閑話 小作農の女ポーラの証言
すみません、前投稿より結構空きました。
今回は亜希が出会った馬車に乗っていた異世界人のおばちゃん、ポーラ視点です。
亜希たちからは分からない異世界の設定や現状を別視点から描いたものです。
※ここまで投稿して初めて気付いた事ですが、ブックマークして読み始めていた他作家様の作品にシアという人物が登場していました(汗)
別に設定をパックったわけではないし、単なる名前の偶然の一致ですが、なんだかドキドキしている小心者の私です。
タイトルにもデカデカと『シア』と入れてしまっているので今更変更も出来ません…
単なる偶然の一致で、まったく関係のない別作品ですのでご了承ください…
不思議な女の子だった。
野良仕事の帰りに拾った女の子は、一言で言うなら、そういうのが一番しっくりくる。
彼女と会ったのは、一日の仕事を終え、帰宅の途についていた最中だった。父の代から使い古されてきた古い馬車に揺られての帰宅。我が家は地方都市の片隅に居を構える小作農で、裕福ではないが、まあとりあえず生活出来ている。暮らしぶりを向上させたいが、私を含め、夫、息子、息子の嫁も大して学がない。王都などに行って生活向上など考えるべくもない。息子夫婦にはまだ子供はいないが、さほど期待はしていない。
馬車が突然激しく揺れ、夫が馬をなだめる。息子夫婦も馬車の隅にしがみついていた。年老いた義父も無事の様だ。
「急に馬車の前に、飛び出すんじゃねぇ!」
夫の怒声が響き渡る。
どうやら誰かが馬車の前に飛び出したようだ。馬車のなか方では馬車前の様子は伺えないが、夫はまだ誰かと言い合っているようだ。
と、夫が馬車の中の私たちに振り返って言った。
「言葉が通じん。強盗や、追剥ではないみたいだが、他国人かもしれん」
「他国人? こんな所で?」
息子は聞き返す。
国内の地理なんて私には分からないが、私よりは多少学のある息子が言うのだから、ここに他国人がいて驚くような場所なのだろう。
「若い男と小さな子供だ。子供はともかく、若い男は怪しい風体だ。俺と親父と、リックで出る。ポーラとアンは馬車から出るなよ?」
そう言い残し、男3人、馬車から出た。私と息子の嫁アンは馬車の前から様子を伺った。
まだ小さな女の子を連れた、若い男。見た事の無い格好をしている。確かに怪しい。
義父、夫、息子も、それなりに喧嘩っ早い。誰彼構わず向かうほどバカではないが、問答無用で馬車を止められて、黙っているほどおとなしくもない。国の兵士や騎士、荒くれ者の多い冒険者たちで無かったというのも理由にあるのだろう。
言葉は解らないが、向こうの若い男もどうやら平和的では無いみたいだ。
と、そんな状況の中で、幼い女の子が大声を上げ、若い男の裾をつかんだ。さらに若い男に言いつのっている。この幼い女の子の言葉も解らないが、どうやら、叱責している様だ。
突然の状況にウチの男たちが呆気にとられている中で尚も女の子と若い男が言い合っている。
やがて、話が終わったのか、幼い女の子が夫の元にやって来て、頭を下げ何かを話し出した。
何を言っているのかわからないが、身振り手振りでどうやら馬車に乗らせてほしいようだ。幼くても、この女の子の方が礼儀をわきまえている。無駄な争いを起こさない様、気を使っている様で遠目にも好感が持てる。
やがて馬車にも乗せることにしたのか、夫たちに連れられて、女の子たちが馬車に乗り込んで来た。
ここでも女の子は馬車内にいた私たちに頭を下げたが、若い男はふてぶてしく、馬車に乗り込んで来た。
女の子の格好は明らかに異常かった。ワンピースではあるが、それなりにモノの良いモノなのは解るが、サイズがぶかぶかである。この年頃の成長を加味して大きめのサイズを与えたにしては大きすぎる。
若い男の方も奇妙な格好だが、こちらはまだ何と無く解る。見た事の無い格好だが、異国の格好なのだろう。若い男のサイズに合っているし、それなりにきちんと仕立ててもらっているのが見て取れる。商談用か何かといったところだろうか?
