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天蓬元帥の称号!?


捲簾に連れられて来た場所は?


そこは武神と武神が競い合う闘技場だった。



ここは天界の闘技場…


天界の神々が見守る中、天を護りし武神達が腕を競い合い、己を高めるために行われていた武闘祭。



そして遮那が観戦する中、この武闘祭の最大の名勝負と噂されていた釈迦如来の弟子である金蝉子と観世音菩薩の弟子のモクタの戦いが始まったのだ。


両尖端に刃のある矛を手にモクタが構える。


モクタ「自然体でいて全く隙がない…だが、攻めねばなるまいな!」


先に動いたのはモクタであった。立派に装飾された矛を巧に扱い、連続で金蝉子に突き出していく。だが、金蝉子は全て紙一重で躱していた…


全く無駄のない動き!


残像を僅かに残しつつフェイントを繰り返しながら躱す動きは、守りながらも攻め手から攻撃のペースを奪っていた。


その優雅かつ華麗な動きは、見る者の目を釘付けにした。


審判を任されている二郎真君でさえ、その動きを間近で見て驚きを隠せないでいた程。


二郎真君「完璧な動きだ…俺でも手こずりそうだな?どうするモクタよ?」



するとモクタは攻撃を一旦止めて、金蝉子から距離を取りながら体勢を整える。



モクタ「あの者、本気じゃないな?見くびられたか?なら、そろそろお前の本気を見せて貰おうか!」



モクタは矛を前に突き出して両手で握ると、気合いをこめて己の気を高める。



モクタ『我が力の源たる自然の息吹よ!疾風の刃と化して目の前の敵を切り裂け!』


モクタの周りから『風』の神気が高まり、その気が矛に集まっていく。


『烈風砕牙!』


※レップウサイガ!



カマイタチと化した無数の疾風の刃が金蝉子へと放たれる。


金蝉子「ほぉ~?」


金蝉子は平然とカマイタチを躱していく。すると一瞬で間合いを詰めて目前にまでモクタが迫っていたのだ。


金蝉子『チッ!!』


油断していた金蝉子に近距離からモクタの技が炸裂した。


『烈流水砕牙!』


※レツリュウスイサイガ


それは先程の『風』の気とは違い、『水』の気であった。その水の神気は凝縮し鋭い牙のように金蝉子の目の前で上下から襲って来たのである。


金蝉子『神歩』


牙が閉じるより先に金蝉子はその場から消えて、離れた位置へと瞬間移動する。が、それを見越して先回りしたモクタが追撃して来たのである。



金蝉子「しつこい奴だ!なら、これでも喰らいな?」


金蝉子の周りから何かが音を立てて浮かび上がる。


モクタ「宝輪か!」



宝輪とは車輪の形をした武器で、円盤投げのように投げるインドの武器である。

宝輪が凄まじい勢いで回転しながらモクタへと向かっていく。モクタは急転回しながら宝輪を躱し右方へと移動するが、宝輪はモクタを追尾して来る。



モクタ「クッ!」


宝輪はモクタの躱す方躱す方へと先回りし、次第に逃げ道を塞ぎ始めた。



モクタ「ならば!向かって来る宝輪を全て止めるまで!」


『我、求むは自然の息吹!大地の力よ!我にその力を貸し与えたまえ!』



『満陽樹』

※マンヨウジュ



モクタは素早く両手を地面[闘技場の床]に突き刺すと、そこから音を立てて盛り上がっていく?そしてそこから巨大な植物の根と蔓[つる]が現れたのだ!


根は宝輪の動きを止め、その蔓は金蝉子の身体に巻き付き、その動きを拘束させたのである。



金蝉子「ウグググ…」


身動き出来ない金蝉子を見て、二郎真君は…


(勝負ついたようだな?モクタ…あいつの属性は風でも水でもないな?地属性か?しかも、素晴らしく自然に愛されている。地属性は他の属性と違いこの世界に愛されてこそ力を発揮する特殊な力だからな!)



