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第4話

 ふと気になったので、ポケットの中からスマートフォンを取り出し、時間を確認する。

 時刻は、午前十時二分を過ぎようとしていた。

 流石に桃井先生が来る頃合いだろうし、俺も自分の席についておこう。

 そう思い、エリーナに殴られた腹をさすりながら起き上がった瞬間ーー


 突然、教室のスピーカーからノイズが入り、放送が流れ出した。


『緊急放送、緊急放送。学園ランクA所持者及び竜宮永児は至急、速やかに放送室隣の作戦会議室に集合せよ。繰り返す、学園ランクA所持者及び竜宮永児は至急、速やかに放送室隣の作戦会議室に集合せよーー』


 放送が終わった途端、エリーナは教室から飛び出して行き、クラスの皆もざわつき始める。

 俺は現状が把握できずにいると、大雅と東さんが俺の腕を掴み、教室の隅の方に引っ張って行く。


 そして、自然と俺たち三人にクラスの視線が集まる。

 ……いや、わかります。わかりますよ。俺の場違い感が凄いことくらい。

 あぁ〜もう、クラスメイトの視線が痛い!もうやめて!俺のライフはもうゼロよ!

 というか、なんで俺呼ばれてるの?何かしたか?

 ……ま、まさか、自殺願望が学園側にバレた……!


 ……そんなわけねぇか。


 もう混乱して現状何が何だか理解できていないそんな俺をよそに、大雅と東さんの表情は、つい先程までとはまるで人が変わったかのような瞳をしていた。


 俺は昔、この目を見たことがある。背筋が凍る。そう、この目は憎悪と侮蔑を含んだ殺意のある目だ。思わず嫌な思い出が脳裏に浮かび、鳥肌が立った。


 一体この二人はどれだけの修羅場を潜り抜けてきたんだろうか。


 大雅が俺と東さんに聞こえるかくらいの小さな声量で話しかけてきた。


「Aランカーの呼び出し……多分今の放送、異常感染者かルドラ絡みの相当ヤバい事件かもな」


「え……いやいやいや、なんで俺まで呼ばれてんの⁉︎」


「なぁところで辰美、この放送少しおかしくないか?」


 東さんが何か考えている様子で顎に手を当てながら大雅の問いに頷く。


「はい。私も今の放送には違和感を感じます」


「え、なにナチュラルにスルーしてるんですか?傷ついちゃうでしょうが」


 思わず軽く屋上から身投げしたくなっちゃうだろうが。


「あーはいはい。とりあえず作戦会議室に行くぞ」


 どうやら大雅君は俺と会話する気がないらしいですね。

 ……あとでこいつしばく。


 大雅を先頭に東さん俺の順番で教室を出ていき、放送では至急と言っていたが、俺たちは歩いて職員室の隣にある作戦会議室へと向かった。


「で、さっきの話の続きだが……やっぱり辰美も違和感に気が付いたみたいだな」


「さっきからおかしいとこ〜とか、違和感がどうとか言ってるけどさ、特別おかしなところなんてないと思うんだけど」


 事件が発生したからランクに合った生徒を呼び出した……ただそれだけの話じゃないのか?

 俺のは多分別件で、別々に呼び出すの面倒だったから一緒に呼び出した……とかさ、そんな感じで。


「だからお前はバカだって言ってんだよバカ」


 ……大雅の奴、人のことをバカバカ言いやがって……バカって言う方がバカなんだぞバカ!

 いくら考えても本当におかしな点が思い当たらない。

 状況を未だに把握出来ていない俺に、流石に見かねたのか東さんは苦笑しながら話しかけてきてくれた。


「えっ〜とですね……大雅様の言いたいことを説明いたしますと、この放送には現時点で二点程、疑問が残るんです。まず一つ目の疑問です。異常感染者やルドラに関する大きな事件ならテレビやインターネットなどで大々的に報道されますよね?」


「うん……でもさ東さん。ここ最近そんなニュー聞いたこともないよ?」


 そう。普通なら、Aランク級の大事件が起こっているのなら、日本は愚か、ほぼ全世界的に数日は事件の報道やニュースで世間は騒ぐはずだ。

 それなのにここ数日は異常感染者やルドラが原因と思われるような事件は何処にも取り上げられていない。

 それどころか、最近千葉でイルカが現れた報道があるくらいだ。

 殺人事件などの物騒な事件の報道は全くないと言ってもいいくらいには、今の世界には似つかわしくない平和な毎日が続いている。


 そんな俺の意見を聞いた東さんは頷いた。


「そうなんです。永児さんの(おっしゃ)ったようにここ数日、それらしき事件の報道はありませんでした。それにもし仮に、世間に発表されていない異常感染者やルドラに関係するような大きな事件が発生していたとしても、SランカーやAランカーには事前に先生方から連絡が入るはずなんです。ですが、今回はそれが全くありませんでした」