つまりこの男は、おそらく奴隷商人か何かなのだろう。ずいぶん若い奴隷商人だが、なりたてで、相手に低く見られないよう、必死に背伸びしているのだろう。自分の格好をきちんとしたはいいが、商品の格好がおかしくては世話が無い。良い生地の服でもサイズがおかしすぎる。自分の奴隷も完全には掌握出来ていないようだし。
女の子が持ち物のカバンの中をあさっていたかと思うと、私たちに何かを差し出してきた。何か解らない物を受け取れないと逡巡していると、一瞬困った顔をした女の子は、自分でそれを口にし食べ始めた。どうやら食べ物のようで、私たちにコレが食べ物であるということを教えてくれた様だ。この女の子は、必死に私たちとコミュニケーションを取ろうとしていて、見ていて可愛らしい。
だが、そんな女の子の様子を見ていた奴隷商人は、何か文句を言ったようだ。女の子は何かを言いかけ口をつぐんだ。
女の子が私たちに渡した物は飴玉だったようで、純粋な甘味だけの食べ物なんてずいぶんと久しぶりだった。ウチの男たちも心なしか顔に笑みが浮かんでいる。
お返しに私は女の子に水の入った皮袋を水を手渡した。女の子と同じようにまず私が口を付け飲んで見せると、女の子は、自分がやった行動を真似て示した私の行動に笑顔を浮かべ水を飲み始めた。
女の子が水を一口、口に含んだ瞬間、奴隷商人が突然大声を上げ、女の子から皮袋をひったくり、自分が飲み始めた。
私だけでなく、みんなその行動には呆気にとられた。
いくら奴隷とはいえ、こんな幼い女の子から奪い取ることではないだろうし、奴隷相手なら、水を渡すように指示すれないいだけの話だろう。ずいぶんと狭量な男のようだ。
その後、奴隷商人の行動は目に余る物だった。馬車が自分の物かの様に振る舞い、ふんぞり返り、寝転がり、馬車内を物色する。
野良仕事を終えた馬車内は農機具しかないから取られる物は無いが、いい気分はしない。馬車に乗せた手前、声を荒げたりはしないが、街に着いたらすぐに別れるのが無難だろう。
荒くれ者ぞろいの冒険者だって、まだ態度が良い。冒険者たちは確かに荒くれ者ぞろいだが、強盗や盗賊では無いので馬車を強制的に停めたりしないし、馬車内を勝手に物色したりしない。私たちみたいな農家の馬車や、商人の馬車は彼ら冒険者の足にもなるし、農作物ですぐ食べられる物とかを売ってくれる事もあるのだ。稼ぎの少ない若い冒険者にはありがたい存在で現金が無ければ物品での利用も出来る。まして強奪など行えば衛兵に連絡が行き、お尋ね者になり最悪、死罪が待っている。農家や商人の馬車を利用しているほかの若い冒険者の反感も買うので、そうそう無法な事が行われる事は無い。
冒険者の馬車の乗り込み拒否をされては、若い冒険者の生活も立ち行かなくなるので、国としても、その辺の陳情は結構受け入れてくれて捜索が出るのだ。
女の子は飴玉をくれたので、まあ良しとするが、奴隷商人はお金どころか、女の子のように何かを渡してくる事も無い。冒険者よりも態度が悪いし、さらに馬車内を物色する。これでは実際にモノを取っていないだけで盗賊と変わりが無い。気に食わない男だ。
馬車が街に着いた。
城門の手前で検問があるので、女の子に交通手形はあるのか尋ねた。もちろん態度が悪すぎる奴隷商人は気に食わないので無視。
言葉が通じないので、実際に手形を見せ身振り手振り。幸い通じたはいいが、女の子は小さく頭を横に振った。
まあ、手形が無くても街に入るだけなら発行すればいいから特に問題はない。
順番が来たので門兵に私たちの分の手形を見せ、説明する。
「仕事帰りに乗せたけど、どうやら他国人みたいでね。言葉は通じないけど、どうやら奴隷商人みたいだよ」
「じゃあ、あっちの小屋で手形を発行だな」
