遮那と捲簾の邂逅再び!捲簾の正体!?
二郎神君の助けもあり、遮那は天上界の頂上を目指す!
そこには、最高神が住まう忉利天が存在するのだ。
天界は今、戦場と化していた!異国の魔神の反乱に中央神殿への襲来!
その者はたった一人で数万の武神兵を押し退け、英雄神である顕聖二郎真君をも撃退したのだ。
中央神殿に向かって黒い暗雲が向かって来る。
それは魔神闘気に包まれた遮那の姿。
それは黒い弾丸の如く一直線に中央神殿へと突き進む!
向かい討つは中央神殿を守護する選りすぐりの神軍数百万の猛者であった。
遮那は向かって来る武神達を薙ぎ倒しながら神殿へ向かう。次々と飛行雲から落下して行く武神達。落下する仲間を救助に向かい戦線離脱する武神達。次第に遮那から放たれる覇気が高まり、戦いの中で神経が研ぎ澄まされていく。戦いが困難で窮地に陥るほど強くなる!それが魔神族が戦闘にかけて恐れられる所以であった。
武神「何て強さだ!我々武神の軍が一たまりもないなんて!それに奴の目的は何なのだ?」
だが、武神達も歴戦の猛者揃いであり、圧倒的な強さを誇る遮那を相手に次第に逃げ場を縮めていった。
遮那「ウグゥ…」
連携の取れた武神達の動きで周りを囲まれていく遮那は焦っていた。
(このままらと…)
武神「フフッ…ようやく取り押さえられそうだ!手間をかけさせられたが我々にかかれば…」
『うらぁああああああ!』
その直後、遮那から攻撃的な覇気が放たれ取り囲む武神達を吹き飛ばしたのだった。
遮那『オラの邪魔をする奴は…なんぴたりとも蹴散らすらぁぞ!!』
重い神圧に刺さるような攻撃的威圧的覇気。遮那には誰も近付けないでいた。
遮那が武神の大軍を相手にしていた時、須弥山内部でも動きがあった。
遮那が目指す須弥山の山頂にある『忉利天』の中央には、『善見城』と呼ばれる中央神殿が存在する。
その御前には今、この善見城の主である帝釈天と、須弥山を守護する四天王が揃い踏みしていたのだ。
増長天「外が騒がしいようだな?我等天界を守護する武神が一人のガキに手こずるとは情けん!まぁ、我々のうち誰か一人が出向けば、たやすく片が付く話なのだがな」
広目天「まぁ、待て!例の魔神国から来た少年だろ?聞けば、その少年とはあのシヴァの血縁らしいではないか?下手に手を出して魔神国との戦争と言う事になろうものなら再び天界が乱れるぞ?」
毘沙門天「シヴァは動かんよ!例え身内に何がおきようともな?」
持国天「自信お有りな言動ですね?しかし貴方が言うのであれば間違いないでしょう」
増長天「それより極楽浄土より釈迦如来と観音菩薩がこの須弥山に降りて来たと言うのは本当か?」
広目天「あぁ!間違いない。既に極楽浄土の門が開かれていると報告が来た」
持国天「あの方の気まぐれは私達には到底理解出来ませんね」
毘沙門天「ふん!釈迦はもう既に善見城に来ているようだぞ?見ろ!」
毘沙門天の視線の先には釈迦如来の使いの者が来ていたのである。
それはモクタと呼ばれる観音菩薩の弟子であった。
モクタ「釈迦如来様、観音菩薩様、釈迦如来様のお弟子である金蝉子様がお付きになられました」
モクタは膝をつき、報告を述べる。
毘沙門天「久しぶりだな?モクタよ!封神大戦以来だったか?」
モクタ「お久しく!お父上様!」
毘沙門天「どうやら元気そうだな。では、釈迦如来殿を呼んで来て貰おうか?」
モクタ「ハッ!」
モクタは一礼した後、その場から消える。
そう。この毘沙門天の別名を塔托利天王と言い、このモクタとナタクの父親なのだ。
すると玉座に座して黙って話を聞いていた帝釈天が立ち上がったのである。
毘沙門天「帝釈天よ?我々を突然呼び寄せ、如何なる用なのだ?」
持国天「今起きている事に関係しているのですか?」
増長天「ガキの始末なら任せよ!」
広目天「それとも釈迦達の来訪と関係が?」
毘沙門天「お前の眼[魔眼]には既に先が見えているのだろ?教えよ!我々は運命共同体のはずだ!」
すると四天王達は帝釈天の後に並び立ち、その返答に耳を傾ける。
帝釈天『世界の運命軸が再び動き出す!』
その一言に四天王達は互いの顔を見合わせ、その真意を理解したのだ。
運命軸とは?これから何が起きようとしているのか?
そして再び遮那へと場面が変わる。
遮那は己の覇気で身動きが取れないでいる武神達の間を割って突き進んで行く。少しでも動こうものなら、遮那の放つ強烈な威圧の覇気に当てられて気を失う武神達。
既に棒立ちで見ているしか出来なかった武神達だったのだが、突然ざわめき始めたのだ?
遮那のいる方向とは逆方面の武神達の間を割って、一人の神が遮那のいる方へと向かって行く?
