第2話 日常の終わり
第1話の薬売りの少女シアはこの話の清水亜希です。
まだ、第1話につながっていません。
ゆっくりと進んで行きます。
ジージーと蝉セミの音がウルサイ。
(何の蝉セミか分からないけど…ミンミンゼミ? クマゼミ? 後、なんてセミがいたっけ?)
別に知らなくても困らないから深く考えない。
父親は中小企業の会社員。母はパートタイマー。生活に困窮するわけでもないが、裕福でもない。清水 亜希はそんな家庭の一人娘だった。
父親の稼ぎの金額もわかっていない。
(結局、今年の夏もどこにも行ってないし)
両親共に地元生まれで地元育ち。田舎なんてモノも無い。
両親共に共働きだが、そこまで余裕あるわけでもないので家族旅行なんていつだったか?
せいぜい、友達と市民プールに行くからと、月のお小遣いの他に別にお小遣いを貰ったくらいだ。
「セミうっさ!」
「セーレーシテートシで鳴くなっての~」
まったく、そう思う。
友人二人に激しく同意する。
自然の少ない都市部でも夏にはセミが鳴く。
「どこで鳴いてんだか?」
「ケヤキいっぱいあるし、ケヤキじゃないの?」
友人の疑問にわたしは答えた。
「セミってケヤキにトマンの?」
「さあ? 知らない。木だし、トマルンじゃないの?」
「セミだしね~」
みんなで笑い合ながらの市民プールからの帰り道。
夏休みも半分が終わった日の夕方。
「そういやさ。宿題は? あたしはモチやってない。」
「わたしも。後半ガンバレバばいいし。」
「フッフッフ~、わたしは全部終わってマース」
友人二人の言葉にわたしはフテキに笑う。
「今年も亜希が一番か。」
友人二人が宿題をやるのが夏休みの後半に対し、わたしはガチガチのスタートダッシュ派。夏休み開始そうそう一週間で終わらせ、残りを遊び倒すのが、わたしの毎年。
そうなると、宿題写させて! と、なるのが一般的だろうけど、この友人二人はそんなことない。どうしても穴が開く所は聞いて来るけど、ほとんど自分達で終わらせる。
わたしも解らない所は聞くし。
自分達でやらないで丸写しというのがわたしは凄く嫌いだ。友人二人もそれはわかっているのだろう。
「っと。じゃ、バイバイ」
そんな他愛のない会話をしていると、友人二人との別れ道となる。この三人で行動すると、まずわたしが抜けるのがパターンだ。遊ぶ場所にもよるけど家の方向が違うのだから当たり前というもの。
友人二人と自然に別れ家路につく。
自宅のマンションに着く。新しくも無いし古くも無い。取り留めてなにかあるわけでもないマンション。
三階の自宅部屋の玄関に着く。鍵を取り出し鍵をまわす。今の時間、父は会社で母はパート。いつもの行動。
ドアノブを回し、玄関の中に入りドアを閉める。当たり前の日常の当たり前の行動。
ドアを開けた先がどうなっているかなんて、前を向いていても、視線を向けていても、見ているようで見ていない。
……?
声なんか出ない。
は? とか、うわ? とか、そんなのも無い。ただ目の前の事に思考が追いつかないだけ。
思考が追いつかないけど、玄関の中に入ったらドアを閉めるという、もはや日常の一部になった行動が、勝手にドアを閉める。
目の前は草原だった。
サブタイトルに話数をいれました。