特に問題なく、小屋に案内される。
女の子が不安そうな顔をするので一緒に付いて行く。
身体検査に多少戸惑っていた様たけど、無事に終わった。ただ、この女の子が服を脱いだ時に胸に何か付けていたようだけどよく解らなかった。まあ、衛兵も女の子に返していたし、問題は無かった様だ。
私たちが身体検査を終え小屋から出てきた後、しばらくして別の小屋から奴隷商人が出て来た。この男は身体検査の時にも何か問題を起こした様だ。まったく、いい迷惑だ。この幼い女の子の方がよっぽどいい。問題も起こさないし、身体検査の時も戸惑ってはいたが、町に入る為の行為だと納得しているようだったし。
ここでこの奴隷商人とはお別れと思っていたが、何食わぬ顔で、さも当然のように再び馬車の乗り込んで来る。仕方ないので街の中に入る。街の中央通りには今は用が無いので外壁沿いの家に向かう。
その時、奴隷商人は奇妙な声を上げ、馬車から飛び降り、中央通りに駆け出した。
また勝手な事を…呆れつつも、このままこの奴隷商人がどこかに行ってくれるのはありがたいのでそのままにしておく。商品であろうこの幼い女の子を置いて行かれては、あとで何を言われるか困るので、とりあえず私たちも馬車を降りる。
奴隷商人は露店に立ち並んでいた冒険者に駆け寄り、肩をバシバシ叩きながら何かを喚く。
喧嘩腰ではない様なので知り合いかとも思ったが、冒険者が不思議そうな顔をして邪険に振り払っていたので、そうでも無いのだろう。
そのうち、奴隷商人は喧嘩腰になってきた。
ウチの男たちも喧嘩っ早いが、誰彼構わず喧嘩を売る事は無い。冒険者に喧嘩を売るなんて明らかに相手が悪い。しかも若い冒険者ではなく、熟練の屈強な戦士のようだ。
ため息が出る。
冒険者相手に喧嘩を吹っかけて返り討ちに合うのは勝手だが、一応、まだウチの馬車に乗せていた男だ。とばっちりは御免こうむりたい。
「何なんだお前ぇは? 言葉解んねぇし、いい加減にしろ!」
冒険者が奴隷商人を突き飛ばした。
奴隷商人は突き飛ばされ、近くにいた若い冒険者の元に転がる。喚きながら近場にいた若い冒険者の腰から剣をひったくり抜いた。
周囲にどよめきが走る。一気に人が引いた。
「おい…街中で剣なんか抜いてるんじゃねぇよ…ったく、どんな田舎モンだよ? 街中で喧嘩したいんだったら拳を使えや」
屈強な冒険者は、やれやれとお若い男を諭す。
「それに、その剣、今、そいつから奪ったものだろ? いくら荒くれ揃いの俺たち冒険者でも、衆人環視のこの状況で盗みはやらねぇぞ? ほれ、剣をソイツに返して回れ右をして帰れ。それで終いだ」
剣を奪われた冒険者に目くばせをして、奴隷商人を諭し、剣を離せとジェスチャーする。
しかし奴隷商人は奇声を上げて剣を構えた。色々と喚き散らし続けている。
「…ありゃあ、薬でもヤってるのか?」
「言葉も通じないし、ジェスチャーで剣を離せと示した。でも襲って来そうだし、困ったね?」
仲間の冒険者に声をかける。
「叩きのめしても問題無いよな?」
「街中で剣を強奪。抜いて襲い掛かってくるんだ。殺してしまったとしても問題無いと思うよ? 野次馬も証人になってくれると思う」
「ま、そうだな…あーそこの男は見ず知らずの男だ。突然喧嘩を吹っかけてきて、ほかの冒険者から剣を強奪。そのまま剣を抜いて襲い掛かって来た。だから返り討ちにした。野次馬のみんなは証人になってくれ」
周辺にいた野次馬は、事の始まりを最初から見ていた人たちだ。一にも二にもみんな同意した。
「んじゃ、ま…」
そう言った屈強な冒険者は、すっーと動くとその瞬間、奴隷商人の両手首が剣を握ったまま地面に落ちた。
そのまま屈強な冒険者は剣を振りかぶった。
いけない!
