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傷まぬらか?


突如、現れし蛇神の女 白蛇姫により仲間達は襲われ、頼みの遮那は仲間によって盛られた薬で動けなくなってしまったのだった。


そして、遮那は衝撃的な惨劇を目の当たりにしたのだ。



蛇神との戦いの最中、遮那は仲間の一人に与えられた薬により身動きが取れなくなった。


だが、蛇神[白蛇姫]は遮那を殺さずにその場を去り、共に来た武神候補生達を獲物へと変更したのだ。



遮那は仲間を救うべく傷付いた身体を引きずりながらも仲間達のもとへ向かった。だが、洞窟の中には逃げきれずに襲われた無残な仲間達の骸だけが残されていたのだ。



遮那は己の無力と絶望の中で、まだ生き残った仲間がいると信じて、一人でも救うべく洞窟の外へと向かったのである。



(一人でも助けるら…)



暫くして遮那は傷付き動き儘ならない身体で、何とか洞窟の外まで抜け出て来たのであった。



それまでにどれだけの仲間達の骸の傍を通り過ぎて来たか…



だが努力も虚しく洞窟の外に出た時には仲間達の生存はもちろん、蛇神の気配すら感じとれなかったのである。



遮那は力が抜けるように膝をつく。無力感、絶望、後悔、様々なジレンマが遮那の心を引き裂いていく。遮那は放心状態のまま空を眺めた…



すると遠くの空から幾つもの光がこちらに向かってやって来るのが見えたのだ。


遮那(あ…あれは…?)


それは救援を呼びに運よく生き残った者が連れて来た武神兵達だった。武神達は空を飛ぶ雲から飛び降り洞窟の近くまで来ると直ちに近辺の調査を始め、そのうちの数人が遮那の前に近寄って来た。



そして遮那の腕を掴み立ち上がらせたのだ。



遮那「オラの事は良いら!だから、まだ生きている奴がいるかもしれねぇらから、先にそいつらを助けてやってくれら!」


武神兵「…………」


が、武神兵達は遮那の言葉を無視するかのように返事をしない?


遮那「だから!オラの事は良いらから!先に生存者を捜すらぁって?」



が、武神達はそのまま無言で遮那の両腕を後ろに回し、何を思ったか拘束具を嵌めたのである。



遮那「なっ?何をするら?何のつもりら!?」



すると武神達のリーダー格の男が思いもよらぬ言葉を遮那に告げた。



武神長「天蓬元帥・遮那!貴殿は見習いの者を連れた討伐の際に出現した妖怪と手を組み、部下であった武神達を手にかけた容疑がかけられておる!」



遮那「なっ!?」



そこに部下の武神兵の報告が入る。


武神兵「生存者は一人もいません!辺りには仲間達の悲惨とも言える骸が何体も見付かりました!そこには幼き少年神達の骸も…」



怒りで奮える声の武神兵の報告に、周りの武神達もまた怒りの目で遮那を睨みつけていた。



遮那「ち…違う!待つらぁ!」


武神長「未来ある少年神達までも…」


遮那「はっ…話を聞くらぁ!オラじゃないら!オラは何も!」



武神達が遮那に向ける軽蔑と疑心の目…



武神長「見苦しいぞ?仮にも天蓬元帥の称号を天より頂戴しておきながら恥ずかしくないのか?この反逆者が!」


遮那「ち…ちが…」



「(ボソッ)…やはりこうなった…」



武神兵達の陰口が聞こえて来た。


遮那「オラの話を聞くら!」


武神長「お前には天蓬元帥の称号を剥奪の上、厳重な監視の後それに見合った罪を償って貰おう!いやこのような悍ましい罪を犯したのだ!極刑は免れまい!」


遮那「!!」


遮那「違う!違うら!オラじゃないら!蛇神が!蛇神が全て!」


武神長「ならば、お前の言う蛇妖怪は何処へ行ったのだ?」


遮那「そ…それは…」


武神長「何も言えまい?この辺りからは蛇神らしき化け物がいた形跡はもちろん、その残留思念すら残ってはいないのだからな!万が一いたとしても妖気の弱い下級の魔物だろうな?さぁ!この裏切り者を捕らえよ!」



入る時も蛇神達は自分達の妖気を消す札を洞窟一帯に使用していた。この場から消える際にも用意周到に形跡を残さないように手を打っていったに違いない。



そして遮那の弁解は聞き入られないばかりか…



武神長「キサマの仕出かした罪はこの唯一生き残りし者がすべて証言してくれた!もう言い逃れは出来んぞ?神妙にせよ!この反逆者よ!」



遮那は驚きとショックの中で見た先には…


武神兵達の後ろで震えながら自分を見ている男が立っていた。



見覚えがあった。


最後に蛇神に襲われかけた所から助けた男?救援を頼んだ男?いや…


その者は確か?