二郎真君がモクタの勝利と勝敗を決めようとした時だった。



金蝉子「まったく…めんどくせぇ~!俺を束縛するのは釈迦の野郎だけで足りてるんだ!これ以上誰かに束縛されるなんて、真っ平ごめんだぜぇ!」



同時に金蝉子の身体が神々しく輝き出したのだ!同時に凄まじい神気が噴き出して拘束していた蔓をぶち切ったのである。


金蝉子はモクタを指差して、見下ろしながら…



金蝉子『さぁ!今度こそ俺の前にひざまずけ!』



会場が更に沸き上がる。


その後の試合は壮絶だった。誰の記憶にも残る名勝負であったと言っても過言でもないだろう。


怯まずに攻めのモクタに対し、何処までも余裕を噛ましていた金蝉子も次第に熱くなっていく。


最後はモクタの手刀と金蝉子の掌打の攻防という肉弾戦の中、辛うじて金蝉子の放った掌打が偶然モクタの手刀を打ち落とし、そのまま顔面にヒットする。


モクタはそれでも立ち上がろうとしたが、足にきて戦える状態でないと二郎真君が判断し、決着が着いたのだった。



だが、遺恨は残る二人…




金蝉子「フン!最後まで奥の手を見せなかったな?挑発しても隠し通したのは観世音菩薩が俺の師である釈迦の弟子なのが理由か?最初から本気を出さない勝負なんてつまらん!」



モクタ「強い…多分、奥の手を出していても勝てたかどうか…そもそも奥の手は禁じ手…このような立会いの場所では使えない…」



『いずれ再び相見えよう…』




そんな因縁を残しつつ、武闘会は幕をおろしたのだった。


遮那は二人の戦いを見終えた後、放心状態であった。それだけ満足の出来る試合だったのだ。


そこに捲簾がやって来た。


捲簾「シャナ~!」


遮那「はぅ~?捲~簾~らか~?」



捲簾「アハハ…シャナ!貴方、顔が変ですね?」


シャナ「うるさいら!祭も終わったらし、もう帰るらか?」


捲簾「何を言っているのですか?遮那を連れて来たのには他に理由があるからなのですから~」


遮那「なんら?」


捲簾「ふふふ~明日を楽しみにしてくださいね?そして忙しくなりますよ~」



遮那「??」



そして、その日がやって来たのである。


遮那は捲簾が用意した身奇麗な衣装を纏っていた。


遮那「なんらよ~?こんなテカテカした格好嫌らよ~」


捲簾「何を言ってるのです?これから行く場所に普段の格好で行ったら追い出されてしまいますから!似合ってますよ?うん。可愛いです!」


ハグをしてくる捲簾の顔を押し返しながら、


遮那「ウゲェ~気持ち悪いらよ~」


捲簾「そんな嫌そうな顔をしないで~もう!はいはい!かっこよく見えますよ?」


遮那「ナヌ?オラはかっこよく見えるらか?」



遮那は鏡に映る自分を見ながらポーズを決めてニヤけていた。


捲簾「さてと、それじゃあ行きますかね~」



二人がやって来た場所は天界でも最高層にある須弥山にある宮殿。


そこには天界の神々が怱々たる面子で集っていたのである。


中にはあの英雄神である二郎真君や楊善に、闘技場に参加したナタクの姿もあった。


遮那は意味も解らないまま、その場にいた。



遮那「退屈らぁ~」


今、そこでは式典として世界の秩序に貢献した武神達に、様々な名誉なる称号を授与していたのである。



遮那「オラには関係ないらなぁ~早く帰って飯を食いたいらなぁ~」



と欠伸をしていたその時!


『異界の少年神・遮那よ!前に参れ!』



突然、遮那の名が呼ばれたのだ?