私は瞬間的にそう感じた。
私の隣にいた幼い女の子は固まっている。
明らかに今、目の前で起こった出来事に固まっているのが分かった。
こんな幼い女の子に人死になんか見せるものじゃない。
私は女の子の前から覆い被さり、人死にの瞬間を見せない様にした。
「では、他の野次馬の言っている事に間違いは無いのだな?」
「はい」
私は衛兵の言葉に、そう締めくくった。
奴隷商人が殺され、しばらくしてから報告を受けた衛兵が到着し実況見分が行われた。冒険者と野次馬、そして私の証言から
・殺された奴隷商人が突然冒険者に絡み、近くにいた他の冒険者から剣を強奪、襲い掛かって来た。
・言葉が通じないが剣を離すようジェスチャーで諌めたが、良く耳持たず、襲い掛かって来た。
・喚き散らしていた言葉は解らないが、不可解な行動から薬でもやっていたのではないか?
以上の事から冒険者に非は無く、もちろんただ馬車に乗せただけの私たちにもお咎めは無かった。
「奴隷商人が連れていたこの子ですが…」
わたしは衛兵にこの子に対応を尋ねた。
「奴隷商人と言うが、奴隷商人が持っているべき『奴隷売買許可証』も『商人組合徽章』も持って無いしな…モグリかもしれんし、騙っていただけかもしれん。おれじゃ他国の言葉も解らんから、奴隷だとしてもこのまま解放だ。奴隷紋も無いしな」
言葉の通じない奴隷をそのまま解放するのは、問題無いのかとも思うが、街に入る許可や街での治安、犯罪者の摘発なんて衛兵の指先一つだし、決まり事も詳しくは知らないので衛兵の言う事だし文句は無い。
「私と一緒に来るかい?」
衛兵が去った後、所在なさげに立ちすくむ女の子に、声をかけた。
さすがに、言葉も通じないこの幼い女の子を放っておくのは忍びない。奴隷商人は気に食わない男だったが、この女の子は性格もいいし、何とか力になってやりたい。
言葉は通じなくても、伝わったのか、女の子はこくりとうなずくと、私の手をきゅっと握った。
女の子をウチに住まわせてから3日経った。
言葉は通じなかったが、『水』とか『火』などといった簡単な単語を覚えさせ、家事と畑仕事を手伝わせた。
もの覚えは悪くなかったから、もしかしたらイイ所の出なのかもしれない。
そこでようやく、この子の名前が分かった。
『シア』
他国人には会った事無いので分からないが、普通の名前だった。ここ『フレスト王国』に普通にいる名前だった。
シアは勤勉だった。
畑仕事は慣れていないのか色々失敗も多かったが、真面目にやろうとしているのは目に見えていたので、さすがに怒れない。言葉を覚えようと暇を見て呟いているのも見て取れた。
一月ほど経ったある日、薬売りの老婆がやって来た。
この薬売りの老婆グリアは木の根や薬草、モンスターの体の一部などを乾燥させ粉にした粉薬を売る。
世の中には魔法薬と言われる瞬間的に傷や病気を治すモノもあるが、そういった魔法薬は貴族様や裕福な家庭、切った張ったが商売である冒険者が使う物。この辺の低所得者は魔法薬を買えるほど裕福では無いので、こういった普通の粉薬を扱う薬売りが各家庭を回るのが普通だ。
義父の腰痛に効く薬を定期的に買っているので、いつものごとくグリアは薬をその場で作り始める。薬をその場で作るのも、グリアを始めとした薬売りは、低所得者を相手にしているので確実に売れる分だけその場で作るのだ。
ただ、ここでシアが薬の作成に興味を示した。
