増すことのない川幅
始まりは瞳を閉じる頃
終わりは瞳を開く頃
一瞬の妄想
大事なことを忘れてる
混じり合う呼吸音
微笑ましい会話のすみ
隠れた悲泣を
忘れている僕
コンクリート越し
君は怪物の手を差し出した
驚くことはない
忘れていただけだから
遡って得るものはなく
心の隙間を潰される
ようやく瞳を閉じる頃
少しだけ何か思い出す
飛び込んだ君
差し出した掌は
閉じたまま
僕は怪物
そうして瞳を開く頃
僕は忘れてる
終わりのアナウンス
何もかも忘れてる
知ってる
忘れてる
悪いこと
いいこと
起き抜け
掌はスマートフォンへ
動けなくなったのは
きっと運動不足
そうして全てを忘れてる頃
春風と無縁の溜息
心臓の鼓動の奥の奥のほう
瞳の開くうちだけ