せる。この三人は化け物だが、集団戦には向かない。俺は炎の魔法を展開すると、断罪天使は応戦するかのように雷を放つ。すると、激突により、白煙が生じる。

 俺は断罪天使エクソシアの横を抜ける。そのまま、俺は扉の中に入る。俺は魔法陣を展開して、強化速度魔法を足に施す。どうにか抜け出したが、これで追いかけられて、捕まったら、意味がない。これ以上、付き合ってやるつもりはない。

「スノウ、聖焔セラフィムは何処だ?」

―このまま真っ直ぐ行って、突き当たりを右―

 俺はスノウの言う通りに突き当たりを右に曲がる。

「黒犬、逃がさへんで!!」

「黒犬、逃がすか!!」

「黒犬、待て!!」

 あの三人が追いかけてくる。早く聖焔さんのいるところに辿り着かなければ、あの化け物に捕まる。

「スノウ、聖焔セラフィムのいるところはまだか!?」

 あの三人、何であそこまで速く走れるんだ?断罪天使エクソシアは速度強化魔法を掛けていると思うし、カニスは風精さんなので、風の力を操れる。だけど、帝王キュリオテテスは……?もしかして、素の速さ?化け物ですか?あの人?

―あともう少し。突き当りにあるあの部屋―

 スノウはそんなことを叫ぶ。突き当りの部屋?あそこか!!俺は魔法陣を展開し、火の玉をその扉にぶつける。すると、その扉は吹き飛ぶ。これで、ゴールだ。

「………聖焔セラフィム!!やっと見つけた………ぞ?」

 俺は聖焔がいる部屋に辿り着いたわけだが、

「思ったより早く着きましたね」

 ソファーに寛いでいる藍色の髪の青年・鏡の中の支配者(スローネ)がくつろいでおり、

「10分で辿り着けられるとは、僧兵や執行者達もまだ詰めが甘いですね」

 紫色の髪の女性が懐中時計を見ながら、そんなことを言ってくる。おそらく、彼女が第2位なのだろう。

 この二人はまだいい。俺が仰天したのは残りだ。

「黒犬、お久しぶりですね」

 再生人形リバースドールがニコニコとケーキを食べており、

「やあ、黒犬。やっぱり遊びに来てくれたんだ」

 プラチナブロンドの髪を持つアルがそんなことを言ってくる。

「ここまで辿り着くのに、疲れたでしょ?ケーキを食べるといいよ。聖焔セラフィムの料理、結構美味しいんだよ」

 アルはケーキを勧めてくる。この際、ケーキが美味しいのはどうでもいい。それより、聖焔セラフィムと言わなかったか?

 俺は彼らと一緒に和んでいる人物を見る。赤い髪に、青い瞳を持つ見覚えのある男性。見覚えがあるに決まっている。東陣共和国の本屋で偶然出会った人物。いや、違う。偶然のはずがない。必然だった。

 そして、幼い青い鳥と一緒に現れた人物。今まで思いだせなかった人物が鮮明に蘇る。

「………貴方が聖焔セラフィムだったんですか?」

 そして、彼が青い鳥の本当の父親。すると、彼は俺の方を向く。

「お久しぶりだな。そう言えば、二回とも名前を名乗らなかったな」

 彼は紡ぐ。俺の欲していたピースを。

「俺は聖焔セラフィム。執行者のトップを務めているものだ」

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