「世間に発表されていない……つまり、世間一般には知られたくない事件って捉えるのが普通だ。迂闊うかつに民間人をパニックにするのも政府は嫌がるしな。それに俺たちみたいなこの学園に入学してまだ二週間のペーペー……まぁ一部の俺と辰美、アスタロッテの様な例外を除けばずぶの素人集団だ。民間人となんら変わらない。それを一歩間違えればみんなパニックになり混乱するかもしれないような呼び出し方をするのはありえないんだよ」


「えっとつまり……この放送はAランク級の大事件の可能性が高いけど、Aランク級の事件ならありえないような情報伝達方法……ってこと?」


 言われてみれば確かに大雅の言っていることは正しい。

 誰だって近所で化け物が暴れ始めて犠牲者が出たらパニックにおちいる。

 いくら自殺祈願者の俺でも、化け物に喰われたり、ゆりかごにされたくはない。


「はい。そして二つ目は、高ランカーのメンバーの中で唯一低ランカーである永児さんだけが『名指し』で呼び出されているということです。ですから、大雅様と私は先程の放送に違和感を感じている……ということなのです」


「そういうことだ。ただでさえ放送で高ランカーを呼び出すこと自体が不自然なのに、加えてこのバカも一緒に呼ばれてるときた。疑わない方がおかしいだろ」


「あー、そのことなんだけどさ、流石に別件だと思うんだよ。別々に呼び出すのが面倒だったからまとめて呼び出したってことならなんとなく辻褄つじつまは合うし」


「お前にしてはいい線いってるな。でも、それはない」


 人を上げてから落とすのは残酷なことだと大雅君は知らないようだ。

 本当、こいつ性格悪い。


「な、なんでだよ」


「別件なのに、なんでわざわざ同じ教室に呼び出すんだよ。お前だけ別件なら普通、違う教室に呼び出すだろうが」


「ランクの低い永児さんは扱い的には民間人と殆ど変わらない羽虫の如きクズのはずです。それを私達と同じ部屋に呼び出すと言うことは、同じ案件で呼び出されていると考えるのが妥当かと思います。本当に不愉快ですね、この虫野郎」


「確かに言われてみれば……って俺は虫と同列なの⁉︎」


 東さんもさりげなく俺のことをdisってるのが気になるが、大雅の説明よりはわかりやすく、理解できた。

 でも、できればもう少し言葉を選んで欲しいものだ。

 思わず「ヒョ?」と言いそうになったじゃないか。


 にしても、と大雅が話を続ける。


「やっぱり一番わけわかんねぇのが、凡骨ぼんこつ以下のFランカー永児が、俺たちAランカーと一緒に呼ばれることだ。BランカーやCランカーが呼ばれるならわかるが、普通ならどう考えたってありえねぇ」


「いやいや、それは本気でこっちが聞きたいくらいだから。あと凡骨って言うな」


 如何にも次回死にそうな呼び方はやめていただきたい。


「そうなんですよね……生徒の安全の為のランク付け。ランクに合った事件が与えられるシステムな筈なのですが……凡骨永児さんの様な飼い猫の捜索がやっとできる程度の最低ランカーが、私達と一緒に呼ばれることが理解できません」


「お前ら遊○王大好きか!あと東さんもさりげなく凡骨って言うな!」


「次回、永児死す!デュエルスタンバイ!」


「イワァァァクッ!……って勝手に殺すなっ!もう許さねぇ!大雅、俺と決闘デュエルしろ!」


思わずノリツッコミしてしまったが、こいつとは一回、決着を付けておく必要があると思う。


「ふぅーん、良いだろう。凡骨風情がこの俺に勝てると思うなよ」


お前はどこの社長だ、それにちょっと似てるのが余計イラッとくる。


「あのぉ……お二人とも、もうすぐ教室に着きますからデュエリストごっこの続きはまた後で……」


東さんは申しなさげに俺たちをなだめる。

 気が付けばもう作戦会議室のプレートが見えていた。

 くっ……仕方がない、エネコン勝負は後にしてやる!


 今は作戦会議室に全速前進だっ!

今回最後の方ちょっとふざけてみました。あれ大丈夫かなぁ……怒られたりしないかなぁ……もし怒られたら怒られたで変えます!

一応この物語の世界的には、TCG(トレーディングカードゲーム)やアニメとか、某有名な企業名や商品名は今の世界とリンクしてたりしていなかったりします。


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