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シア薬剤店  作者: レレナ
序章
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第5話 現地人との出会い

この話しに登場する亜希は、第1話に登場する薬売りの少女シアです。

まだ、第1話につながっていません。

ゆっくり進みます。

 斎藤さんと出会った後、わたしたちは小川を下って行った。


 1時間ほど歩くと小さな橋があった。手すりま何も無い木造の小さな橋。そして舗装もされていない、土剥き出しの道。どっちに行ったらいいのかなんて解るわけが無かったから、とりあえず遠くに山がある方に向かった。


 「地平線以外何も無い方に向かうより、とりあえず山に向かうか。」


 それが彼の言い分だった。ずいぶん簡単に決めるものだとは思うけど、山の方に行くのを拒否する理由も無いので何も言わなかった。


 山の方に歩き始めて数時間。そろそろ日も暮れ始めようかと言う頃。彼と出会ってからの数時間で、ずいぶんと彼の性格が判ってきた。彼は何と言うか、物事を深く考えない様だ。それに全て自分で決めて他の人は黙って従っていればいいという性格だった。


 いわく、わたしと出会った小川では、綺麗かどうかの確認も無しに直にごくごくと小川の水を飲む。


 いわく、彼と身体の小さくなったわたしでは歩幅が違うのだから、わたしの方が遅いのは当たり前なのだけど「遅いよ。早く来いよ!」と、言ってくる。怒鳴ってはいないけどもう少し言い方があると思う。わたしのスピードに合わせて歩くわけでもないしかなり距離が開いてから思い出したかのように立ち止まって言ってくる。


 いわく、休憩する時も自分で勝手に時間を決め、突然休憩を始めたかと思うと、これまた突然休憩を終了する。


 いわく、「腹減ったな。なんか無い?」との言葉に、デイバックに入っていたキャンディを出すと、「お、いいのあるじゃん」と、10個残っていたキャンディを自分7個、わたし3個に勝手に分ける。流石にムッとして、やんわりと注意したが「亜希は身体小さいからそんなに食べなくても大丈夫」と言った。身体が小さいからとか関係ないから。人のモノ勝手に仕分けるのおかしいから。そのキャンディもガリガリとかじり喰いして、ものの数分で7個全部食べてしまった。異世界に来た。成り上がる!とか声高々に言っていたわりに、見渡すかぎりの草原でまだわたし以外に逢ってない状況で、食料とかの事はどう考えているのだろうか?


 やんわりと、これからどうするのか聞いてみたけど「大丈夫、大丈夫。何とかなる。ご都合主義で何とかなる。」と言った。めまいがした。ご都合主義って何? 世の中そんなにうまく行かない。そんなモノはフィクションだ。何を根拠にそんなに自信満々なのだろうか?


 彼にはもうウンザリだった。





 完全に日が暮れる前に後ろから馬車が来たのに気が付いた。馬車がわたし達を追い抜こうとした時、彼が馬車の前に躍りだした。


 何を考えているのこの人は!


 馬車の御者が慌てて手綱を引き、馬が混乱して暴れ回る。御者が巧に馬をなだめ、馬車は停まった。


 御者が怒鳴りだした。それはそうだろう。突然馬車の前に飛び出し故意に馬車を停めたら、わたしだって怒る。


 しかし彼は他人の迷惑なんて考えないのだろう。


 「こんな一本道で徒歩の人間がいるんだ! 馬車乗せるのが当たり前だろ!」


 彼が怒鳴る。


 もう、無茶苦茶だ…


 御者も相変わらず怒鳴っているが…御者の話している言葉が解らない。英語…では無いと思う。


 「アァ! ナニ言ってんだかわかんねぇよ! わかる言葉で喋れよ!」


 言葉が通じないが、彼と御者が口論となり、最後には御者が後ろの馬車、幌の中に二言三言声をかける。幌の中から、大柄な男の人が二人出て来た。


 右も左も解らないこの状況で喧嘩腰になってどうするのだろうか! 馬車に載せてもらいたいのだったら、キチンと交渉すべきである。これはマズイ! わたしはそう悟り、彼の前に飛び出て彼を止める。


 「何を考えているんですか!? 馬車に載せてもらいたいんだったらキチンと交渉すべきでしょう! いきなり喧嘩腰になってどうするんですか!」


 「こんな一本道にで徒歩の人間がいるんだ! 馬車にの乗せるのが当たり前だろ!」


 さっきと同じ事をい言う。


 「それは、あなたの勝手な解釈でしょう! 向こうからしたら、突然馬車をとめられたんですよ!? 馬車の前に飛び出して故意に馬車を停めたあなたが悪モノです!」


 「アァ!?」


 わたしに向かって威圧して来る。


 かなり恐いけど、ここまでの彼の態度にウンザリしていて、イライラとしていたわたしは言い放った。


 「この際だから、言わせてもらいますケド、自分勝手過ぎます! ここまでだって、自分勝手に休憩を決めて休んで、勝手に出発。わたしのスピードとか全然考えていなかったでしょう? わたしのキャンディだって勝手に仕分けして勝手に食べ始めて! 小さいからそんなに食べなくても大丈夫? なんですソレ? 内政チートとか、俺TUEEEEとか何度も何度もウザ過ぎです。そういうのしたいならカッテにやってください! わたしに押し付けないでください!」