私たちにはおなじみの光景だが、毎日同じような生活のシアには何か面白く映ったのかもしれない。その様子が面白いのでそのままにしておいた。
「ほほ、お嬢ちゃん、こんなババァの薬に興味があるのかい?」
グリアが笑いながらシアに尋ねる。
シアは何を言っているのか理解出来ないのだろう。きょとんとしつつもグリアの薬の作成に見入っていた。
「グリア。その子は一月ほど前に拾った娘なんだけど、他国人みたいでね。言葉が分からないんだ。まあ、邪魔じゃなかったら、そのまま見せておいてあげとくれ」
「ほほ、そうかいそうかい。ごんなばばぁの薬に興味があるかい。うれしいねぇ」
グリアはそう言って、そのままシアに薬を作る様を見せつつ腰痛の薬を作り、そのまま帰って行った。
一月後、またグリアが薬を売りに来ると、またも、シアはグリアの薬作りに張り付いた。
小さな体のシアが老婆の後ろをちょこまかと付いて回り、薬作りをじっとしゃがんで見ている様は、はたから見るととても可愛らしい。
最近のシアは、自分は言葉も覚えられず、畑仕事でさほど役に立っていない事を気に病んでいるのがよく解る。裕福では無いが、別にシアくらい小さな子供の一人くらい増えたところで、そこまで困るものではないが、シアにしてみれば自分の存在が家計に大きな影響を与えていると感じているのだろう。
リックとアンの息子夫婦は子供が出来た時の予行練習になると喜んでいたし、義父にして見れば曾孫が出来た様なものでこちらも喜んでいた。一番驚いたのが夫のベンだった。女の子の娘が欲しかったようで、それはもう物凄い勢いでシアを可愛がった。
つまり我が家ではシアを家族として認めていたのだが、シアは相当元気が無かったのだ。
シアが何かに興味を持ち、元気になるのだったら…と、グリアに話しかける。
「グリア、その娘、薬作りに興味があるみたいなんだ」
「ほほ、そうかいそうかい」
「ウチの畑仕事が満足に出来ない事に凄く悩んでるみたいでさ。この年頃なら別にそこまで問題無いんだけど、言葉がうまく伝わらなくて、それでなおの事、落ち込んでるんだ。薬作りに興味があるみたいだから教えてやってくれんかい?」
「ポーラ? 教えるのは構わないけど、この薬が出来上がったら今日にでもすぐに隣村に行かなきゃならないよ?」
「落ち込み具合が凄くてさ、見てていたたまれないんだよ。シアが納得するんなら連れて行っても構わないよ? 気晴らしでもさせた方が良いのかもしれない」
「食の細いババァとちっちゃのお嬢ちゃんだ。大して食べんだろ。どうせ一月後にまた来るんだ。預かってあげるよ」
こうしてシアはグリアに一月預ける事にした。
身振り手振りシアに説明したのだが、思ったよりもすんなりこちらの意図が通じ、シアは納得した。
ベンは物凄い落ち込んでいたが、一月だということで納得し、グリアの出発と一緒にシアはそのまま付いて行った。
一月後、グリアと一緒にシアが戻って来た時は、シアは物凄い笑顔になっていた。
どうやら、薬作りはシアにとっては性に合っていたようで、そのままグリアに引き取られる事になった。相変わらず言葉はろくに覚えていない様だったが、身振り手振りと、時折混じるたどたどしい単語でシア自身からそれを伝えられた。
シアのこの笑顔を前に否定は出来ず、ベンの泣きそうな顔に苦笑しつつもシアをこのまま送り出す事にした。
一月足らずの付き合いだったが、我が家の中に温かい雰囲気を作り出してくれた少女だった。