洞窟に入った時に水を…


痺れ薬の入った水を自分に飲ませた張本人だったのだ!!



遮那「お前?…お前からも何か言って欲しいら!オラ達はこんな事をしている場合じゃないら!消えた蛇神を追わねば……」



すると逃げ延びた武神の男は怯えた口調で言った。



武神「…お…俺は見た…」


遮那「!?」


武神「こいつが洞窟の妖怪と手を組んで仲間達を殺していたのを!こいつは妖怪と同じ化け物なんだ!」


遮那「お前?何を言ってるらか!?本当の事を話すらぁー!!」


武神「うわぁ!」



遮那の怒鳴り声に怯える男は思い出していた。


命からがら洞窟から逃げ出し、その足dw遮那に言われた通りに救援を呼びに行った時の事を…



武神「はぁはぁはぁ…どうする?どうする?何故、奴は俺を助けたんだ?まったくどうなってやがるんだ!そもそも今回の討伐は下級妖魔が対象だったはず?あんな蛇神が現れるなんて聞いてねーよ!俺はただ…あのガキに薬を飲ませ恥をかかせてやろうと思っていただけなのに…くそ!くそ!早く救援を…」



(それで良いのか?)



立ち止まる武神の男。


武神「待てよ?もし救援を呼んで、俺のやった行為が明るみになったらどうなる?あのガキ…さっき俺に気付いたはずだ!このままでは今は助かっても…後々俺が罪に問われるのではないか?」


そこで、その武神は考え直したのだ。


武神「……そうだよ……もともとあのガキは不要な存在…そうだ…そうなんだ…」



そしてこの武神の男は遮那に全ての罪をなすりつけ、救援の武神達に嘘の報告をしたのだ。


遮那の言葉を信じる者は一人もいなかった。


強引に遮那を抑えつけようとする武神兵達に…



遮那「こ…この分からず屋がぁー!」



遮那は腕を掴んでいた武神達を払い退けたのだ!



武神「ぐゎあ!」



勢いあまり武神の一人が腕に怪我をする。



遮那「あっ!大丈夫らか?すまないら!」


武神長「とうとう本性を現したか?皆!この反逆者を捕らえ拘束し連行するのだ!」



『全く…貴様を信じたがために死んだ者達も浮かばれまい…』



その言葉を聞いた遮那の脳裏に浮かぶのは、自分の言葉を信じ死んだ少年の姿だった。胸が押し潰されるような痛みが遮那を苦しめた。



そして、


『うぐぅああああ!』



遮那は雄叫びをあげたかと思うと、両腕に嵌められた拘束具を力任せに引き契り[粉砕]、群がる武神達を払いのけ、裏切り者の武神の男に向かって突っ込んで行ったのだ!



武神「ヒィイイ!」


遮那に両肩を掴まれて逃げる事が叶わぬと感じた男は『殺される』と覚悟し震えながら目を綴じた。


だが、遮那からの攻撃が来ない?そして聞こえて来た言葉は?



『傷まぬらか…?』



恐る恐る目を開けた男の前には、涙を流して自分に向かって訴える遮那がいた。遮那は自分自身の胸を掴みながら男に言った…



『お前の…


お前のここ[胸]は…


傷まぬらか?』




それは自分自身のした愚かな行為で、助かったかもしれない仲間達や幼い少年達が犠牲になった事への罪悪感…


男は遮那からのけ反りながら怯えつつ叫んだ。



武神「…お…お前が…言うな…お前が…!」



同時に他の武神達が遮那を囲む。



武神長『その反逆者を捕らえよ!』



一斉に取り押さえようと飛び掛かって来る武神兵達を払いのけ、遮那は残り少ない体力で空中へ飛び上がったのである。


同時に向かって飛んで来た自分の黒い雲に乗り、そのまま猛スピードで飛んで逃げて行ったのだ。



残された武神達は…



武神長「即刻、あの反逆者を捕らえよ!いや…既に一級討伐命令が下されている!見つけ次第殺して構わん!」



この時を持って遮那の討伐命令が天界全土へと伝わる事になるのだった。



身体的にも精神的にも傷付いた遮那の命運は?



運命の歯車が少しずつ狂い始めていく…


次回予告


謀反を起こした大罪神、遮那に討伐命令が下された。


遮那は一体、どうなってしまうのか?

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