 わたしは、そこまで言い切ると彼の反応も確認せずに、御者と馬車から出て来た男の人に向き直り、頭を下げた。


 「突然、ツレが馬車を停めて申し訳ありませんでした。わたしはあなた達と同じ方向に行けたいのですけど、馬車に乗せてもらえませんか?」


 言葉が通じないが、突然仲間割れしたかに見えたのだろうか、馬車から出て来た男の人達は顔を見合わせた。


 もちろん、わたしの言葉も通じないみたいらしく、仕方なしに身振り手振りで説明し、何とか解ってもらえたみたいだった。


 わたしは馬車に案内され、馬車に乗り込んだ。馬車なんて生まれて初めて見た。馬も現物は初めて見た。初めて見る馬は想像していたのよりずっと大きかったのには驚いた。


 馬車の中には中年のおばさんと、20代くらいの女の人。わたしはぺこりと頭を下げた。


 馬車の中には土にまみれた農機具? らしきモノが置いてあり、農作業の帰りだろうか? 少なくとも漫画やライトノベルとかにある奴隷商人とかじゃなさそうだ。


 馬車の中のおばさんと若い女の人は斎藤さんを指差し、また、わたしを見た。おそらく、彼はどうするのか、と、いったカンジだろうか。正直、彼にはウンザリしていて顔も見たく無かったので、どうでもよかったが、彼は当然とばかりに馬車に乗り込んで来た。


 「乗せる気があるんだったら、わけわかんねぇ言葉で喚ぇてんじゃねぇよ。ったく。…にしても…言葉がわかんねぇじゃねぇか。サービス悪ぃ異世界だな…あぁ、言葉が解るようになる魔法か、指輪ってことか。」


 わけわからないのはあなただ。


 彼の行動では馬車に乗れなかった。わたしは、もう、彼の事はどうでもよかった。


 わたしは、馬車に乗せて貰ったお礼をしようとデイバックの中をあさった。


 さっき勝手に仕分けされてわたしの手元に残ったキャンディは3個。当ての無い状況だったのでてをつけていなかったので、これを渡してもいいけど数が足りない。馬車の中の人は御者を合わせれば5人。


 何か無いかとデイバックの中をさらにあさると、底にキャンディが3個転がっていた。どうやら袋からこぼれていたみたいだ。数は足りる。うん。これをあげよう。


 馬車の中の人達は中年のおばさんとおじさん。若い女の人と男の人。お父さんお母さん夫婦にその息子夫婦かな?


 わたしは、馬車の中の人達にキャンディを渡した。


 初めはわたしが手渡した物をいぶかしんでいたけど、手始めにわたしが食べて見せ、食べ物と解ったのか、皆食べてくれた。


 この世界にはキャンディは無いのだろうか? みんな、甘さに驚いた顔で次いで喜んだ顔になった。喜んで貰えてなによりだと思う。


 「なんだ、まだ、あったんじゃないか。俺が分けた数に文句言っていたくせに。」


 どの口がそう言うのか!


 デイバックの底にあったキャンディは、わたしも知らなかったこぼれ落ちていたものだった。そのおかげで数が間に合ったのだ。それに追加分のを合わせても彼が勝手に食べた方が多い。


 「貴重な食料なのに隠して、パーティーを危険にさらすとは何を考えているんだか」


 あなたとパーティーを組んだ覚えは無いし、その貴重な食料とやらをモノの数分で全部かじり喰いしたのは誰なのか!


 わたしは否定の言葉であっても、彼に答える事がイヤで無視した。


 馬車の中のおばさんはキャンディのお礼なのか、わたしに竹で出来た水筒を手渡してきた。わたしと同じようにまず自分が水筒を傾け、飲んで見せる。


 水筒の中身は単なる水だったけど、小川の水も飲んでいなかったわたしにはとても美味しく感じた。


 それを見た斎藤さんはわたしから水筒を引ったくりぐびぐびと飲みはじめる。


 その光景にわたしは唖然として見ていた。


 自分で言うのもアレだけど、見た目10歳かそこらの女の子から、飲んでいる最中の水を引ったくってぐびぐび飲むってどうなんだろう? 馬車の中の皆も彼の性格を何とは無しに解った様だ。


 代わりに若い女の人がわたしに水筒を手渡してくれた。


 馬車は夕暮れの中、ゴトゴトと進んで行った。


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