遮那「なっ?なんれオラの名前が??」



『早く来るが良い!』


意味が解らずアタフタと前に出た遮那の前には、称号を与える者として捲簾が立っていたのだ。



遮那「捲簾?どういう事ら?どうしてオラが?」


捲簾「遮那!聞きなさい?」


捲簾の真面目な顔付きに遮那も気が引き締まる。



捲簾「今日は貴方にこの土地での役目を与えます!心してお聞きしなさい」


遮那「役目らか?面倒な事は嫌らよ!」


捲簾「これは貴方にとっての責任であり、決められた運命なのです…」


遮那「何を言ってるらか?」


捲簾「何でもありません。貴方に今から称号を与えます!心して受け取りなさい?」


遮那「オラに称号らか?」


捲簾「貴方に与えるのは『天蓬元帥』の称号!」


遮那「天蓬元帥!?」


捲簾「そう。今より貴方は八代目天蓬元帥・遮那と名乗りなさい!良いですね?」


遮那「何か少しカッコイイらな~!ん?天蓬元帥?そういえば聞いた事あるような…」


捲簾「そうです!以前、貴方が戦い破った相手の称号です!」


遮那「ハッ!」



遮那は思い出していた。この地に来て初めて自分に傷を負わせ、何度も何度も向かってきた男を!



(確か、あいつも…)



捲簾「そうです。七代目天蓬元帥の大玄殿です」



『天蓬元帥とは、如何なる敵にも背中を見せてはいけない!誰よりも先に先陣に立ち、武神を先導し負けず敗れずの誓いの下、元帥の称号を与えうる者のみ託された名誉ある称号なのです』



遮那「……!!」



遮那「…オラ…あいつを殺したらよ?…そんな資格ないらよ…オラには重過ぎるらよ…」


捲簾「この称号は強さの証!あの日、貴方が大玄殿に勝った時に、貴方にはその証を得る権利が出来たのです。しかし、貴方は他界の者…」


遮那「む…無理ら!別にオラが負けるとかではなくて、そんなん周りが認めないらよ!」


捲簾「だからこそ、その称号を得るのですよ?貴方には責任がある!多くの武神を殺めた事への償い。その失った者達のためにも貴方は称号を得て、戦い続けなければならないのです!一人でも弱き者達をその手で守らなければならないのです!そして、認めて貰うのですよ?貴方が天蓬元帥に相応しいと!」



それは重圧に似た重い責任であった。



遮那「……オラに出来るらか?」


捲簾「貴方なら出来ますよ?私はずっと貴方を見て来ましたからね?」



自分の頭を撫でる捲簾に遮那は涙ぐむ。



(捲簾の奴はいつもこうら…何か褒めたり、応援する時には必ずオラの頭を撫でる…何かこちょばゆいらよ…らけど…オラは…)



遮那「その天蓬元帥の称号!オラが責任持って任されるら!」



その様子を見ていた神々は複雑な心境であった。



楊善「二郎真君?周りの雰囲気に気付いてます?」


二郎真君「もちろんだ。あの少年、これから大変だぞ?この敵意剥き出しに反感を抱く神々を認めさせなければならないのだからな…」


楊善「本当に…でも、きっと大丈夫ですよ~」


ナタク「?」


揚善「何故なら彼には捲簾がついていますからね!」


二郎真君「そうだな…」


楊善「あれ?心配しているのですか?まさか、ナタク君から遮那君に乗り換えるつもりだったのですか?」


二郎真君「馬鹿者!こいつ[ナタク]には、まだ遊べる価値がある!まだまだ飽きないぞ!俺は!アハハハハ!」


ナタク「あ~早く殴りたい」



二郎真君は捲簾と遮那の姿を見ながら、



二郎真君「本当にこれからが大変だぞ?頑張れとしか言えんが、捲簾!遮那!後はお前達次第だ!」




そして重苦しい空気と僅かな支援の下、遮那は『天蓬元帥』の称号を与えられたのだった。


次回予告


天蓬元帥の称号の称号を得た遮那の生活は変わった。


かつての罪を背負い、茨の道を歩み始める!

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