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玉皇大帝と楊善!


二郎神君と楊善は無事に盗賊長開明を倒した。


そして聖獣・哮天犬との魂契約を成し遂げたのだ。




玉皇大帝…道教における天空を支配する最高神が一人。



これは二郎真君が生まれる前の話…



玉皇大帝『怯むな!』



玉皇大帝率いる神界軍は突如現れた天界にあだなす邪悪な魔物の軍勢を相手に交戦していた。



『玉皇、押されていますね?そろそろ私達も出ますか?』


美しい容貌の青年神が玉皇大帝に助言をする。



玉皇大帝『うむ。仕方あるまい!共に戦うぞ!聖獣・華鷹駄伽(ハナタカダカ)



それは玉皇大帝の聖獣の化身であった。華鷹打伽は空に飛び上がると、その姿が紅色の大鷹へと変化する。


『聖獣変化唯我独尊!華鷹駄伽』



同時に玉皇大帝も飛び上がり、華鷹駄伽と合神したのである。玉皇大帝の姿は鷹の鎧に身を包んだ凛然たる勇姿がそこにあった。


羽ばたく翼から放たれた強烈な光が、迫り来る魔物達を消し去って行く…



《これで、あらかた片付きましたね?》


玉皇大帝『うむ。しかしこの数年、魔物が天界にこうもたやすく侵攻して来るのは何故だ?』


《天界の結解を全て摺り抜けるなんて…まるで…》


玉皇大帝『何者かが手引きしているとでも?』



それ以上は憶測になってしまうがため、答えを出さないでいた。


難攻不落である天界に、何処から現れたのか解らない謎の魔物達?


玉皇大帝はこの天界の異変に、ただならぬ不安を感じていた。



その日の夜…


『うぎゃあああああ』



玉皇大帝の神殿の見張りをしていた武神の断末魔が響き渡る。その異変を感じた武神達が声のした方へと向かうと、そこには…


白いモヤに包まれた犬獣が、見張りの武神を噛み殺す姿があった。


武神達は一瞬怯むも直ぐさま武器を手に取り、目の前の犬獣にかかっていく!

が、犬獣は閃光の如き駿足で武神達の攻撃を躱した。しかも犬獣が過ぎ去った後には身体を噛み刻まれた武神達が一人一人と倒れていく。


武神「至近距離からの攻撃はよせ!遠距離から一斉攻撃だ!」



武神達が気を籠めて放とうとした時、


『ウグオォオオオオ!』



犬獣の咆哮が武神達の神気を押し戻し、そのまま武神達をも消し去ったのだ。


犬獣は神殿の中へと入り込み、玉皇大帝のいる寝室に迷う事なく向かっていく…

その間、止めに入る武神達をも瞬時に蹴散らし、誰も止める事すら叶わず。


そして、犬獣が玉皇大帝の寝室の扉の前にまで来たその時であった!


部屋の中から凄まじい気が放たれ、飛び掛かろうとした犬獣を弾き返したのだ。さすがの犬獣も隙をつかれダメージをくらうが、直ぐさま立ち上がり扉の中にいる二人に威嚇を始める。


中にいた二人とは玉皇大帝と華鷹駄伽が人の姿へと変化した美しき青年。


その犬獣を目にした華鷹駄伽は確信する。


華鷹駄伽『あれは哮天犬です!』


玉皇大帝『哮天犬だと?』



華鷹駄伽は玉皇大帝に哮天犬なる聖獣について簡潔に説明する。


哮天犬とは犬の聖獣であり、その主には忠実無比で、命令を与えられれば主のために命を投げ出してでも実行する。


恐らくは狙いは玉皇大帝の抹殺。



玉皇大帝『だからといって、やすやすと私の命はやらん!華鷹駄伽よ?私に力を貸してくれ!』


華鷹駄伽『解りま……』



言いかけた時だった。


哮天犬の額が裂けたかと思うと、そこから第三の眼が出現したのだ?同時に凄まじい覇気が玉皇大帝と華鷹駄伽を襲い部屋の奥まで弾き飛ばす。



玉皇大帝『ウグゥウ!こしゃくな!』



玉皇大帝がふらつきながら頭を上げようとした時…



『危なーーーい!』



尖端が三つに分かれた刃の矛をくわえた哮天犬が突進して玉皇大帝の眼前にまで迫っていた。



覚悟…


玉皇大帝がまさに覚悟したその目の前で…身を呈して庇った華鷹駄伽がその胸を貫かれる。



玉皇大帝『お…お前…』



華鷹駄伽は玉皇大帝に頷くと、まばゆい光りを放ち紅色の鷹へと姿を変えた。そのまま哮天犬を足で掴み上げて神殿の外へと飛び出して行ったのだ!