遮那「!!」
その無謀にも一人で破壊神遮那に向かって行く神を呼び止める者がいた。この武神達の指揮を任せられていた将軍であった。
将軍「お…お前は何処に行くつもりだ?」
遮那もまた自分に向かって来る神の姿に気付き、目を大きくしながら、涙を溢れさせていた?
見間違う事のない…
遮那に向かって現れた神は捲簾の姿だったのだ!
将軍は捲簾に対して止まるように命令する。
武神「貴様が捲簾大将だな?止まれ!貴様が飼っていたあの魔神の子供がどれだけ天界を騒がせているか解っておるのかぁ?いくら貴様が釈迦如来様から直属に大将の称号を戴いたからからと言っても、この責任は取って貰うからな?解っておるのかぁ!」
だが、捲簾は将軍を無視して先を進む。
武神「貴様!無視するとは無礼だ…ぞっ…」
将軍が捲簾の肩を掴もうとした時…背中が寒気立ち、捲簾から静かに放たれる神気に身体を硬直させられ身動きが止まる。
そして、それは見ていた他の武神達も同様であった。一人とて身動き出来ないまま破壊神と化した遮那のもとへ向かう捲簾の姿を『見ている事』しか出来なかったのである。
そして今、遮那の前に捲簾が現れた。
遮那「アッ…アッ!アッ!アウッ!」
遮那の身体は身震いをし、その歓喜の喜びを噛み締めていた。
ようやく出会えた捲簾に対し、今まで抑え込んでいた感情が爆発しそうだったから…
あの日と同じだった。
初めて遮那がこの地へと来訪し、数々の武神相手に喧嘩を売った挙げ句囲まれた時、遮那の前に現れた邂逅の時と…
そして捲簾は救ってくれた。更に何も知らずに戦い続けていた遮那に、戦う意味と心を教えてくれた。
遮那「お…オラ…」
そんな遮那に対して捲簾は優しく言った。
『遮那お帰りなさい』
その言葉に遮那の緊張が解けて涙が溢れだしそうになったが、
その台詞の後に…
『さようなら』
遮那は捲簾の言葉に呆然となったのだ。
意味が理解出来なかった。
聞き違い?
それとも何かの間違い?
遮那「な…なんら?何を言った…ら…か?」
直後!遮那の首筋から血が噴き出したのだ。遮那は意味も解らずに首筋を抑え、噴き出す血を止める。
遮那「エッ?エッ?エッ?う…嘘らろ?」
遮那の目の前には、指先を自分に向け神気の刃を放った捲簾の姿が!?
致命傷…
なりうる攻撃であった。
遮那が特異体質的な再生力の持ち主でなければ、確実に致命傷だったはず。
死んでいたに違いない…
痛みが後から火傷のように伝わって来た!
遮那「うぎゃあああ!」
遮那の叫び声が響き渡り、周りの武神達がざわめき歓声があがる。
遮那擁護の捲簾が現れた時は遮那を逃がすのではないかと心配されたのだが、結果!捲簾は天界の武神としての務めを全うしようとしているではないか?
あの凶悪な破壊神が手も足も出せずに攻撃を食らったのだから!
捲簾大将…
釈迦如来により『大将』の称号を与えられ、『個人の自由意思』で魔物討伐に出向く事を許された特別待遇の存在。何故彼が特別なのか?どうして優遇されているかは不明であり、彼の事を詳しく知る者はいない…
だが、今…
その理由と正体が明るみになろうとしていた。
この一部始終を見ていた武神が一人一人違和感を感じはじめ、捲簾の姿を二度三度見直す。すると目を丸くし、口を開きながら驚きに手にした武器を掴む事を忘れて落下させてしまう者もいた。
更に正体を確信し、気付いた者は即座に己の乗る雲の上にひざまづき頭を下げる者さえ現れる?
捲簾の背負う神々しい後光と、武神達をもひれ伏せさせる存在感…
そこに、遅れてやって来た後軍がその現場を見て、同じく動きを止めた。
そこには二郎真君とナタクもいたのである。
ナタク「二郎真君!知っていたのか?お前は?」
二郎真君「聞いてはいないぞ!俺は!捲簾…お前は一体…」
すると捲簾は静かに真言を唱えると、一帯に響き渡っていく。
『オン・アロリキャ・ソワカ…』
真言が唱えられると空から蓮華の花びらが舞い散り捲簾の姿を隠していく。そして再びその姿を現した時に捲簾の本来の姿を現したのだ!
その姿、見間違う事なく…
数々の神々の頂点にて崇拝されし仏神!
観世音菩薩その者であった。
遮那「な…なんら?何が起きてるらか…?捲簾?捲簾なんらよな?何がどうなっちまったんらよー??」
シャナの嘆きの訴えに捲簾は優しくニコッと笑顔を見せて言った。
捲簾『お前はもう用済みです。お死になさい?破壊神遮那!』
今、世界の…
遮那と捲簾の運命軸がゆっくりと動き出した。
次回予告
捲簾、その正体は仏神観音菩薩だった。
遮那は豹変した捲簾を相手にどうなってしまうのか?
運命軸は動き出した。




