第4話 同郷の少年
この話に登場する亜希は、第1話に登場する薬売りの少女です。
まだ、第1話につながっていません。
ゆっくりと進みます。
「え、あ…う、うん。」
思わず答えてしまっけど、質問の意味が解らない。何故そんな事を聞くのだろうか?
「やっぱり? 顔や格好からそうだと思ったんだ。」
男の子はそう答え続ける。
「まあ、色気聞きたい事もあるだろうけど、俺は斎藤 勇吾。17歳。高校2年だ。お嬢ちゃんは?」
ーーお嬢ちゃん…
気が滅入る。何故か解らないが、わたしの身体は小さくなっていたんだった。言われて思い出した。
「わたしは清水亜希。14歳。中学2年生。」
「14!? は?」
わたしを見て斎藤さんは目を丸くした。それはそうだろう。逆の立場だったらわたしでもそう思う。
わたしはぽつりぽつりと話はじめた。友達と遊んで帰り道だった事、玄関を開けたら草原にいた事、身体が小さくなっていた事。
「ふーん、にわかには信じられないけど、そういう事もあるだろうね。ここがどこか解った。」
何やら得意げな表情でニヤニヤする斎藤さん。そういえば彼は余りこの状況に慌てているカンジがしない。
「ここは異世界だな。」
「異世界?」
異世界と言うのは、あれだろうか? 剣とか魔法があったり、亜人とかがいる? もちろん、わたしだってそういう知識はある。そういうライトノベルも読んだ事があるし。でも、何故そんな簡単にここが異世界だと解るのだろう? そもそも、ライトノベルとかはフィクションだ。単なる作り話。そんな作り話が自分に起こるなんて、そこまで夢見がちじゃない。
「外国とかじゃあ…」
「俺のオヤジの実家は一面田んぼで、秋になると稲が草原みたいになるけど、それでもあぜ道だってあるし建物だって何気にある。ここみたいに山と地平線だけはなんてのは日本には無いよ。ま、ここまでなら俺も外国かと思ったけど、あー…亜希だっけ? 亜希は身体が小さくなったんだろ? それこそファンタジーの証拠だろ?」
いきなり呼び捨て…
馴れ馴れしいカンジにムッと来るが我慢する。
「それはそうだけど…」
否定したいわけじゃないけど、そう言われると何も言えない。身体が小さくなるなんて、それこそ漫画やファンタジーとしか言いようが無い。
「俺は、バイクで街ン中を流していたんだけど、赤信号に突っ込んだらトラックに跳ねられてさ。そのまま近くのコンビニに突っ込んだんだ。ガラスぶち破ってさ。イヤ、自分の事ながらマジウケル。トラックに跳ねられるとスゲー飛ぶんだな。」
わたしの中で斎藤さんの評価が最低になった。
赤信号で突っ込んだらそうなるのは当たり前というもの。完全に斎藤さんの責任だ。それをナニ自慢げに話しているのだろうか? この人を撥ねてしまったトラックのドライバー、コンビニの店員、客、怪我した人もいるだろうから駆け付ける警察や救急車とか。簡単に思い浮かべただけでもこれだけの人間に迷惑をかける。他人の迷惑をまったく気にしていない。
そのままこの人は自分の武勇伝を自慢げに語った。その全てが他人に迷惑をかける事。警察の厄介になったとか自慢げに語るのには意味が解らなかった。
ガラの悪い人。喧嘩っ早い人。こういう人はわたしは嫌いだ。
「ま、トラックに撥ねられてコンビニに突っ込んだ時に俺は死んだんだろうな。そのまま異世界トリップ。赤ん坊転生とかの王道じゃないみたいだけど、技術革新とか内政チートとか出来そうだな。強力な魔法を操って俺TUEEEEとか。そして貴族になって…ははっ、成り上がりルート完璧!」
わたしは所々頷くとかして彼の話を聞いていた。
右も左も解らないが異世界。一人よりも二人の方がいいし、個人的に嫌な人とは言え面と向かって非難してキレられるのも恐い。
どうやら、この人も異世界モノとか、読んだりしているみたいだけど、内政チートとか、俺TUEEEEとか、ずいぶんと夢見がちみたいだ。貴族みたいな特権階級はそう簡単になれるものじゃない。わたしは、ニヤニヤと浮かれる彼を見て、逆に冷静になると同時にこの先どうなるか不安でいっぱいになった。
8/18 初校のままでは、シアの人物像とかが解らないので、第1話に説明とか増やしました。
8/18 誤字脱字を修正しました。
8/18 シアの人物像とかが本文に出てきたので、あらすじを多少追加しました。
8/18 サブタイトルに話数を入れました。