玉皇大帝は一人残されつつも我に返り、直ぐさま神殿の外へ向かったのである。


(華鷹駄伽…お前死ぬつもりなのか?この私を置いて一人で逝くつもりなのか?そんな事は許さんぞ!)



玉皇大帝もまた、幼少より華鷹駄伽と永遠の主従…いや、義兄弟の契りを結んだ唯一の友であった。



(あいつが飛び出して行く時に、声が聞こえた…)



それは華鷹駄伽の最期の言葉だった…


《この哮天犬は何者かの強力な暗示で操られているみたいです。例えこの場で命を奪っても、その魂は怨霊と化して再び貴方のもとに現れるでしょう!だから…》



玉皇大帝『馬鹿者が!私を…私を…一人にするのか?そうはさせん!』


《私が哮天犬の魂と同化して、その魂を解き放ちます!》



玉皇大帝が神殿から出たと同時に、空高くより強烈な閃光が放たれ紅色に輝く羽が降って来たのだ。



玉皇大帝『手遅れだったか…さらば…友よ』


涙する玉皇大帝の前で、華鷹駄伽は哮天犬を道連れに消えて逝った。



それから数年した後…



玉皇大帝の宝殿の中から光りが発していると噂になり、玉皇大帝が直々に真相を調べに出向く。


そこで見付けたのである。


華鷹駄伽の卵を?


だが、玉皇大帝がいくら神気を卵に籠めても、卵には全く異変が起きなかった。


その後、玉皇大帝の子供が産まれ試すも、やはり何も起きなかった…


もう二度と会えないと、諦めかけた時だった。


玉皇大帝の妹が人間の男との間に産まれた半人半神の子供が産声をあげた時、その卵は再び光りを放ちながら割れたのだ?


その卵から現れた聖鷹こそ、華鷹駄伽の転生した姿…


宝天であった。



だが、悲劇は起きた。


神殿に忍び込んだ裏切り者開明により、甥の真君がさらわれ、その事件がきっかけで宝天が命を落としたのだ!


あの日、玉皇大帝はその場に駆け付けていた。



そこで玉皇大帝が目にしたのは、宝天の無惨な亡きがらと泣き叫ぶ真君の姿だった。


玉皇大帝が意を決して、真君に近付こうとした時…



『…し…死なせない…』



玉皇大帝『!!』



玉皇大帝の目の前で想像せぬ出来事が起きたのだ!



そして時は流れる。



玉皇大帝は過去の出来事を振り返りながら、傍らに仕えているその者に目を向けると、その者はニコリと微笑み言った。



『多分、真君は意図してやった訳じゃないでしょう。無意識に行った力が、結果的に僕の魂を留めてくれたのです…』



玉皇大帝『華鷹駄伽…いや、宝天よ?それでも私はお前が今も私の目の前にいる事が嬉しく思うのだぞ?』


『ありがとうございます。玉皇大帝様…しかし私の今の名は…』



それは美しき少年…


揚善であった。



そう。揚善とは宝天の転生した姿なのだ。


あの日、瀕死の宝天を救うべく真君は無意識に自分自身の魂と身を二つに分け、宝天の消え逝く魂のカケラを半身に押し込める所業を行い、そして力尽き意識を失ったのだった。


だが、真君が再び目覚めた時、その記憶を忘れてしまっていた。


そして残りの半身は玉皇大帝が連れ帰っていた。



玉皇大帝『しかし、まさかお前が一度死にかけた事で、華鷹駄伽であった魂と同化していた哮天犬までもが転生し、真君の聖獣として再び私の前に現れるなんて思いもよらなかったぞ?』


揚善『ふっ…あの哮天犬はかつての洗脳も解けて、今は真君を真の主として認めています。きっと真君をこれからも護ってくれますよ?』



玉皇大帝『うむ。妬けるか?』


揚善『そりゃあ~もう!私が先に唾を付けていたのに、後から現れて掻っ攫われた感じで嫉妬してます!ぷんぷん!』



玉皇大帝『アハハハ!お前も真君を頼むぞ?あいつは必ずこの先に起こるであろう世界の大災に必要となろう男だからな!』



揚善『はい!言われるまでもなく…私の魂は彼と共にありますから…』





この事実を知る者は、玉皇大帝と揚善の秘密であった。


次回予告


若き二郎神君と楊善の物語、最終章!


二人は天界の武闘祭りに参加する事になった。

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